18、19日の両日にわたって米キャンプデービッドで開催予定の主要国(G8)首脳会議(サミット)直後の20日、21日にかけてシカゴで開催予定の北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に先駆け、世界教会協議会(WCC)総幹事のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト博士は冷戦終結以降20年以上も欧州で広まってきた核兵器の軍縮に向けた具体的な行動を取るように促す声明文を発表した。
トゥヴェイト博士は、声明文で「各国の市民社会においてNATOが重要な行動を後回しにする可能性が高いことが懸念されています。平和を求める諸教会として、私たちは民主主義社会における武装した各国の同盟が米国の核兵器を欧州5カ国非核保有国で共有し、冷戦終結後20年以上が経っているにもかかわらず、およそ200発の米国製核兵器を欧州の基地内に留めたままにしている状態を非難します」と述べた。
WCCは、NATO首脳会議に向けて3年の準備期間にわたって、欧州教会会議(CEC)およびカナダ教会協議会(CCC)および全米キリスト教会協議会(NCCC)とともに、NATO指導陣らに対し書簡を送付する他、実際NATOシニアスタッフらと会合を行ってきた。
トゥヴェイト博士は声明文で、「私たちはNATOが欧州非核保有国から米国製の核兵器を撤去し、欧州諸国が核兵器を保持せず、核兵器が二度と使用されない状態にするように要求しています。シカゴのサミットではNATOはこの案件を延期させ、他の重要な決断事項も延期することが懸念されます。欧州から米国製の核兵器を撤去することは、NATOの報告によると、ロシア側の戦術核削減との交渉次第であることが示されています。しかし私たちはそのようなロシア側との戦術核削減の交渉はこう着状態を招くだけであることを警告します。私たちはロシア政府にも戦術核を削減、再配備、そして最終的には消滅させ、NATO側が戦術核の撤去を行う前に軍縮を進めていくことを要請します」と述べた。
欧州では、NATO側の戦術核として、一部欧州諸国に現在も米国の核兵器が配備されており、その数と種類が冷戦後に大幅に削減されたものの、約200発程度の核兵器が配備されていると言われている。
声明文でトゥヴェイト博士は、「NATOは国際平和と治安に対して重大な責任を負っています。2010年にはNATO加盟国全てが核兵器を戦略的に削減して行くことで合意しました。シカゴの首脳会議でこの約束が先延ばしにされるとするならば、NATOは直ちにこの問題を取り上げていかなければなりません。私たちはNATOに対し、新たな抑止・防衛態勢レビュー(DDPR)を公にし、国際社会・市民社会のNATO政策に対する懸念を認識し、より広い議論に進んで関わって行く姿勢を見せていくことを要求します」と述べた。
WCCではNATOの欧州戦術核の撤去、核共有政策の終焉を要求しており、欧州諸国から米国製核兵器が撤去されることが、オバマ米大統領が核兵器のない世界を呼び掛ける活動に大きな寄与をすると呼び掛けている。
またWCCでは、NATOの政策は核不拡散条約(NPT)1条および2条でいかなる核兵器の非核保有国への輸送をも禁じる条項に違反している疑いがもたれているとし、NATOが欧州5カ国から米国製核兵器を戦略的に撤去していくことが、武器の密輸入、事件、テロリズムの抑制に寄与すること、米国製核兵器が欧州に存在することは、これ以上ロシアが同様の戦術核保有を進めることを防止することができないことにつながるとの懸念を示している。
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