クリスチャン作家・下田ひとみ氏が講演 「赦しとは?」

2014年10月16日20時58分 記者 : 守田早生里 印刷
+クリスチャン作家・下田ひとみ氏が講演 「赦しとは?」
講演を行う下田ひとみ氏。講演後には、参加者とともに軽食をいただきながら交流をした=11日、船橋市勤労市民センター(千葉県船橋市)で

クリスチャン作家の下田ひとみ氏を迎えての講演会が11日、インターナショナルVIPクラブ船橋で行われた。今年4月に5周年を迎えたVIPクラブ船橋は今回で61回目。全ての人が神様の目から見たら、VIP(尊い人)であることから名付けられたこのクラブは、日本各地、また全世界でさまざまな形で展開されている。

講演者には各界で活躍するクリスチャンを迎え、参加者はクリスチャンでも、そうでなくてもよい。祈りや賛美、クリスチャンにしか通じない「教会用語」もこの会にはなく、「クリスチャンだけの閉鎖的な空間ではなく、ノンクリスチャンの方々にも有意義な時間を過ごせてもらえるような雰囲気作りを心掛けている」とスタッフの一人が話してくれた。

2005年に発表された下田氏の代表作『うりずんの風』は、舞台化もされている。重い心臓病を抱えて生まれてきた下田氏の長女が、夫婦や周りの人々の祈りがあったものの、数カ月後に天に召された事実をもとにした小説だ。

長女が召天した日からすでに数十年の時が経っている。あの日から5年間、当時住んでいた沖縄に住み続けたが、毎日が辛く、信仰さえも失いかけていた。5年後、沖縄を離れ本土に。現在は鎌倉に住んでいる。

同作を書き始めたときは、「せめて小説だけは明るいものに。子どもは心臓病を持って生まれてくるが治ったという設定にしよう」と考えたという。しかし、どうにもしっくりこず、「余計に辛かった」と当時を振り返る。

「子どもを亡くした母親というのは、自分だけではなく、世の中に大勢いる。でも、その気持ちを代弁して本を書ける人は、そう多くないのではないか」と考え、小説の子どもも天国に送る設定にした。「この作品を書くことは、自分の使命のように感じていた。この作品によって、多くの子どもを亡くした母親との交流も生まれました。本当に辛く、悲しい経験だったが、乗り越えてよかったと今は思える」と笑顔を見せた。「あの子に会わなければ、あの悲しい出来事がなければ、今の私はないと思います」と語る。

次作への期待が高まったころ、「次は何を書いたらよいか?」と考え、神に祈った。その時にある事件に巻き込まれ、被害者の話を聞く機会があった。何度も何度も聞いているうちに、その人が「もう疲れた。相手を赦そうと思う」とつぶやいた。下田氏は、内心ほっとしたという。しかし、周りがそれを許さなかった。「何言ってるの!相手を赦したら負けよ!」と、攻めるように励ます周りの人々に圧倒された。そこで、「次回のテーマは『ゆるし』にしよう」と思った。こうして出来たのが「翼を持つ者」だった。

同書の中には、「白い闇」という別の作品も収められている。「ある人が、『うりずんの風』『白い闇』『翼を持つもの』を合わせて、『魂の三部作』と名付けてくれました。それほど、この三作は私にとって思い入れが深く、大切な作品です」と紹介した。

バスや電車で移動することが多いという下田氏。数十年前、バスの中である初老の女性に会った。下田氏は礼拝に出席した帰り道だった。手元にあった教会の資料を眺めていると、隣に座っていたその女性に「クリスチャンの方ですか?」と尋ねられた。「そうです」と答えると、彼女もクリスチャンだと話し、すっかり意気投合。それから、お互いの家を行き来するようになったが、その女性からクリスチャンの夫と離婚をすることになったと打ち明けられた。
その女性は「教会の人たちにこんなこと言えない」と言った。下田氏が「ご主人に恨みや怒りはないのですか?」と尋ねると、「そんなことはどうでもいい。私が夫に問いただしたいことはただ一つ。『結婚式の日、神様の御前で誓ったあの誓いは何だったのですか?』ということ」だと。「人はゆるせないのではなく、ゆるしたくないでは?」と話した。

時々、自分で書いた本を読み返すときがあるが、「あれ、こんなこと本当に私が書いたのかしら?」と思うことも多いという。「神様が筆を進ませてくださっているのだ」と確信する、そんな自分で書いたはずの言葉に癒される体験をしたこともある。

「神様は、数年前に私が書いたあの時でさえ、すでに全てをご存知で、これから私に襲いかかるであろう苦難、悲しみもご存知で、それを言葉にして書き残させ、そして私がそれを読み返す時がくることもご存知だった。なんて偉大な計画なんでしょう。われわれ一人ひとりに神様の計画がある」と講演を締めくくった。

講演後、下田氏の著書を3冊同時に買い求めている男性がいた。仏教徒だと話す彼は、イスラエルにも旅をしたことがあるという。「なぜ、この集会に?」と尋ねると、「教会って、どこか敷居が高い気がする。クリスチャンではない僕が入ってはいけない気もしていた。しかし、こうした会は、信仰がない人でも気軽に入ることができる。教会に行く階段があるとすれば、ここは最初の一歩としては、とても良い場だと思う」と話した。

また、「クリスチャンはとても親切で強い人が多いと思う。僕なんかとてもそうはなれない。聖書も読んだことがあるが、単純にイエスのような生き方はかっこいいと思ったし、あんな風に生きられたらいいなとも思った」と答えた。

静かにゆっくりと広がる伝道の輪。次回のインターナショナルVIP船橋は、11月8日(土)外国籍の父と日本国籍の母に育てられた山下ワウィネさんが講演する。山下さんは外交関係の狭間で一時、「無国籍」となった。生まれたときから偏見もあった。講演タイトルは「あなたはナニジンですか。あなたの国籍は?」。詳しくは、ホームページを参照。

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