埼玉県八潮市で3大宗教シンポ 地元で活動する住職・牧師・イマムが講演

2014年11月18日15時21分 記者 : 内田周作 印刷
関連タグ:イスラム教仏教
埼玉県八潮市で3大宗教シンポ 地元で活動する住職・牧師・イマムが講演
特別養護老人ホーム「杜の家やしお」で開かれた、世界3大宗教と呼ばれる仏教、キリスト教、イスラム教の各宗教者が参加して行われたシンポジウムの様子=15日、杜の家やしお(埼玉県八潮市)で

埼玉県八潮市などで活動する仏教、キリスト教、イスラム教の各宗教者によるシンポジウムが15日、同市内にある特別養護老人ホーム「杜の家やしお」で開催され、地元市民ら約40人が参加した。テーマは「“チガイ”を知れば、“オナジ”に気づく」で、同市で活動するケアネットワーク「スパイダーネットやしお~」が主催した。

シンポジウムでは、仏教の立場から高応寺副住職の酒井菜法氏、キリスト教の立場から八潮キリスト教会牧師の山田証一氏、イスラム教の立場から八潮マスジド(モスク)イマム(指導者)のムフティ・モハメド・リズワン・ユスフィ氏が参加し、それぞれの信仰や思想について語った。

八潮市に隣接する三郷市にある高応寺は、約400年の歴史がある日蓮宗の寺院。酒井氏は、高応寺を地域のコミュニティスペースとして解放し、さまざまな活動を行っており、講演会やテレビ出演なども多い。酒井氏はこの日、最近発売された経済誌でビジネスマンの必須教養として宗教が取り上げられていたことを例に取り、宗教の重要性を強調。日本では宗教とカルトを結び付けて考えてしまう人がいるが、「まさに宗教を知ることは自分を知ること、自分を見つめること」と語った。

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合唱してあいさつする高応寺副住職の酒井菜法氏

米国のカトリックの家庭でホームステイをした経験のある酒井氏は、その時自身の宗教を大きく問われる経験をしたという。お寺で生まれ育った身ではあったものの、特に仏教徒だとは意識しておらず、無宗教だと答えた。すると、「信仰心のない人は何を道徳的真髄として生きているのか分からない」と言われ、ホストファミリーの態度が大きく変わったという。

しかし、世界14カ国を訪問し、各国の宗教を見てきたという酒井氏は、こうした宗教的価値観は、先進国、発展途上国を問わず、世界中どこにでもあると言う。では、日本人は本当に無宗教なのか。「日本人は生活に根付き過ぎていて、(自身の宗教に)気付いていないだけ」と酒井氏。海外で日本は、最も信頼できる国として上位に上がると言い、そうした信頼を支える親切心や思いやり、清潔感など、日本の美徳とされるような国民性は、仏教精神から来ていると話した。

次に、8年間会社勤めをした後牧師となり、2010年から八潮キリスト教会で牧会している山田氏は、「聖書は厚いが、要約すれば神を愛し、隣人を愛すること」だと言い、夫婦や親子における愛の在り方について、聖書がどのように話しているのか、また、愛と国際平和の関係について語った。

夫婦の関係について聖書は、「キリストに対する畏れをもって、互いに仕え合いなさい。妻たちよ、主に仕えるように、自分の夫に仕えなさい。 ・・・夫たちよ、キリストが教会を愛し、教会のために御自分をお与えになったように、妻を愛しなさい」(エフェソ5:21~33)、親子の関係については、「子供たち、主に結ばれている者として両親に従いなさい。・・・父親たち、子供を怒らせてはなりません。主がしつけ諭されるように、育てなさい」(同6:1~4)と語っていると紹介。夫婦関係や親子関係で相談を受ける代表的な事例を挙げ、自身の牧会上の働きや、地域における教会の役割について語った。

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シンポジウムの主催団体である「スパイダーネットやしお~」のメンバーの一人でもある八潮キリスト教会牧師の山田証一氏

