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芥川賞作家・青来有一さんインタビュー(3)長崎を書き続ける

2017年2月13日18時23分 記者 : 土門稔
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芥川賞作家・青来有一さんインタビュー(3)長崎を書き続ける+
山王神社の一本柱鳥居

―ー小説家として1995年に『ジェロニモの十字架』で文学界新人賞を受賞されました。そして2001年に『聖水』で芥川賞を受賞、2008年に『爆心』で伊藤整文学賞・谷崎潤一郎賞を受賞されました。小説家として20年以上のキャリアの中で変わってこられた部分はありますか。

長崎市職員として働き始めてから小説を書き始めました。私はデビューしたときから物語の面白さ、ストーリーテーリングを期待されていました。審査委員の石原慎太郎さんにもそう評価していただいたんです。

長崎を舞台にするだけではなく、有明海や阿蘇を舞台にした物語も書きました。やはり地元長崎を書いたほうが受け取る方も分かりやすいようで、しばらくして『聖水』を書き、『爆心』につながっていきました。

――長崎に生きる作家として、それは書かざるを得ない。でもそれを書くと、「原爆作家」「長崎の作家」と受け止められるようになってしまうという葛藤はあるんでしょうか。

それは仕方がないことなのだと思います。でもいわゆる“原爆もの”だと思われると、一般の方々はまず読んでくれません。本が読んでもらえるかどうかなど気にしないで、割り切ってしまえばいいと思うんですが、本を書くことだけで生活していくと、そうはいかないでしょうね。「売れる」ものを書かなければならない。私はデビューしたのが36歳でしたから、「こんなものを書くだけでは食べていけない」というのはよく分かっていました。覚めているんですね(笑)。ただ、単なる面白いお話を書くつもりは最初からありませんでした。何をどう書いていったらいいのか、悩みながら何とか書いてきたというのが本当のところです。

被爆60周年の2005年に、長崎出身の作家、林京子さんにお会いしました。林さんと違って被爆者ではなく、被爆経験のない自分が長崎にいるというだけで原爆のことを書くことについてためらいもあるという話をしたら、林さんから「小説は自由です。自由に書いていいのです」と言われ、なんだか肩が軽くなった感じがして、ようやくやりたいように書こうと思えるようになりました。

最近は、「長崎に生まれたことや、父母が被爆者で被爆2世であるといった自分の生い立ちは与えられたのだから仕方がない。そうやって生きるしかない」と思うようになってきました。最後までやり続けるしかないのかなと思うようになりました。

――青来さんがそれでも長崎のことを書いているから、東京の人間にも届いて読むわけです。それに対する長崎の文壇の感想はどうですか。

地方文壇というのは、一部の大都市を除いてほとんどなくなりつつありますよね。文芸誌で切磋琢磨(せっさたくま)するというのが今はもうなくなりかけています。メンバーの方も高齢化されてしまいました。かつては「文学界」にも地方文芸誌批評がありましたけれど、それも今はなくなってしまい、今は文芸誌よりもネットで発表するようになってきている。そうすると地域性はなくなってしまいますよね。

――これからはどんな小説を書いていきたいと思っていますか。

やはり、長崎の土地の記憶の中で書いていくしかないのかなと思っています。毎日の営みをここでやるしかないのだと思います。

――最後になりますが、青来先生にとってキリスト教とは?

聖書には善きサマリア人の例えの話がありますね。私は互いに助け合う“善き隣人”でいられたらいいと思っています。子どもの頃からそうやってきましたから。宗教の中身うんぬんよりも、隣同士に住む人でうまくやっていければと思います。友人でも長崎に住むようになって結婚して、洗礼を受けてキリスト教徒になる人もいます。職場や隣近所の方が亡くなると、カトリックかどうかが話題になるところです。お葬式では「御仏前」にするか「お花料」にするかが違ってきますから。国際情勢が、宗教や民族をめぐって排他的な動きが出てくる中で、“善き隣人”という思想はこの土地で磨かれて、深められていくようにも思います。

――ありがとうございました。

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