宗教間・文化間対話国際センター事務総長が来日、平和構築に対話の重要性を強調 草の根の対話を求める声も

2015年8月4日19時25分 記者 : 行本尚史 印刷
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シンポジウムの様子。左から、司会者の根本昌廣氏(立正佼成会外務部長)、鈴木寛氏、ファイサル・ムアンマル事務総長、庭野光祥氏=2日、立正佼成会大聖堂(東京都杉並区)で

戦後70年と第二バチカン公会議から50年目を迎える今年、宗教間対話をより深めようと、在家仏教者の運動団体である立正佼成会の主催により、シンポジウム「『宗教の対話 / 対話の宗教』〜新しいモノガタリをつむぐ〜」が2日、同会大聖堂(東京都杉並区)で開かれた。

サウジアラビアから来日したKAICIID(カイシード=アブドラ国王宗教間・文化間対話国際センター、事務局:オーストリア・ウィーン)のファイサル・ムアンマル事務総長は、約5000人の参加者に対し、「平和を達成するためには、軍事力ではなく、それと同じぐらいの力を持つ対話をもってしなければならない」と語り、今日の世界における対話の重要性を強調した。

KAICIIDは、サウジアラビア、オーストリア、スペインの3カ国によって2012年に設立された、対話を通じた平和構築のための国家間組織で、世界の5つの宗教から9人の指導者が理事を務め、全会一致で政策を決定する民間組織でもある。

KAICIIDの活動資金は全てサウジアラビアが出資しており、イスラム教主導でありながら、オブザーバーとしてバチカンも深く関わっているほか、カトリック以外にも他の2つのキリスト教の教派や、仏教、ヒンズー教が加わっており、一定の国や特定の宗教から影響を受けないようにしている。また、それ以外にも多くの国際組織がメンバーとして関わっている。

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カトリック神学者で世界宗教者平和会議(WCRP)国際事務総長のウィリアム・ベンドレイ博士(写真:立正佼成会提供)

シンポジウムでは、今回来日する予定だったカトリック神学者で世界宗教者平和会議(WCRP)国際事務総長のウィリアム・ベンドレイ博士が来日前に体調不良となったため、ビデオメッセージを寄せてあいさつした。その中でベンドレイ博士は、KAICIIDについての思いを語り、KAICIIDの誕生と活動を称賛した。

その上でベンドレイ博士は、「異なる宗教間の協力活動、人々の幸福のための協働、共有される安全保障のための協働を、今後も共に推進していきたいと思っています。それはすなわち、あなたの幸福は私の幸福につながり、私の幸福はあなたの幸福につながっているという共に生きる世界の実現です。真のパートナーであるKAICIIDと共に歩みを進められること、それが私たちの喜びなのです」などと述べた。

シンポジウムでは、WCRP国際共同議長でKAICIID理事の庭野光祥氏(立正佼成会次代会長)が、WCRPとKAICIIDについて語った。庭野氏は、「宗教者自身の対話をアップグレードする必要があるかもしれない。ムアンマル事務総長の来日を遠い国での出来事に終わらせず、私たち自身の対話を見直すきっかけにしなければならないと、私は思っている」と述べた。

そして、東京大学教授で慶応義塾大学教授の鈴木寛氏は、「もちろん宗教間の対話は大事だが、宗教とそれ以外(経済、教育など)の対話が本当に大事だと思う」と語った。

「それから、私たちは自分自身との対話をしなければいけない。実は自分の中にいろんな自分がいることに気が付く。そして他者ともいろいろ対話をする中で、他者の中に自分がいることに気が付く。そのことによって、今まで異なると思っていた存在に、まさに体は異なるけれども同じ心がある、異体同心ということに気が付いて、そしてそこから、人間は対話によっていろんなことに気が付き、そして学ぶ。そのことによって、難しい世の中を少しでも良くするための協働を自ら自発的に自然とやっていこうという行動が生まれてくる」と鈴木氏は述べた。

また、「もちろんその中で、私たちは自然との対話もしなければいけないが、人間はもともと自然の一部である。そうしたところをもう一度立ち止まって考え直していく、あるいは思考を開始していく(必要がある)」と鈴木氏は付け加えた。

