蜜と塩―聖書が生きる生活エッセイ(17)失って分かったこと ミュリエル・ハンソン

2016年8月12日10時51分 コラムニスト : ミュリエル・ハンソン 印刷

パーミーがおもちゃの乳母車と人形を失(な)くし、わが家には「大変だ」という空気が漂っていました。乳母車は新品同様でしたが、人形は彼女が物心ついた頃からずっと遊んでいる人形です。そればかりでなく、日本から抱きかかえて持ち帰ってきた物です。彼女は髪の毛がなくなってしまったこの人形ミッキーを、肌身離さず持っていました。ボロボロになった小さな人形は、パーミーが行く所へはどこにでも引っ張り回されていました。

この人形と乳母車がわが家の庭から姿を消してしまったのです。私たちは家の近くを何回もくまなく探し、裏庭、空き地は虱(シラミ)つぶしに探し歩きました。会う人、誰にでも、「赤いおもちゃの乳母車に乗せた髪の毛のない小さな人形を見かけませんでしたか」と尋ねましたが、たいていの人からは「ええ、見たことがありますよ」という返事だけでした。

さらに、人形と最後に遊んだという子どもまで突止めたのですが、人形がどこへ行ってしまったのか、知っている人は1人もいませんでした。私たちは人形がいなくなってしまったパーミーと向かい合い、その晩は、娘を寝かせるのに一苦労の夜になりました。

娘は泣き泣き、ミッキーについて次から次へと私に話し掛けてきました。「ママ、もう1回でいいから、外へ行ってミッキーを見てくれないかしら。暗くなってミッキーは怖がっているわ。今晩、寒がっていないかな。セーターを着て、毛布も持っていたから、大丈夫だよね」と。

パーミーはいつもミッキーをベッドに入れて一緒に寝ていたので、ミッキーがいない夜は眠れませんでした。けれども、「分かった」と言って、玩具箱から彼女の電話を取り出し、ダイヤルしたのです。

「もしもし、ミッキーはそちらにいますか。いい子でいるように言ってください。あした、あたしが迎えに行きますから、泣かないようにも伝えてください。さようなら」。電話の会話でパーミーの気持ちがちょっとの間、穏やかになり、私たちは娘を寝かせようとしました。

嫌々ながらパーミーはベッドに登り、それからお祈りを始めたのです。「イエス様、どうかミッキーをお守りください。そして、あした、あたしの家に無事に届けてくださいね」。私はパーミーの涙をふき、間もなく娘は眠りにつきました。

何日も何日も、私たちはミッキーと乳母車を探す手がかりになりそうな物には気を配りましたが、ミッキーに会う日はやってきませんでした。

ミッキーがいなくなってから、最初の数日は、娘はミッキーについてよく話し、「イエス様が、必ず、ミッキーを連れてくるね」と言い続けていました。「自分の人形は必ず戻ってくる」という娘の純粋な信仰に、私たちはついていけませんでした。

日がたつにつれ、ミッキーが戻ってくるという望みは薄らいでいきました。そこで、私たち両親は、娘には何も言いませんでしたが、グリーン・スタンプを集めて新しい乳母車と人形を買ってあげようと話し合いました。

家族の会話に再びミッキーが登場したのですが、その時の、パーミーの言葉に私たちは耳を疑いました。以前は、「イエス様がミッキーを連れ戻せるわよ」ときっぱり言っていましたが、今回は「イエス様がどこかでミッキーを守っているね」と話したからです。

あれから何週間もたっていますから、ミッキーは永遠にどこかへ行ってしまったように思えます。

人形がいなくなった最初の晩にパーミーは泣きましたが、「ミッキーをお守りください」とイエス様に祈り、委ねてからは、娘はもう決して泣きませんでした。

パーミーにとって、ミッキーの存在がどれほど大事であったか、一緒にいる私たちはよく分かっていました。そのミッキーがいなくなってから、娘の心が立ち直っていく様子をそばで見ていて、驚くばかりでした。信仰が生活になる教えを娘からもらうことになりました。

私たち大人も、2歳の子どもがしたように、私たちの心の痛み、傷を主の元に持って行き、主に癒やしていただいたらどうでしょうか。多くの苦しみや、思い煩いから解き放たれる時になります。

「あなたがたの思い煩いを、いっさい神にゆだねなさい。神があなたがたのことを心配してくださるからです」(Ⅰペテロ5:7)

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【書籍紹介】
ミュリエル・ハンソン著『蜜と塩―聖書が生きる生活エッセイ

蜜と塩

読んでみて!

一人でも多くの方に読んでいただきたいエッセイです。聖書を読んだ経験が有る、無しにかかわらず、著者ファミリーの普段着の生活から「私もそのような思い出がある」と、読者が親しみを抱くエッセイです。どなたが読んでも勉強になります。きっと人生の成長を経験するでしょう。視野の広がりは確実です。是非、読んでみてください。

一つは、神を信じている者が確信を持って生きる姿をやさしく、ごく当たり前のこととして示しているからです。著者は、日本宣教のため若き日に、情熱を燃やしながら来日しました。思わぬ事故のためにアメリカへ帰らなければなりませんでしたが、生涯を通して神への信頼は揺るぎませんでした。

もう一つは、日常の中に働いている聖霊のお導きの素晴らしさを悟ることができるからです。私たちの日常生活が神様のご意志のうちに在ると知ることは、安心と平安を与えるものです。

さらに、著者のキリスト者生活のエピソードを通じて、心が温まるものを感じます。私たちの信仰生活に慰めと励ましが与えられます。信仰が引き上げられて、成長を目指していく姿勢に変えられていく自分を発見するでしょう。

長く深く味わうために、急がずに、一日一章ずつでもゆっくりと読んでみてはいかがでしょうか。お薦めいたします。

ハンソン夫妻の長い友  神学博士 堀内顕

ご注文は、全国のキリスト教書店、Amazon、または、イーグレープのホームページにて。

ミュリエル・ハンソン

ミュリエル・ハンソン(Muriel Hanson)

ミュリエル・ウエッスマン(Muriel Wessman)はミネソタ州出身、カルヴィン・ハンソン(Calvin Hanson)はカリフォルニア州出身。2人は、イリノイ州シカゴにある福音自由教会聖書学校で出会う。その後、ディヤーフィールド(Deerfield)郊外にあるトリニティー(Trinity)神学校で学ぶ。両氏はウィートン大学(Wheaton)で学び、ミネソタ大学(Minnesota)を卒業。1947年6月7日に結婚。

夫がミネアポリスで牧会に携わっていた時の1949年3月、2人はアメリカ福音自由教会から日本への初代宣教師としての召命を受け、遣わされることになる。

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