映画公開で高まる「ダヴィンチ」議論

2006年4月27日17時42分 印刷
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【AP通信】ダン・ブラウン氏の「ダヴィンチ・コード」では私たちに「私たちの祖先が私たちに教えてくれたキリストについての事柄はほとんど嘘だった」と思わせるかのような議論を投げかけてくる。



 4千6百万部もの売り上げを記録した「ダヴィンチ・コード」はこの本の影響によって信仰が歪曲されると懸念しているキリスト教学者や歴史家にとって悩みの種となっている。



 今、5月17日−19日に公開予定の映画「ダヴィンチコード」公開に伴い、議論は最高潮に達すると予測される。信者らは本、小冊子、講演、インターネットホームページなどを通して大量のダヴィンチコードに対する批判を行ってきた。ローマカトリック保守派団体“Opus Dei”はダヴィンチコードの話の中では極悪非道の邪悪組織のように描かれており、この団体に関することは事実とは異なると映画にただし書きを加えるよう要求しているという。



 チャペルヒルノースカロライナ大学宗教学教授のバート・アーマン氏は「ダヴィンチ」現象を19世紀、惑わされた民衆がイエスが1844年にこの世に再来すると信じた現象になぞらえた。



 この小説による大衆文化における宗教的アイデアの影響は、アーマン氏によると「今までにないほどきわめて影響力のあるものである」という。



 アシュベリー神学校のベン・ウィザーリントン3世はシンガポール、トルコ、米国内30都市において「ゴスペル・コード」の題目でダンブラウン氏の小説の内容を批判する講演を行い続けており、さらに55のテレビ局でインタビューにも応じている。



 
 「ダヴィンチ」に関する猛攻撃はウィザーリントン氏のような福音主義者からだけでなく、シカゴの枢機卿フランシス・ジョージ師などローマカトリック教指導者らからも行われており、ジョージ枢機卿はブラウン氏は不合理な歴史的見解を披露することでカトリック教会を揺るがそうとしていると述べているという。



 よりリベラルな思想家としては、イェール大学神学校学長のハロルド・アトリッジ氏はブラウン氏は初代キリスト共同体を乱雑に誤って解釈していると述べている。
 アーマン氏はブラウン氏の数多くの曲解について「ダヴィンチ・コードの真実と嘘」という著書で説明しており、「なぜブラウン氏は事実をそのまま受け入れないのか?」と問いかけている。



 問題なのは「ダヴィンチ・コード」の話の内容が、単に作り話の域を超えてまるでそれが歴史の真実であったかのように宣伝されていることにあるという。



 ブラウン氏の著書の最初のページは“FACT(事実)”という言葉で始まっており、すべての物語の内容に関する記述は「正確である」と宣言している。



 ブラウン氏は先週行ったスピーチにおいて、
 「この本はあなたが物語の内容を気に入るか気に入らないかは別として、大きなアイデアを提供する本です。しかし私たちは皆この本の内容について話すようになっています。そのこと自体が重要なことなのです」と述べたという。



 キリスト教学者らが私たちにどうしても識別しておいてもらいたいのは以下の項目であるという。



 1 イエスの神性



 ブラウン氏の著書ではA.D.325年コンスタンティヌス一世によるニカイア公会議においてイエスに神性を与える決議がなされるまでまでキリスト教徒らはイエスのことを単なる人間であると見なしていたとしている。



 しかしこれに対する反論として、エディンバラスコットランド大学のラリー・ウルタド氏は著書「主イエスキリスト」で初代教会におけるイエスの神性の信仰を検証しており、「年代学、争点、進展段階、すべてのブラウン氏の主張する分野において、彼はその主張の基盤となる証拠さえ得ていません」と述べた。



 ウルタド氏らは聖パウロ使徒がA.D.50年に書いた書簡、フィリピ人への手紙の中で「キリストは神の御姿である方なのに、神のあり方を捨てられないとは考えず、ご自分を無にして、仕える者の姿をとり、人間と同じようになられました(フィリピ2:6−7)」と書かれてあることから、イエスを初代教会で神性のある存在と認めていたことが明らかであると述べている。



 歴史学者らはニカイア公会議において聖職者らはイエスの神性に関する異議は唱えなかったことを述べた。むしろ彼らはどのようにイエスが神性と人間性の両方を兼ね備えうるか、という専門的事項に関する新たな形式を承認するための議論をしていたのだという。



