福音総合理解に立つ新しい皮袋の創造へ(3)

2011年11月16日10時54分 印刷
CT: 岸先生は神学校の学長でもあり、巡回伝道者であり、サックス奏者であり、水泳も続けておられており、多方面で活躍されておられますが、そのように何にでも熱心に取り組める力の源はどこから来ているのですか?

岸氏: 僕の力の源は「福音総合理解」です。「イエス様の恵み」です。「三位一体の神の贖罪愛」です。僕のビジョンはひとつです。「救われていない人たちにどのようにしたら、福音を伝えることができるか」ということです。僕は「巡回伝道者」であることが召命であり使命ですが、巡回伝道者は教会の牧師とは異なっています。巡回伝道者は教会に招かれて、その教会で伝道的な面と聖書教育的な面で説教を通して奉仕させていただきます。良い仕事をするためには、健康が必要です。これは世の常識でもありますが、健康でない限りは良い仕事はできません。そのような点から、水泳は巡回伝道者として、体力づくりに欠かせないこととして、ずっとやってきました。水泳競技にいつでも出られるコンディションを整えているということが、伝道者としての奉仕ができる体力的な条件でもあり、水泳競技ができなくなったら僕の巡回伝道も終わりだと思っています。

 サクソフォンに関して言えば、それを始めた背景はこういうことです。スポーツ選手、映画俳優やテレビタレントなどの有名な人が来るとなれば、市民会館は人で一杯になりますが、どんな魅力的な講演のテーマを掲げても、伝道集会には地域の人が関心を示そうとしない状態が続いているように思えます。昭和20年、30年代の日本では、「教会で良い話がきけるから」と言って人がよく集まってきていました。しかし今は情報が溢れかえっていて、良い話は教会の外でいくらでも聞けるので、教会に来る必要がなくなってしまったかのようです。動員力もない、集客力もない自分。チラシを新聞に何万枚入れても、ポスターを張り巡らしてもほとんど誰も来ないような状況を打破するために、昔やっていたサクソフォンをやり直して、サックスコンサートを売りにすれば、コンサート伝道をしっかりやれば、地域の人々が教会に来てくれるかなと思い、45歳くらいから本格的にサクソフォンをやり直しました。そして、53~54歳くらいからちょっと未熟な出発でしたけれどもサックスコンサートによる伝道に踏み出すことにしました。水泳競技で、それなりに体力をつけてきましたから、サクソフォンを吹くという事も、体力的に問題ではありません。1時間半のコンサートをこなすためには、水泳の訓練をやっておけば大丈夫です。車を運転して巡回伝道していますから、体力が必要です。今のところは病気もなく、健康優良児のようにやれていますので、これから80歳までの10年も同じ内容の仕事を続けることができると思っています。サックスの演奏は巡回伝道者としてもう切り離せなくなりました。

 僕が何にでも取り組む力の源は「福音を伝えるため」「良い説教をするため」という使命感にあります。良い説教は、良い伝道をするためというひとつのビジョンです。JTJの働きがそれに加えてできるというのは僕にとってすごい恵みです。

 僕が巡回伝道者として立ち上ったのは、35歳のときでした。そして10年、日本の教会での礼拝出席を守るキリスト教徒の割合が0.2パーセントという状態は、このあと30年巡回伝道を続けても何も変わらないと思いました。ですから僕は巡回伝道者として活動するとともに、新しいタイプの神学校を創立して、「だれでもいつでもどこででも」勉強できるシステムにして、律法主義的な要素と福音総合理解の見極めがきちんとつく指導者を養成していくことが大切だと思いました。牧師の養成とともに信徒の教育、この両方を実現できる従来の枠組みを越えた神学校を設立すれば、クリスチャン人口1パーセント、礼拝出席を守るクリスチャン人口0.2パーセントの数字を多少動かせるのではないかと思い、JTJ宣教神学校を設立することにしたわけです。

 JTJ神学校の運営を20年続けてきて、卒業生は1200人台になっていると思いますが、それで何がどう変化したかというと、まだこれからだと思っています。卒業生たちが至るところでそれなりの活躍を続けて今後10年、20年、これが続いていけば、多少変化が出てくるのではないかと思っています。僕はリバイバルにあまり期待していません。リバイバルがなくても、伝道が進む、教会が伸びていく、それが必要だと思います。

 自己責任の中で、聖霊と御言葉で地に足の着いた教会形成をやっていかないといけないと思います。リバイバルは天のお父様の御心ひとつで、ある日、ある時与えられるものです。リバイバルが与えられた時の受け皿としての教会を作って行くことが大事だと思っています。リバイバルの後、押し寄せてくる求道者を受け止めるためにも、多くの訓練された指導者と無数のハウスチャーチが存在している必要があります。リバイバルが生じたときに、教会が変わっていなければ、人々は潮を引くように教会から去って行き、リバイバルは終わってしまいます。JTJはリバイバルの後の求道者をどのように受け止めるかに目を向けた神学校です。リバイバルが来なくてもやっていけるという地道な日本宣教のあり方を目指しています。

CT: 岸先生ご自身はどのようにして召命を受けられたのでしょうか?

