日弁連集会、改憲の動きに懸念(2)

2012年11月7日07時15分 印刷
+伊藤氏の講演で使用されたスライド。
日本の右傾化を懸念

 孫崎氏は1979年5月31日の読売新聞の社説で、「尖閣諸島の領有権問題は1972年の国交回復時にも、昨年夏の日中平和友好条約の調印の際にも問題になったが、いわゆる『触れないでおこう』方式で処理されてきた。つまり日中双方とも領土主権を主張し、現実に論争が存在することを認めながら、この問題を留保し、将来の解決を待つことで、日中政府間の了解がついた。これが、共同声明や条約上の文書にはなっていないが、政府対政府の歴とした約束ごとであることは間違いない。約束した以上はこれを順守するのが筋道である」と書かれていたことを紹介した上で、「今、この発言をする新聞はない。多分、する政党もない。日本はどうなってしまったのだろうか?なぜ今日我々は全く違う方向に行ってしまったのか?それは多分日本がものすごい勢いで右傾化しているからではないか。自分の主張にものすごい関心があるが、相手の主張にはほとんど耳を傾けない、多分それが国としての右傾化ではないか」と懸念を伝えた。

 また集団的自衛権行使の動きについて、「日本で今起こっていること、原発、増税、TPP、オスプレイの問題、すべてある意味で『まやかしの議論』を行っていて、一番本質のことを正確に話していない」と述べ、集団的自衛権行使が国連の精神に反する動きであることの説明を行った。

 集団的自衛権行使は国連憲章に反する動きである

 国連憲章では、集団的自衛権は誰かに攻撃されたときに初めて行動を取れることが定められている。孫崎氏は、「基本的には、国連で考えていることは、いかなる国の主権も尊重し、それに対して行動を取らないということ。では今やろうとしている集団的自衛権の行使はなんなのか?冷戦が終わった後の米軍の国際戦略と関わっている。冷戦が終わって、ソ連という脅威がなくなった。その時の米国にとって最大の脅威は日独の経済力であり、米国には二つの選択があった。軍事をやめて経済にシフトするか、もう一つは、せっかく世界一になった軍事力を使って米国の利益を保持していくか、結局は後者になった。ソ連という脅威はなくなったときに、米国はイラン、イラク、北朝鮮のような不安定な国々が大量破壊兵器をもっているので、これが世界秩序にマイナスなので、国際環境を改善するために軍事行動を取るという戦略に出るようになった」と説明した。

 その上で集団的自衛権の行使が認められ日米の軍事協力が極東の安全保障から世界中に展開し、国際的安全保障を改善するためという名目で軍事行動を米国と一体化して行うようになるとき、「相手から攻撃をされて初めて行動をとるのではなく、自分のほうから攻撃に行って相手を変える。それで起こったのがイラク戦争であり、アフガニスタン戦争である。『国際的な安全保障、環境の改善を図るため』というのは、必ずしも正当化できない理由によって米国、西側の軍が出て行くということ。米国がいう国際的安全保障の改善というものは、その動機が必ずしも正しくはない可能性があるし、その後の状況も正しくはない可能性がある」と懸念の意を伝えた。

 また日米安保条約批准時に国民から大きな反感を買った岸信介政権について孫崎氏は、「今振り返ってみると、安保条約は少なくとも今の自民党に比べると、全く違うプラスの面を持っている。日米安保条約では国連憲章に違反することはひとつもしないと言っている。集団的自衛権は日本に攻撃があったときには、日米双方が自分の国の憲法に従って行動を取ると言っている。地域法定は安保条約にぶら下がっている。安保条約はあの当時においては、米国の意向に反するものを敢えて作ったのだと思っている。そのような岸さんの動きに懸念をもった米国が、ちょうど『アラブの春』と同じように『民主化』というスローガンのもとに岸さん潰しにかかったのではないか」と一定の評価を与えた。

 孫崎氏は「いずれにしても今の日本は集団的自衛権というもので、非常に変な方向に行こうとしていて、それを後押ししているのが尖閣諸島の問題。これはどういう問題なのかということの位置づけをしっかりしておかないと、尖閣諸島の問題を巡ってどんどん変な方向に行ってしまう」と警告した。

領土問題、平和的解決法を真剣に考えるべき

 孫崎氏は尖閣諸島問題について「我々はいかに平和的にこの問題を解決していくかを考えていかないといけない。いろいろな方策があると思う。領土問題で争うことによって失うものを懸念するより、領土問題を超えて協力することで得るものを考えることがとても重要。領土問題を離れて物事をとらえ、日中間でどこが悪くなったのかを考えてみる必要がある。尖閣の問題は『棚上げ』という立派な解決方法があったのにそれがひっくり返された。日本の憲法を守る平和を愛する者として、一つ一つの個別の問題についてどのように平和的な手段があるかということを考えていかなければならない。ヨーロッパではドイツとフランスの間で、アルザス・ローレンヌ地方の領土問題があったにもかかわらず、それを乗り越えて協力している。日本と中国、何で軍事紛争が起こりそうな状態になってしまっているのか、もう少し真剣に我々が考えてみる必要があると思う」と伝えた。

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