アフリカ北西部、モロッコとアルジェリアに挟まれた大西洋沿岸に位置する西サハラは、広大なサハラ砂漠に覆われた地で、長年にわたり帰属問題を抱えてきた地域である。かつてスペイン領だったこの地は、1975年以降モロッコが実効支配し、独立を求めるサハラウィ人(サハラの遊牧民)との対立が続いている。その結果、多くのサハラウィ人がアルジェリア南西部ティンドゥフ周辺の難民キャンプで暮らし、過酷な砂漠の環境の中で約半世紀にわたり故郷への帰還を待ち望んでいる。
このような政治的不安と厳しい生活状況の中で、希望を求める心が静かに開かれつつある。西サハラのサハラウィ人の間には、依然としてキリスト者はほんの一握りしか存在しない。しかし、目立たない形で働く宣教者たちと、わずかな現地信徒たちを通して、砂漠に新しい芽生えが起こり始めている。
サハラウィ人の主要言語であるハッサニヤ・アラビア語で、新約聖書、映画「イエス」、オーディオバイブルなどの福音宣教ツールが提供されていることは大きな前進である。読み書きが十分でない人々も多い中、音声や映像を通して福音が届きつつある。また、難民キャンプでは教育支援、食料支援、井戸やインフラ整備などの支援活動を通して、愛と希望を実践的に示す働きが進んでいる。困難な環境の故に、人々の心は柔らかくなり、福音のメッセージに耳を傾ける人も増えているという。
一方で、キリスト者として生きることは、決して容易ではない。イスラム文化の強い社会の中で、信仰を公にすることは大きな代償を伴い、迫害や孤立に直面することもある。だからこそ、現地の信徒一人一人が耐え忍び、信仰を守り、静かに証しを続けられるよう祈りが必要だ。
砂漠に風が吹き、新しい芽が育つには、時間がかかる。しかし、主はこの荒野にも命を吹き込まれるお方である。サハラウィの人々が真の希望であるイエスに出会い、永遠の命の救いの道を知ることができるように祈ろう。難しい環境の中で伝道に励む宣教者らに、知恵と守りと必要が与えられるよう祈っていただきたい。
■ モロッコの宗教人口
イスラム 99・9%
プロテスタント 0・02%
カトリック 0・07%
ユダヤ教 0・02%
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