岸氏: 僕は母と祖母に育てられたクリスチャンホームの五代目で、中学校2年生のときに洗礼を受けました。しかしその後数学と理科の授業に躓いてしまい、高校受験で失敗して第一志望ではない別の高校に進学しました。そして高校1年の一学期で、数学と理科の授業を受けるのが怖くなり、それが原因で不眠症になって、僕はその時に完全に潰れてしまいました。15歳という、人生のすごく若い時期において挫折を経験しました。同学年の生徒の中で、一番に挫折して行き詰まってしまいました。

 一学期で高校を退学して外にも出られないような中にあって、聖霊のパブテスマをいただくという、一生一回限りの霊的な体験を受けました。その体験を通して、天地の全てが逆さまになるかのように価値観が変化し、僕の中から希望と喜び、元気がわき上がり、自分でも驚きと感動を隠せない状態になりました。この体験を世界の人々に教えてあげたいと強く思いました。それで牧師になろう、伝道者になろうと即献身する決断に至りました。これはもう抑えられない志願でした。志願が生じるのは、聖霊体験を通してだと思います。これを召命といえば召命でしょう。その体験をして以来僕はまっすぐです。その時すぐに聖書学校に入学しようと思いましたが、昭和30年前後の当時、せめて18歳を越えていれば良かったのですが、16歳の中卒の少年を受け入れてくれる聖書学校がどこにもありませんでした。そこでとりあえず穏健な優しいキリスト教主義の高校を先生に紹介していただきました。僕はそれ以来招集兵ではなく志願兵として、牧師、伝道者としてのビジョンを失ったことはありません。

CT: まさにⅡコリント12章に書かれてある「弱さの中に主の恵みが注がれる」というご経験だったのですね。

岸氏: そうですね。大逆転でしたね。僕の家系は理系の家系で、数学と理科ができない人間が出てくるというのは、常識的に、DNAとして考えられないことです。そのような中にあって、牧師への道を主が先導してくださったのだと信じています。僕は特別に自分が牧師・伝道者として選ばれたという自覚は何もありません。主から特別な憐れみを頂いて、15歳16歳のまだ頭の柔らかい可能性だけがあるときから、一筋にこの道を走るようにされたと思えてなりません。今となっては、僕の人生は本当にこれで良かったとしみじみ思っています。
      
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岸義紘(きし・よしひろ)氏 :Jesus To Japan 宣教神学校学長、ミッション2001巡回伝道者、ムラサキスポーツ競泳チーム監督・選手。

*「福音総合理解」について
 岸氏は教会が充実発展するには「福音総合理解」が不可欠であり、福音総合理解の鍵は聖書と聖霊にあると主張している。岸氏によると福音総合理解とは、父なる神の永遠の御心の中で始まりそして完成する「人類に対する救いのご計画」と、イエス・キリストによって成し遂げられた救いの全体を聖書から知識として把握することであるという。救いの全体とは、『福音の事実』とは何かを知ることがまず第1段階であるという。第2段階は、『福音の真理』を理解することであるという。『福音の真理』とは、『福音の事実』の持つ意味であり、どのようにして私たちの救いのできごとを体験し、その信仰を実践して生きて行くことができるのかについて神が定められた原理原則であるという。福音のいのちに生きるためには、どうしたらよいのか。それはすべて『福音の真理』にあるという。この両者を聖書と聖霊によって理解することが、福音総合理解であり、聖霊の助けなしには、私たちは福音の全体を理解することは不可能である。岸氏によると、教会が発展していくためには、福音宣教において、何が本質であり、何が周辺的であるかを見極める理解力が必要であり、教会は永遠不変の福音の本質を保持・告知することに関して決して妥協するべきではないという。そして、福音総合理解の実践は、聖霊に満たされて行わなければならないという。(岸義紘著「新約聖書注解書シリーズ『ヤコブの手紙/福音総合理解概説』」より)。
                     
(インタビュア 吉本幸恵)


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