Skip to main content
2025年6月16日23時55分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 書籍
神学書を読む

神学書を読む(4)『入門講義 キリスト教と政治』②

2016年10月27日16時53分 執筆者 : 青木保憲
  • ツイート
印刷
関連タグ:青木保憲
これだけは読んでみたい神学書(4)『入門講義 キリスト教と政治』その1+
田上雅徳著『入門講義 キリスト教と政治』(2015年、慶應義塾大学出版会)

キリスト教と政治という、一見すると水と油のようなものが、実はコインの裏表であったことに気付かせてくれるのが本書である。その後編として、宗教改革以降のキリスト教と政治の在り方を本書に沿って紹介してみたい。

ルターの宗教改革の「宗教の非政治化」は同時に、政治を宗教の拘束から解き放った

宗教改革というと、プロテスタントの始まりということになり、とかく神格化されやすい。本書第9章では、ルターの実像と、彼を周囲の人々がどう受け止めていったかの切り分けがきちんと行われている。そして両者に共通し、歴史を大きく突き動かしていく要素として「聖書主義」と「信仰義認」を取り上げている。

ルターと聞いて上記の2つを思い浮かべることは、私たちにはできる。世界史の授業で習ったり少し専門的な書物を読むなら、それについての解説は必ず書かれているだろう。しかし、それが欧州社会をどのように導き、その結果、どんな政治的形態を生み出していったかについて、ここまで深く切り込んだ解説を聞く機会はなかったように思う。それは、本書164~165ページにクライマックスを迎える。

「考えてみるとルターという人は、福音主義という理念を掲げつつ、『宗教の非政治化』を目指そうとした、といえる。(中略)けれども、ここでの『宗教の非政治化』は『政治の非宗教化』を伴っていた。すなわち、16世紀にあって宗教家が『既存の世俗的な政治秩序に私は口出ししない』と宣言するとき、政治権力は、宗教が説く規範の拘束から脱するチャンスを得たのである」

ルターを神格化したり超人間的な存在に置くなら、宗教改革はプロテスタントにとって輝かしい出来事以外の何物でもないことになる。しかし現世に生きる人々の営みを「政治」というある種冷徹な観点から見るなら、ルターの行状は結果的に政治権力を宗教的な拘束から解放し、自らの欲望のままに生きる道を開いたことになってしまう、と著者は述べているのである。ここに、宗教的熱狂によって歴史をゆがめてしまう愚を犯すことなく、アカデミズムに立脚し続ける論考を見て取ることができる。

10章から12章までは、ルターが切り開いたプロテスタント的世界観をどのように受け止めてきたかを、欧州中心に描いている。このあたりも、世界史のマッチング問題で苦闘したような単語の結び合わせではなく、ルターの主張を後の人々が検証し、その中のどこを強調して受け止めてきたのか、逆に反論したり反動形成を生み出してきたか、について述べられている。

このあたりから、政治的な概念が次第に神学的なそれと結び合わされて、若干内向的(哲学的)に振れているように思われる。それは著者の叙述傾向というよりも、むしろ欧州での新神学(リベラル神学)の特質がこのような内向的なもの(あるいは宗教が「心の中の問題」になった)故であろう。神学的専門用語が随所にちりばめられているため、初心者には少々骨が折れる箇所である。しかし何度も読み返すことで、歴史の表舞台を動かしてきた人々の内面の動機づけを知ることができるため、とても有用であることは変わりない。

理念によって国家は建設できるのか?という壮大な問いとしての米国

この雰囲気が、13章からはかなりアクティブなものになっていく。ピューリタンたちが新天地を求めて米国へ渡るくだりである。ここで、理念によって国家は建設できるのか、という壮大な実験に彼らは挑むことになる。そして再び、「共同体」という概念が呼び起こされることになる。

これは、本書が旧約聖書の中の政治形態に言及したときに取り上げた概念である。これが17世紀に再び取り上げられることで、米国という国家がいかに宗教色強いものであるか、さらにそのような国家の中で、いかにして政治は発展することになるのかが、第14章のテーマとなっている。

著者が米国におけるキリスト教と政治の在り方を論じることで、本書を閉じたのはなぜであろうか? それは単に世界の最先端に米国が位置しているという意味ではない。実は米国こそ、宗教的な理念と世俗的な現実との相克(そうこく)をはっきりと示してきた国は他に類を見ないからである。本書の最後はこんな言葉で締めくくられている。

「本書が取り扱ってきたキリスト教は二千年におよぶ歴史を持つ。そしてこの宗教がかくも長き時間にわたって命脈を保ちえたのは、それが、特にその聖典(聖書)が特定の政治的立場に回収されない豊かで深みのある教説を保持してきたからに他ならない。戦後アメリカの例にあったように、時代は時代ごとにこの宗教と聖書から、まさに当の時代が必要とするメッセージを取り出してきた」

そして冒頭に書いたように本書においては「政治的な事柄」として語られてきたことが、実は聖書をどのようにこの地上に実現するかという人間の営みであり、同時にどうやって聖書やキリスト教的な縛りから解放されて現実に適した指針を導き出せるかという、人々の葛藤のドラマだったと結論付けられている。

そういった意味で本書は、政治学のテキストであると同時に、まさに神学的なテキストと言うことができる。ちょうど車の両輪のように、一方に政治、一方にキリスト教(宗教)が位置付けられている。双方が並び立つことで、現実的な社会が動き始めるのである。

このような形態は、欧州や米国だけでなく、実はアジアにおいても十分機能している。言い換えるなら、このような研究方法は、キリスト教世界だけに留まらず、どんな宗教、どんな国家の政治的推移を考察するためにも援用可能なものであると言えよう。

秋の夜長、じっくりと1日1章ずつ読み進めていくことをお勧めする。そして各章のまとめや感想を書き留めていくことである。すると2週間(14章)の果てに、あなたが無意識に抱いていた世界観を自覚することができ、その環境で生きる私たちのアイデンティティーをあらためて認識することができるであろう。

田上雅徳著『入門講義 キリスト教と政治』(2015年、慶應義塾大学出版会)

<<前回へ     次回へ>>

◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科修了(修士)、同志社大学大学院神学研究科修了(神学博士)。グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(明石書店、12年)、『読むだけでわかるキリスト教の歴史』(イーグレープ、21年)。

関連タグ:青木保憲
  • ツイート

関連記事

  • 神学書を読む(3)戦国時代とキリシタン史から現代の宣教のヒントが見えてくる!?②『概説キリシタン史』

  • 神学書を読む(3)戦国時代とキリシタン史から現代の宣教のヒントが見えてくる!?①『戦国と宗教』

  • 神学書を読む(2)トランプ現象を前に『反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―』

  • 神学書を読む(1)キリスト教から米国が見えてくる『宗教からよむ「アメリカ」』

  • 【書評】ハンス・キュンク著『キリスト教は女性をどう見てきたか―原始教会から現代まで―』

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(224)音楽が支える聖霊による祈り 広田信也

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • 自分の考えを大切に生きよう 菅野直基

  • ワールドミッションレポート(6月16日):アンゴラのクワンガリ族のために祈ろう

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • 花嫁(27)絶えず喜んでいなさい 星野ひかり

  • ワールドミッションレポート(6月12日):ベルギーのために祈ろう

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(224)音楽が支える聖霊による祈り 広田信也

  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • トラウマからの解放と癒やし 菅野直基

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.