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信仰と愛が試される時

信仰と愛が試される時(10)

2012年4月12日16時56分
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関連タグ:森本春子
森本春子牧師<br>(2011年8月30日、聖愛基督福音教会で)+
渓谷で洗礼を授ける森本牧師と受洗者の様子(写真提供:聖愛基督福音教会)+
森本牧師と洗礼を受けに渓谷に来た山谷の人々(写真提供:聖愛基督福音教会)。+

~十数年の祈りが聞かれて~

山谷の人たちの学歴は、大卒から旧制尋常小学校中退まで、さまざまです。中には、東大を卒業しており事業に失敗した、という人もいます。
T兄弟は大卒で、元は高校の教師だったそうです。しかし、一杯の酒の誘惑にも勝てない弱さのゆえに、ついにアルコール依存症になり、教職も辞めざるを得なくなりました。妻子とも別れて、流れ流れてこの山谷にたどり着き、日雇い労働者となっていました。

しかし、この期に及んでもなおプライドが捨てられず、酔うたび労働者仲間に、「俺はねぇ、あんたたちとは違うんだからな。俺は学校の先生なんだよ」と前歴をひけらかすのでした。

どんなに伝道しても、「ふん。キリストが飯を食わせてくれるのかよ」と小馬鹿にし、手がつけられないほど鼻っ柱が強く、何かにつけて人を批判しました。純朴な人が多いこの町では、異色のタイプでした。私も、ついに正面から伝道することは止めて、心の中で救われるように祈り続けることにしました。
それから十数年の歳月が流れていきました。ものごとには因果関係があり、自分がしでかしたことの結果は正確に表れ出てきて、自分で責任を取ることになります。T兄弟は、アルコールのため内蔵や脳の神経系統の一部が犯されていき、両足がパンパンにむくんで歩けなくなり、働くこともできなくなりました。そればかりか、排せつ機能を司る神経までが冒され、失禁しても自覚できないという体になってしまいました。そのようにして、プライドも何もはぎ取られ、惨めな状態になって初めて神様に心を向け、教会に来るようになりました。
礼拝を始める前に、「ご起立ください」と言われて一同立ち上がりますと、T兄弟の椅子は糞尿で一面黄土色になっています。私はとっさに、「皆さん二分間黙とうしてください」と言ってから、大急ぎで彼をトイレに連れていって、また大急ぎで戻って来て皆の礼拝を導きます。その間、主人にこの人のズボンも下着も着替える準備をしてもらい、賛美の間、急いで下半身を洗ってあげるのです。
T兄弟の失禁は、脳神経麻痺から来るものなので治りませんでした。私は、この人がイエス様の御力にすがってアルコール依存症の悪霊や、あらゆる悪霊から解放され、何とか癒され、この惨めな状態から脱け出せるように祈り続けていました。
しばらくして彼は教会に来なくなり、町でも姿を見かけなくなりました。私は心配になって、夜昼となく捜し回りました。ある日、公園の誰もいない一番隅っこでT兄弟が小さくなっているのを見つけました。もう何年もお風呂に入っていないうえに、たれ流しときていますから、身体中から強い悪臭を放っています。その様相たるや、想像を絶していました。かつての鼻っ柱の強さはどこへやら。見る影もありません。
「おまえは臭い。あっちに行け」といった調子で、野宿仲間からも嫌われいじめられているのでしょう。会えたことがうれしくてなりませんでした。
「あら、T兄弟。よかった。ここにいたのね。どんなに捜したかわかりゃしない。衣類持ってきたから、着替えなさい」
「先生、ありがとう」
「みんながあなたを嫌がっても、イエス様はあなたを愛してるのよ。私もあなたを愛してるわよ」
彼は、悲しそうな顔に寂しげな笑みをかすかに浮かべて聞いていました。しかし彼は、その公園からも突然姿を消してしまいました。私は、再び夜昼となく捜し続けました。(死んでしまったのかしら)
四か月後、職業安定所の前に座っている男の人に、何気なく目をやりました。そしてそれがT兄弟だとわかったとたん、まるで長い間離れ離れになっていたわが子に再開できたかのような気持ちで、思わず走り寄りました。
「よかった、よかった。T兄弟。よく生きててくれたねぇ。よくがんばってきたねー」
「先生、俺は両足を大火傷してしまって、二か月くらい入院してたんだ。でもまだ治りきらないうちに、退院させられたんだよ。病院でもどこでも、みんなが、『おまえみたいな人間は死んだほうがましだ。死ね、死ね』と言うんだ…」
そんなことを言われれば、誰だって心がずたずたに傷ついてしまう。
「それで、何回も自殺しようとしたけれど、できなかった。俺が自殺したら、森本先生がどんなに悲しんで泣くだろうと思うと…」
この言葉を聞いたとたん、私自身、まだまだ生きている価値があると思いました。
「よかったー。生きててよかった。人間はね、価値があるから生きるんじゃないのよ。神様が私たちにくださった、たった一つしかない命を、誰も代わって挙げることのできないこの人生を、大切に生きるところに価値があるのよ。生きなさい。兄弟!」
私は、植物状態と化しても、与えられた生命を最後まで全うした亡夫を、看病した体験から出た実感を込めて励ましました。T兄弟は、涙をポロポロこぼしながら言いました。
「先生に会えてうれしいよ」
私も、そう言ってもらえたことが感謝でならず、胸が詰まりそうでした。
「ねぇ、あさって洗礼式があるのよ。来なさい。あなた、イエス様信じるでしょう?」
「信じますよ。実はとっくに信じてるんです」
「あなたの足の火傷、洗礼受けたらいやされるのよ」
彼は、受洗する決心をしました。でも、たれ流しの衣服のままで洗礼式に臨むわけにはいきません。まずは、体を洗って着替えさせなければなりません。しかし足がパンパンにむくんでおり、ズボンも靴下も脱がせることはできません。仕方ないので、包丁で服を切り裂いて、下着まで全部脱がせました。彼の着ていたものは、どれも糞尿がコチコチに固着していて、しょう油で煮しめたような色をしています。靴下の中や体の前後にも、汚物の塊がこびり付いていました。まず陰部から洗おうとすると、「いいよ、いいよ」と言って隠そうとします。
「ちょっと、ちょっと。天地創造の主なる神が付けてくださった神秘的なものが、何で恥ずかしい!」 
私は、わざと声を荒げて叱りつけました。そうとでも言われなければ、この人は恥ずかしくて死にたくなるほどでしたでしょう。彼の足は火傷の跡が痛々しく、肉はただれて固まり、骨の一部がむき出されています。私は常備してある薬草「いぶしの葉」を巻きつけて、包帯をしてあげました。
洗礼式には、朝の三時ごろから皆が教会前の道路に整列して待っていました。朝五時から六時の間を、集合時間に決めておいたのですが。
「夜中に、ゴソゴソ、ガヤガヤ何してるのか。やかましい!」
ご近所のお年寄りに、叱られてしまいました。
「すみません。申し訳ありません。年に一回だけ、こういう洗礼式をやるんです。どうかお赦しください」
何度も頭を下げて丁重に赦しを乞いますと、拍子抜けしたような口調でおっしゃいました。
「まあまあ、それじゃ、いいよ」
愛を込めて真心から赦しを乞うなら、敵はいなくなります。
受洗者には、下着から全部着替えさせました。皆お揃いの半そでTシャツ姿で、見違えるように小ざっぱりしています。一同観光バスで奥多摩に到着。秋川渓谷での洗礼式が始まりました。水辺に行くには、三メートルくらいのゆるやかな土手を降りなければなりません。しかし、T兄弟は両足がむくんでいるため、降りて行けそうにありませんでした。
「ああ、足痛くて歩けない。いいよ、もう。洗礼受けられなくても、ああっ、痛いっ、痛いっ」
彼は、痛みのあまり悲痛を連発しました。私は、主人ともう一人の介助者に助けてもらい、三人がかりでこの兄弟を背後から抱え込むようにして、ようやく川辺まで連れて行って水に入れました。T兄弟は川に入ったとたん、もう「痛い」とは言わず、厳粛な面持ちになりました。今までの古い自分は死んで、これからは新しい生命に生きることができるという希望で、緊張していたのでした。
一人の魂は、全世界と引き換えることができないほど尊いです。十数年もの間、救いを祈りに祈り、願いに願ってきたその魂が、今まさに新生の恵みに与かろうとしています―。
その感動で胸が一杯になり、「父と子と聖霊の名によって、T兄弟に…」と言いかけた私は、声が詰まってしまいました。一同、どうしたのかとびっくりして、いっせいに私の方を見ました。
受洗したとたん、T兄弟は自力で立ち上がりました。支えてあげようとしますと、「いいよ、手を放してよ」と言います。さらに驚いたことに、大喜びで飛び跳ねるようにして土手を登っていったのです。
「よかった、よかった。歩けるようになった!」と大声で叫びながら。
皆は、しばしの間、ただただあっけにとられていました。それから天に向かって手が痛くなるくらい拍手を送り、この栄光を神に帰しました。(続きはこちら)
================================================
(本文は森本春子牧師の許可を得、「愛の絶叫(一粒社)」から転載しています。)

