フィリピンの児童養護施設を訪ねて(1)~日本人クリスチャンが運営する「ハウス・オブ・ジョイ」

2014年5月12日11時17分 記者 : 佐藤憲一 印刷
+フィリピンの児童養護施設を訪ねて(1)~日本人クリスチャンが運営する「ハウス・オブ・ジョイ」
夕食の前に、子どもたちだけで長い祈りをする。

澤村信哉さん(37)の携帯が鳴った。現地のビサヤ語でしばらくやりとりが続く。連絡してきたのは地方福祉局の担当者だった。「事情があって両親と一緒に暮らせなくなった6人きょうだいがいるそうです。ハウス・オブ・ジョイで引き取れないかという話でした」と澤村さんは言う。

フィリピンのミンダナオ島に、日本人クリスチャンが運営する児童養護施設があると聞いて訪ねた。「喜びの家」を意味するハウス・オブ・ジョイ(HOJ:HOUSE OF JOY)では、4歳から18歳まで約40人の子が共同生活を送っている。在比12年になる澤村さんは、現地交渉から子どもたちの生活管理に至るまで幅広く担当。日に焼けた顔に浮かぶ笑みはいつも明るい。

空港があるダバオ市から車で約2時間、バトバト村にHOJはある。「石だらけ」という意味の村名のとおり、土地は痩せていて農業向きではない。所々に果樹園や畑があり、海が近いため漁業の集落は見かけるが、規模はささやかだ。少数の大地主が土地を占有し、財産のない大多数は低賃金で雇われ仕事を続けなればならない。

子どもを養育できなくなる理由の多くが貧困だ。職を失ったり病に倒れれば、たちまち生活は行き詰まる。フィリピンでは困っている人を助け合う関係性が今も大切にされているが、まれに隣近所と良い関係を保てない家もあるという。親が麻薬に手を染めて捕まることもあれば、子供を放置や虐待するケースもある。

村のマーケット。子どもだけで店番する姿も。

ある兄弟は家に食べ物がまったくなく、野山をさまよい歩いて人の畑から固いバナナを取って生きていた。母親に知的障害があり、父親はおらず、栄養失調で動けなくなっていた子もいる。やせ細った子が多く、まず粉ミルクや栄養剤で不足しているものを補ってやらなければならないという。

施設が子どもを引き取る時は、福祉局を通すのがルールだ。「いきなり子どもを連れて来て、置いて行こうとする親もいますが、それは受け付けていません」。驚くことに、公式な依頼と手続きを経て子どもを預かっても、福祉局や政府から資金的な援助は一切ないという。「彼らにその予算はないんです」と澤村さんは現状を嘆く。

この地域に公営の児童養護施設はない。家を失った子のため適切な監護環境を確保するには、キリスト教系をはじめとする団体や個人が運営する施設に頼らなければならないのが実態だ。教育制度にも不備がある。貧しい村では小学校を卒業する子どもは半分ぐらい。そのため公用語の英語を話せない大人もいる。

澤村さんによれば、「フィリピンに義務教育という制度はありません。中学校まで授業料は無料とされていますが、実際は学用品代、制服代、催しのたびに徴収される学級費などが払えずに学校に行けなくなる子がたくさんいます」。HOJでは近所の子供たちの就学も支援し、毎年約100人が学用費などを奨学金として受け取っている。

HOJの設立者、烏山逸雄さん(56)は長崎県五島列島の出身で、代々カトリックの家系。大学卒業後は青年海外協力隊員としてフィリピンに渡り、農業指導を行った。日本に戻り、商社に12年勤めたが、接待や利益重視の仕事に生きがいは感じられない。思い出すのはフィリピンの子供たちの笑顔と、厳しい環境に置かれた幼い子たちの姿だった。

HOJの本館。日本政府からの「草の根援助」を受けて建てられた。

いつしか「貧困に苦しむ子どもたちを支えたい」との思いが開かれ、児童養護施設の創設を決意。妻と娘の家族3人でミンダナオ島に移り住んだのは、1996年のことだった。(続く:ハウス・オブ・ジョイ「見える行動で、見えない愛を表現したい」

■ フィリピン児童養護施設を訪ねて : (1)(2)(3)(4)

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