ナイジェリア北東部ヨベ州で2018年2月19日、イスラム過激派が女子学校を襲撃し、生徒110人を拉致する事件があった。その一人である当時14歳のレア・シャリブさんは、8年を経てなお、唯一解放されずに拘束され続けている。
事件を起こしたのは、過激派組織「イスラム国西アフリカ州」(ISWAP)で、同州ダプチの州立女子科学技術学校が襲われた。拉致犯は解放の条件として、キリスト教からイスラム教に改宗することを要求したが、現在22歳のレアさんはそれを拒否した。他の被害者の多くは既に解放されたか、拘束中に死亡している。
19日の国連「紛争下の性的暴力根絶のための国際デー」に合わせ、シャリブさんをはじめ、信仰を理由に標的とされるナイジェリアの女性や少女たちの現状を知ってもらい、問題の解決につなげようと、「宗教の自由パートナーシップ」(RLP、英語)が「正義のための声」(V4J)と銘打ったキャンペーンを展開している。キャンペーンでは、各国のRLP加盟団体が連携し、政策提言や啓発活動、祈りの集会などを行う。
米国では、18日午前11時から首都ワシントンのナイジェリア大使館近くで抗議集会が予定されている。集会は、ジュビリー・キャンペーン、クリスチャン・フリーダム・インターナショナル(CFI)、21ウィルバーフォースが共催する。レア財団のグロリア・プルドゥ最高責任者(CEO)や、2014年にスーダンで背教罪の冤罪(えんざい)により死刑判決を受けたものの、国際的な働きかけにより解放されたキリスト教徒の女性メリアム・イブラヒムさんが、スピーカーとして登壇する予定だ。
スウェーデンでは、人権擁護団体「セット・マイ・ピープル・フリー」(SMPF)が18日午前10時から、首都ストックホルムのナイジェリア大使館前で抗議活動を行う。スイスでも19日午後2時半から、首都ベルンのナイジェリア大使館近くで抗議集会が行われる。ニュージーランドでは、迫害下のキリスト教徒を支援する「殉教者の声」(VOM)が、19日午前10時から、同国第2の都市クライストチャーチでシャリブさんのための行進を予定している。
世界各地で祈りの集会やSNS上のキャンペーン、手紙の送付活動が行われており、詳細は各種SNSのハッシュタグ「#Voices4Justice」や、V4Jのフェイスブック(英語)で確認できる。
シャリブさんの両親は17日、声明を発表し、娘が自由を犠牲にしてでもキリストへの信仰を貫いた姿勢を強調した。
「この勇気の故に、娘は荒野で想像を絶する苦難に耐えてきました。脱出した人々からの報告によれば、強制結婚、繰り返されるトラウマ、監禁下での出産、そして戦争と支配の手段として用いられる性暴力の影に常におびえる生活を送っているといいます」
「娘を失ったまま過ごす日々は、親として傷が深まる一方です。私たちは娘と、彼女が抱いていたより良い未来への夢を懐かしく思っています。誕生日は静寂の中で過ぎ去り、大切な人生の節目は奪われました。私たちの家族は、言葉では言い表せない痛みを抱えて生きています」
両親は、信仰を支えにしつつ、「私たちが常々レアと世界に語ってきたように、虐げられた者を見守る神が、彼女を必ず家に連れ戻してくださる」と信じていると述べ、声明を結んでいる。
アフリカ宗教自由監視団(ORFA)によると、ナイジェリアでは2024年10月から25年9月までの間に、キリスト教徒の女性771人と少女68人が拉致された。ORFAは、これ以外にも報告されていない拉致事件が多数存在すると指摘している。
拉致は多くの場合、性暴力や強制結婚につながる。V4Jは、シャリブさんの長期にわたる拘束が、拉致された多くの女性や少女たちが受けている性差に基づく苦難の象徴であることを、各国に駐在するナイジェリアの大使館や領事館の当局者らに伝えるよう呼びかけている。また、治安上の課題が複雑であることは認めつつも、ナイジェリア当局には自国民の命と生活を守るという憲法上の義務を果たす責任があることを、当局に訴えるよう呼びかけている。
ナイジェリア当局は、シャリブさんをはじめ、拉致された全ての女性や少女たちの安全な解放と帰還を確保するための取り組みを強化することや、彼女たちに対して適切な医療的・心理社会的ケア、社会復帰支援を提供することが求められている。
