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福音総合理解に立つ新しい皮袋の創造へ

2011年11月16日10時45分
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JTJ宣教神学校学長岸義紘氏、2011年10月27日撮影。+
 2012年度4月から神学部と生涯学習部の全学科においてインターネット講座(eラーニング)を併設したJTJ宣教神学校学長岸義紘氏に、同校のビジョンである「福音総合理解に立つ新しい皮袋の創造」について聞いた。神学校の学長を務める牧師であると同時にサックス奏者でもある岸氏は、巡回伝道者としてこれまでに教会、病院、刑務所、老人ホームなど3000回以上のサックスコンサートを兼ねた巡回伝道を行ってきた。生涯をかけた巡回伝道者としてのイエス・キリストを伝える熱意と聖霊のバプテスマを受けたきっかけについて、CTの取材を通して明らかにした。

 CT: JTJ宣教神学校の掲げる「21世紀の新しい皮袋の創造」の意味について教えてください。

岸氏: これは確かにJTJが掲げているスローガンであり、目標でもあり、ビジョンであるとも言えるものですね。一言で言いますと、律法主義的な要素の強い古い皮袋から、「福音総合理解」に立つ新しい皮袋を創造して、その皮袋によって、日本の教会形成と、伝道のプログラムを推進するということです。それは歴史上のどの国においても共通の課題とも言えるもので、元を辿りますと、そもそもイエス・キリスト様の宣教の働きは、律法主義者との厳しい対決であり、ついには逮捕され、十字架刑に処せられるほどの厳しい対決でありました。そしてイエス様が提案し、提唱し、自らその生涯を通して伝えられたことは、福音による新しい皮袋・新しい律法の理解と信仰生活のあり方であり、守り方でした。この緊張関係が、その後のキリスト教会の歴史においてもそのまま引き継がれています。

 古い皮袋と新しい皮袋の対決は歴史を貫いて続いており、この対立を抱え込む教会の問題として、根深いマイナスの影響を与えています。これはイエス様以来、今日まで変わらない教会の課題です。

 中心的な流れとしては、どの時代のどの教会も、熱烈かつ純粋に、真剣に信仰を継承してきているわけです。しかし、熱烈かつ純粋でありながら、気がつかないうちに律法主義的な要素が信徒の生活指導や教会形成の理念として取り込まれることが生じてきました。これが教会が抱えている大きな問題であり、特に日本の場合はその他の歴史的、文化的、社会的要因もあり、伝道が伸展しないことにつながっていると思います。教会が自信喪失に陥ったまま、国内で極めて少数派にとどまったままという悪循環に陥っています。何が律法主義的な要素で、何が福音的な要素による解放なのか-これをはっきりと理解して、天と地ほどに律法と福音を区別して取り組む指導者を養成し派遣するということがJTJの使命であり、「新しい皮袋の創造」の意味でもあります。

CT: 日本の宣教を難しくしているものは何なのでしょうか?

岸氏: 複合的だと思います。いくつかの絡んでいる問題点をひとつずつ取り上げますと、まず牧師の課題があります。教会の指導者であるプロフェッショナルな牧師が日本には6~7千人はおられますが、この牧師の方々に対する指導体制がほとんどないように思います。牧会を実際に始めれば、牧師個人の問題、夫婦の問題、家族の問題、牧会業務などさまざまな問題が生じてきます。20代の牧師から60代の牧師に至るまでみんな様々な問題で悩んでおられます。このような悩める牧師たちと牧師夫人たちを牧会する体制が十分に整えられていないと思います。牧会とともにプロフェッショナルな伝道者として、どのようにしたら毎年一つの教会から12人の洗礼者を出すことができるか、あるいはせめて6人の洗礼者を出すことができるか-そういう働きの目標を設定し、それに向けて何をどのように取り組むかという方法論と共に、牧会している教会の実力の総点検を行うなどの職務の教育体制が重要だと思います。大きな教団ではそれなりの体制がありますが、本音で悩みを打ち明け、細やかな指導を受ける体制がなく、神学校を卒業したら20代でも30代でもすべてを自分でやるしかないという状況に置かれてしまいます。