森本春子(もりもと・はるこ)牧師の年譜

1929年 熊本県に生まれる。
1934年 福岡で再婚していた前父の養女となる。この頃、初めて教会学校に通い出す。
1944年 福岡高等簿記専門学校卒業。義母の故郷・釜山(韓国)に疎開。
1947年 1人暮らしを始め、行商生活に。
1947年 王継曽と結婚。ソウルに住み、三男二女の母となる。
1953年 朝鮮戦争終息後、孤児たちに炊出しを続け、17人を育てる。
1968年 ソウルに夫を残し、五児を連れて日本に帰る。
1969年 脳卒中で倒れた夫を日本に連れ帰る。夫を介護しながら日本聖書神学校入学。
1972年 同校卒業、善隣キリスト教会伝道師となる。山谷(東京都台東区)で、独立自給伝道を開始する。
1974年 夫の王継曽召天。
1977年 徳野次夫と再婚。広島平和教会と付属神学校と、山谷の教会を兼牧指導。
1978年 山谷に、聖川基督福音教会を献堂。
1979年 この頃から、カナダ、アメリカ、ドイツ、韓国、台湾、中国、ノルウェーなどに宣教。
1980年 北千住(東京都足立区)に、聖愛基督福音教会を献堂。
1992年 NHK総合テレビで山谷伝道を放映。「ロサンゼルス・タイムズ」「ノルウェー・タイムズ」等で報道され、欧米ほか150カ国でテレビ放映。
1994年 「シチズン・オブ・ザ・イヤー賞」受賞。
1998年 「よみがえりの祈祷館」献堂。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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