 2 新約聖書



 ブラウン氏の著書では新約聖書として80以上の福音書が存在しているにもかかわらず、コンスタンティヌス一世はたったの4福音書しか選択しなかったと見なしている。また新約聖書では「キリストの人間的特性について述べている福音書を削除し、キリストを神のように見せる福音書だけを選択して飾り立てられ、それ以外の初代福音書は処分された」とダン・ブラウン氏の小説では述べられている。死海文書やエジプトナグ・ハマディ写本が4福音書とは別に初代キリスト教徒の記録書として存在している。

 批判:歴史学者らはキリスト教徒は一世紀の4福音書と2世紀の聖パウロ使徒の書簡に権威があることで合意に達した。しかしその他の27の新約聖書の書簡は普遍的には受け入れられなかった。コンスタンティヌス一世はこれらの福音書の裁定に何の関わりも持っていないという。



 福音書としては拒絶された書簡では新約聖書としてイエスの人間性を欠いていて、霊的な性質ばかり強調している。これはブラウン氏の物語での記述とは正反対の理由である。グノーシス主義の福音書ではイエスによる隠された霊的な秘儀に関する内容を含んでおり、選ばれし者だけが腐敗しきった物質界を逃避することができる、と述べられているという。グノーシス主義ではしばしば旧約聖書の創造主を拒絶する傾向にあるという。



 異端と見なされて償却された多くの文書に関する疑問に対し、ノースカロライナ大学のアーマン氏はこのような主張を支持する証拠はほとんどないと述べている。拒否された福音書はただ単に人々がそれを使わなくなり、誰も活版印刷技術が発明される以前にわざわざ新たな複写本を書こうとはしなかったため自然に消え去ったのだという。 



 死海文書に関しては、これらの文書はユダヤ教の文書であり、キリスト教の文書ではない。ナグ・ハマディ写本は新約聖書が書かれた年代よりはるか後の時代に書かれた例外文書であるという。



 3 結婚したイエス



 ブラウン氏の著書では、イエスは当時のユダヤ人の習慣として、30歳にもなって独身であることは「現実的に許されていない」状況であったので、結婚していたに違いないと述べている。そしてイエスの配偶者はマグダラのマリアで彼らの間に娘が生まれ、その娘によってフランスでイエスの血統が密に保たれてきたとしている。



 批判:一世紀ユダヤ社会の歴史学者はほとんどのユダヤ人は既婚であったが聖人とされた男性は結婚していなかったと述べている。マグダラのマリアの話は中世時代以降に湧き出てきたものであるという。



 ブラウン氏はナグ・ハマディ写本の「ピリポによる福音書」をイエスの結婚の証拠として挙げているが、このボロボロになった福音書ではイエスに関する肝心な箇所が抜け落ちているという。「マグダラのマリア(解読不能)彼女をより(解読不能)使徒たち(解読不能)彼女に接吻をした(解読不能)彼女に(解読不能)」のような状態であるという。



 イエスはマリアの唇、頬、額に接吻をしたのだろうか?何であれ、グノーシス主義は観念的な思想と霊的な思想が相互に関係しあって発展した思想であると学者らは述べている。



 「ダヴィンチ」にまつわる議論全体を通してウィザーリントン氏は「聖書的に無教養な人々によるイエスに取り付かれた文化によって伝統的な見解から遊離した見解を生み出すことになる」と述べている。



 しかしながらウィザーリントン氏らは人々に「ダヴィンチ・コード」に関する議論を通してキリスト共同体に対する信仰をより深く知らせる良い機会になると見なしている。



 イェール大学のアトリッジ氏は、
 「もし人々がイエスに関する歴史的な疑問に興味をそそられたのならば、それに答える情報はたくさんあります」と述べた。
 
 英国判事ピーター・スミス氏は最近ブラウン氏を盗作で訴えた裁判を取り扱ったこともあり、おそらく現在の状況をもっともよくまとめて述べることが出来ていると言えるだろう。



 スミス判事は、
 「単に一著者が事実上正しいと述べた事柄が本当に正しいということを意味することにはなりません。よく知られる実話小説を作るのに事実と作り話を融合させるのは小説作成上の一手段です。見た感じの真正っぽい魅力が読者に広く受け入れられる受容性を提供しているのです。問題なのはこの実話小説を読んだ大部分の読者がこの小説を本当に真実であると受け入れてしまうことにあります」と述べたという。

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