 これは神学校を卒業した牧師にとって、すごく厳しい戦いであり、一般の会社組織では考えられない重い任務を牧師たちに委ねていると言えるのではないかと思います。一般企業ならばきめ細かいチェック機能があり指導体制があります。実績を上げるための会議が定期的に開かれます。教会の牧師と牧師夫人に対する生涯教育プログラムが整っていないことが大きな問題としてあるのではないでしょうか。私たち日本の教会の半数は年間一人の洗礼者も出せないという状況です。これは教会自体が成人になっていない段階であると言えると思います。

 聖書の解説においては知的で神学的にレベルが高いのですが、霊的には弱く、伝道や信仰においてアンバランスで未成熟な状態が私たち日本の教会に続いているのではないかと思います。あるいは、熱心に燃えていても、福音理解が偏っていて、不健康である場合もあるでしょう。さらに言えば、教会が劣等感と自信の喪失に陥ってしまっていると思います。一年牧会をして、ひとりふたりの洗礼者も生じない。伝道集会を開いても、地域の人が誰も来ない。一年に一度の伝道集会に教会員が未信者をほとんど誰も連れてこない。講師を、予算を組んで迎えても、決心をしなければならない求道者がほとんどおらず、信徒だけ集まっているような伝道集会を何年行っても、ほとんと何の結果も出ません。劣等感や自信喪失が生じます。それに加えて、韓国コンプレックス、世界の教会に対するコンプレックスが私たち日本の教会にはあるのではないでしょうか。

 その上、私たち日本の教会は律法主義的な要素がとても強いと思います。その結果、ますますわずかな信徒が残るだけで、「使徒行伝」に見られるような闊達な聖霊による躍動感あふれる教会の発展がみられなくなっていると思います。教会開拓を行えばすぐに結果が出る、伝道すれば早々に結果が出て町に教会が形成されていくというプラスの循環から、すっかり取り残されたところで私たち日本の教会は戦っています。

 次に日本の歴史と文化の問題です。福音の種を蒔いてもこれを押し潰してしまうような、迫害や天皇制の歴史と文化の土壌があると思います。あるいは人間中心主義・科学主義・物質主義が無神論的に入り込んだ日本の歴史と文化というものがあります。そのような土壌そのものが、地方に行けば行くほど伝道を難しくしていると思います。

CT: そのような日本社会で教会の発展を目指す学生に対して、JTJ宣教神学校はどのようなサポートをされているのでしょうか?

岸氏: まずJTJの最も重要なカリキュラムの柱の一つは「福音総合理解」にあります。福音総合理解とは、イエス・キリスト様を通して明らかにされている父なる神の御心であり、救いの全体像ともいえるものです。聖霊の照明によって福音総合理解に対する知性が開かれて、福音の総合的な理解がはっきりしてくると、おのずと教会の発展を妨げる律法主義的な要素が何であるか、何が日本の教会をアンバランスにして未成熟にとどめているのか、そういう具体的なことが良く見えて来ると思います。実際JTJで学ばれているほとんどの学生が、そのような律法主義的な要素が入り込んだ問題を体験し、その克服に苦しんできた経験があります。

 既存の教会で福音総合理解による方法論を即実践できるかといいますと、そう簡単にはいきません。じっくりと時間をかけて、福音の真理とは何か、福音による解放とか自由とは何を意味するものなのかを啓もうすることが大切です。さらに教会のあり方や信徒の生活の中でそれらを具体的にどう働かせることが必要なのか、時間をかけてまず理解の改革から進めていかなければいけないと思います。

 思考が変わらない限りは、方法論は変わりません。聖霊によって与えられる福音の総合理解を広げて行くためにも、既存の教会の枠組みを越えて、納得のいく伝道と教会形成に取り組もうということで、独立して単立で開拓を始める人たちも卒業生の中には多いです。セルチャーチ、ホームチャーチ、ハウスチャーチといった形から始める方もおられますし、会堂をまず建築して、会堂を武器として単立・独立の教会を開始するとか、教会に迷惑をかけずに独立して新しい皮袋としての教会開拓を行おうという人たちもいます。そして、そのような働きに取り組む人たちが互いにネットワークでつながって、情報交換することでお互いに勉強しながら励まし合い、「新しい皮袋としての教会形成と伝道」という継続的な学習ができるように各地での交流を実現しつつあります。


次ページはこちら「神学校でのリーダーシップ学導入の意義とは?」

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