一方、国際平和については、戦争がキリスト教の隣人愛の精神から離れたもので、理論的、実践的にも間違っていると指摘。「お互いが神からつくられた存在だという理解がある。だから、自分も他人も大切にしないといけない」と言い、政治的理由や自己正当化のために宗教が利用されていると語った。また、平和を実現するために最も必要なのは「赦す力」だと強調。小さいころから教会に通っていたが、大学生のときに初めて「神に受け入れられている、愛されている」と知った自身の体験を交え、「自分が全面的に赦されている体験があるとき、赦すことができる」と語った。

パキスタンでイマムとして活動した後来日し、現在八潮マスジドで、宗教を問わずカウンセリングなどを行っているユスフィ氏は、イスラム教の信仰行為を定めた五行と、イスラム教における隣人への務め、イスラム教とテロとの関係の3点について語った。

イスラム教では、信仰を問わず、近所に住む隣人を尊敬しなければならないと定めているという。具体例として、近所に迷惑をかけないよう、うるさくしてはならないとの定めを挙げた。また、日本では近年、ニュースなどで孤独死が頻繁に取り上げられるが、イスラム教では、近所の人がどういう状況かも積極的に知るべきだと勧めているという。「宗教が違う人であろうと、国籍が違っても関係なく、差別せずに近所を大切にしなければなりません。最も平和につながるステップではないでしょうか」とユスフィ氏。さらに、「あなたがもしもお腹一杯食べて寝ていて、近所の人がお腹を減らしたまま寝ているのであれば、あなたはムスリムではないことを表現している」と言い、隣人を大切にするのがイスラム教の基本的教えだと強調した。

一方、イスラム教とテロとの関係については、まず「殺すどころか、痛みを与えてはいけないと言われている」と話し、イスラム教で殺人を厳しく禁じていることを説明した。その上で、メディアの報道において、テロとイスラム教が執拗に結び付けられているのではないかと指摘。「ニュースで耳にしたことをもう一度確認すべきではないでしょうか」「テロが起きた途端に、イスラム過激派というのが出てきます。これはもう一度考えるべきです」と訴えた。

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八潮マスジド(モスク)のイマム(指導者)であるムフティ・モハメド・リズワン・ユスフィ氏(右)と、同マスジド役員で日本在住27年目という通訳のアハマド・ナズィル氏

参加者からは、ジハードについて質問が出たが、語源となるアラビア語の「ジャハダ」は「何かをトライする」という意味で、テーブルなどを動かすようなときにも使うと説明した。日本語では「聖戦」と訳されることがあるが、「聖なる戦いではなく、防衛する」という意味合いだと話した。連日報道される「イスラム国」についても明確に反対だと言い、「(イスラム国は)ジハードの意味も考え方も間違えています」と語った。

シンポジウムを主催した「スパイダーネットやしお~」は、シンポジウムのコーディネーターを務めた川上泉氏や講演者の山田氏らを含む8人により、インフォーマルな地域のケアネットワークとして2012年に活動をスタートした。現在のメンバーは約40人。児童や教育、福祉、医療、宗教、葬儀などさまざまな分野の人が、「クモの巣」のようなネットワークを形成し活動している。

今回のシンポジウムを企画したのも、こうした活動の中での出来事がきっかけだった。高応寺には、酒井氏の話を聞きに行き、八潮マスジドには、経済連携協定(EPA)でインドネシアの介護福祉士候補生を「杜の家やしお」で受け入れる際、イスラム教徒の候補生に対する食事の出し方について相談に乗ってもらった。こうした中で、異なる宗教者らが躊躇(ちゅうちょ)なく交流する姿を発見し、地域の人々にも共有できればとの思いが形となった。

宗教者3人の講演を終え、川上氏は、「どの宗教も、人の命を愛する、隣人を大切する、国が違っても愛するという、明確なメッセージを語っていると分かりました」とコメント。一方で、「宗教が歪められて理解されていることもよく分かりました」と言い、無宗教者と宗教家の違いについては「明確な物差しを自分の中に持っているかどうか」ではないかと語った。

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