日本聖公会は17日、京都教区の元牧師が未成年者に性加害をし、発覚後に同教区がさまざまな2次加害を起こした「京都事件」に関する書簡(15日付)を発表した。書簡は、上原榮正首座主教と主教会の名義で出された。
事件を巡っては昨年11月、京都教区の高地敬主教が責任を取り辞職する意向を表明していた。書簡によると、高地主教はその後、主教会の承認を得て2月28日付で辞職。元牧師から聞き取りを行うなどしていた古賀久幸司祭も責任を取り、定年退職を待たずに同日付で辞職したという。
元牧師は1980年代、京都教区内の教会に通う少女に数年にわたり性加害を加えていた。少女は成人後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、2001年に元牧師を提訴。05年には被害事実を認め、元牧師に500万円の損害賠償を命じる判決が最高裁で確定した。一方、事件を巡っては、京都教区側が判決を全面的に否定するコメント(後に撤回、謝罪)を出すなど、さまざまな2次加害を起こした。
書簡によると、主教会は判決確定後の06年、「この事態を重く受け止め、被害にあわれた方々とご家族の尊厳が回復され、一日も早く心の傷が癒やされますよう願い、京都教区の聖職団と共にまことの悔い改めに至ることができるよう神の導きを求める」と表明していた。
しかし、書簡は「主教会は、その後においてこの出来事を一教区の問題とだけとらえ、日本聖公会が性暴力にどのように向き合うべきかという視点が欠如していたと言わざるを得ません」と指摘。これまでの対応は「まことに不十分」だったとし、「主教会への報告は当該教区主教(高地主教)からという一方的なものであり、その報告を通して判断してきたという限界」もあったとした。
その上で、「この誤りから私たち管区、教区、教会は学ばなければなりません」と強調。被害者の声を聞き、寄り添い、被害者の尊厳を第一に考えることや、2次加害が起こり得ること、第三者による助言を求めることなどが必要だとした。
最後には、「私たちは改めて、より安全な教会を築くというセーフチャーチを実現させなくてはなりません。主教会としても、これまでの主教会のあり方を振りかえり、今後も日本聖公会全体の課題として受け止めてまいります」と表明。イエス・キリストの導きを願うとともに、「神様が被害にあわれた方々に癒やしといたわりを豊かにお与えくださいますように」と祈り求めた。