石破茂首相は7日夕、首相官邸で臨時記者会見を開き、自民党総裁を辞任する意向を示し、退陣を正式に表明した。7月の参院選で大敗した後も、続投の意向を示し続けてきたが、党内で高まる退陣要求を抑えられず、断念する形となった。世論調査では続投容認が退陣を求める声を上回り、内閣支持率も上昇していたが、8日には、事実上のリコールとなる総裁選の前倒し要求手続きが控えていた。
プロテスタントの4代目クリスチャン
石破氏は昨年9月、5度目の挑戦となった総裁選で勝利し、翌10月に首相に就任。4代続くプロテスタントの家系出身で、カトリックである自民党の麻生太郎最高顧問以来、クリスチャン(キリスト教徒)が首相になるのは15年ぶりのことだった。
鳥取県知事や自治相(当時)などを務めた父・二郎は浄土真宗の仏教徒だったが、母・和子は、同志社の創立者である新島襄から洗礼を受け、後に牧師となった金森通倫(みちとも)から続くプロテスタントのクリスチャン。石破氏は大学入学前の18歳の時、母が通っていた日本基督教団鳥取教会で洗礼を受けている。
幼少期は、同教会の宣教師によって始められた愛真幼稚園に通い、鳥取大学教育学部附属小学校・中学校卒業後、上京して慶応義塾高校に進み、その後、慶応義塾大学法学部に入学。東京では日本キリスト教会世田谷伝道所(現世田谷千歳教会)に通い、教会学校の教師も務めるなどした。
在任中に2度礼拝に出席
在任中も礼拝に出席しており、首相動静で確認できただけで、2度出席している。1度目は昨年12月22日、2度目は今年7月20日。いずれも日曜日で、場所は日本基督教団富士見町教会(東京都千代田区)。前者はクリスマス礼拝、後者は参院選投開票日の主日礼拝だった。
キリスト教信仰が一般紙で取り上げられることも
石破氏のキリスト教信仰が、一般紙で取り上げられたこともあった。産経新聞は昨年10月、15年ぶりとなるクリスチャンの首相だとして、石破氏がキリスト教の集会で語った発言などを報道。朝日新聞は今年6月のコラムで、石破氏と同じ日に洗礼を受けた甲南高校・中学校(兵庫県芦屋市)の山内守明校長の話や、世田谷千歳教会の小林宏和牧師の話などを伝えている。
8月9日に長崎市の平和記念式典で述べたあいさつでは、自ら被爆しながらも救護活動に奔走したカトリックの医師、永井隆の著書『長崎の鐘』から一節を引用。また、原爆で大破し、2つあった鐘のうち、失われていた1つが米国のカトリック信者らの支援で、80年ぶりに復元された浦上天主堂にも触れた。朝日新聞によると、永井の著書から引用したのは、石破氏が同じクリスチャンとして思い入れを持っていたからだという。
今後は、8日に自民党臨時役員会が開かれ、9月下旬から10月上旬には総裁選が行われる見通し。その後、10月中にも臨時国会が開かれ、新首相が選出されるとみられる。なお、石破氏は会見で、今後実施される総裁選には出馬しないことを明言している。