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庶民レベルの対話の必要性を指摘する、カトリック志村教会の深水正勝神父

「未来を『動かす』」と題して行われたシンポジウムの第3部では、カトリック志村教会(東京都板橋区)の深水正勝神父が、「対話の内容はこれからもっと深めなければいけないと思う」と述べた。

「私は、板橋区の志村という小さな、小さな教会に行ったときに、立正佼成会の何人かの人がいらして、もう長い間お正月の餅つきを一緒にやってますと(言われた)」と深水神父。「立正佼成会や世界宗教者平和会議とカトリック教会のつながりは本当に長いけれども、どちらかというと白柳(誠一)枢機卿とか教皇様とかトップレベルの方の対話はあったと思うが、志村教会という庶民のレベルで対話が始まっていかないと、本当の深みは出てこないと思う」と指摘した。

「普通の人たちの中でこそ、イスラムばかりでなくキリスト教でも、その話し合いが深められることをお祈りしている」と深水神父は付け加えた。

これに対して、ムアンマル事務総長は、「私たちは宗教、教育、そして子どもたちを育てることを通して、こうした対話を生活の一部にして進めていかなければいけない。私たちは対話を道具として使っていかなければいけない」とコメントした。

また、立正佼成会のある女性会員から「私にとって最も身近にいる異質な存在はもちろん主人。家庭の対話がまず第一なのでは」と問われると、ムアンマル事務総長は「私もあなたと同じ問題をお話ししなければならない」と告白。「妻が言うには、『あなたはサウジアラビアの対話センターの事務総長で、宗教間・文化間対話国際センターの事務総長なのに、私の家での対話というのは本当にお粗末なものですね。家に帰ると全くしゃべらずに黙ったままです』」と語ると、会場からどっと笑い声が広がった。

「ですから私は(対話のために)研修を受けないといけないと思っている。私たちKAICIIDは対話のための研修コースを行っているが、もしこのような対話を進められれば、離婚率を下げられると思っている。だからこのコースはぜひ結婚前のカップルに受けていただきたい」とムアンマル事務総長は述べ、参加者の笑いを誘った。

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対話の重要性を強調するKAICIIDのファイサル・ムアンマル事務総長

シンポジウムの終了後、KAICIIDの広報局長であるピーター・カイザー氏は、記者団に対し、KAICIIDは、今後3年間、ボコ・ハラムによるキリスト教徒への暴力が深刻なナイジェリアや中央アフリカ、イラクを中心に活動を展開していくと語った。

「中央アフリカでは、イスラム教徒とカトリック、福音派のグループが、戦闘や対立を確実に減らそうとしており、願わくば新しい政府とより公正な平和が確立されるよう試みている」とカイザー氏は語った。カイザー氏によると、KAICIIDは、中央アフリカの首都バンギで紛争により破壊されたラジオ局の再構築を支援しているという。

また、ナイジェリアではアブジャ大司教区の大司教やイスラム教の指導者がKAICIIDの助けを求めてきたため、教会やイスラム団体を通じて村々の草の根レベルで、紛争を防ごうと村で活動しているカトリックとイスラム教の女性と青年たちに、まず対話と紛争解決の研修を行ったという。イラクでは、寛容な社会を支援するために影響力のある人たちを見つけて集める必要がある国連開発計画(UNDP)と協働しているという。

さらに、KAICIIDは国連ジェノサイド防止特別顧問事務所と協力している。同事務所は宗教指導者たちを集め、彼らに倫理規範を守ってもらい、誰かが他者に対する宗教的な暴力を呼び掛けているのを見つけたとき、それをやめるよう勧告してもらう働きをしているという。

「日本にいる草の根の宗教者からも支援を必要としているか?」という本紙記者からの質問に対し、カイザー氏は「いつでも」とその必要性を強調。ソーシャルメディアを通じて、「宗教の名による暴力に対して団結しよう」というKAICIIDの英語によるメッセージを見てそれを受け止め、それを世界の各言語に訳して人々に繰り返し伝えてほしいと答えた。

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