さらに、拉致、性暴力、強制結婚について迅速かつ公正で徹底した捜査を行い、加害者を逮捕・起訴すること、そして民間人の安全を最優先とする十分な権限とリソースを持ち、責任ある治安要員を配備することで、紛争地域における弱い立場にあるコミュニティーへの保護を強化することが求められている。
国連の専門家らは6月初め、ナイジェリア国内の女性や少女たちが直面するリスクについて、ナイジェリア当局に深い懸念を表明した。
専門家らは、ナイジェリアの北部とミドルベルト地域での治安悪化が、ボコ・ハラム、ISWAP、そして「農民と遊牧民間の紛争に関与する過激化した遊牧民」などの武装過激派グループにとって好都合な状況を生み出していると指摘する。これらのグループは、「不処罰が横行し、組織的な機能不全があり、当局による保護が不十分である」という報告が絶えない中で攻撃を続けている。
専門家らはナイジェリア当局に対し、「私たちが受け取った証言は、恐怖、トラウマ、強制、そして見捨てられたという恐ろしい状況を物語っている」と強調する。「被害者や生存者を、保護や正当な裁き、リハビリテーションを含む救済、そして有意義な支援から遠ざけてはなりません」と訴える。
また、キリスト教徒やその他の宗教的少数派を標的とした暴力が依然として横行していると述べ、ナイジェリア北部12州におけるシャリア(イスラム法)の独自解釈の適用、冒瀆(ぼうとく)罪の運用、そして効果的な司法へのアクセスが長年にわたり欠如している現状を指摘している。
「キリスト教徒の女性や少女たちが、差別、暴力、搾取という極めて深刻かつ高まるリスクにさらされていることに、私たちは特に危機感を抱いています。彼女たちの間で、性暴力、拉致、強制失踪に等しい行為、強制改宗、児童婚といった重大な事例を記録し続けているからです」
「抵抗する者は、脅迫や処罰を受けたり、行方不明にさせられたり、殺害されたりしているとする報告も多数あります」
専門家らは、キリスト教徒の女性や少女たちが拉致や性暴力のターゲットとなっている現状を憂慮している。具体例として、ボルノ州の教会から少女たちが拉致されて行方不明になっている事件、バウチ州で13歳の少女が強制改宗と児童婚を強いられた事件、武装勢力による強制結婚の要求を家族が拒否したため、16歳の少女が手を切断された事件などを挙げた。
「こうした犯罪は、北部の一部の州でキリスト教徒のコミュニティーに不釣り合いなほど多大な影響を及ぼしている、より広範な暴力と迫害のパターンの中で発生しています。その中には、殺害、教会や村への襲撃、大規模な避難、冒瀆の疑いに関連した集団暴力、国内避難民キャンプで女性や子どもを襲う深刻な治安悪化などが含まれます」
ナイジェリアのキリスト教報道機関「トゥルース・ナイジェリア」(英語)によると、ボルノ州グウォザ地区で2025年11月15日、ISWAPが別々の襲撃でキリスト教徒の女性2人を拉致した。そのうちの一人であるコンフォート・サンデーさん(25)は、結婚してまだ1年もたたず、妊娠3カ月だったころに、故郷のプンプム村から拉致され、拘束中に子どもを出産した。
サンデーさんは、「私たちはイスラム教への改宗を拒んだため、捕虜の身となり、ひどい苦しみを味わいました」と打ち明けた。
サンデーさんと同じ日に拉致されたもう一人の女性は、クワン村出身のローズ・アダムさん(20)。2人は今年5月13日、ユウェと呼ばれるグウォザ地区内の地域にあるISWAPのキャンプから自力で脱走した。しかし、ナイジェリア当局は当時、軍が彼女たちを救出したと発表した。
生まれたばかりの赤ん坊を抱えながらトゥルース・ナイジェリアのインタビューに応じたサンデーさんによると、この脱走は3回目の試みだった。過去2回の脱走は失敗しており、その都度、死を覚悟するほどの激しい拷問を受けたが、奇跡的に流産は免れたという。
「もしもう一度捕まっていたら、すぐに殺されていたでしょう。私たちを救出したのは(ナイジェリア軍の)兵士たちではありません。イエス様が逃げられるよう助けてくださった後、軍の拠点まで歩いたのです」
グウォザ地区に隣接するバーマ地区に拠点を置く第21特殊装甲旅団の広報官サニ・アブバカール・ムハンマド中尉は5月15日、「女性たちはトシン・アヨーラ准将の指揮下で行われた攻撃作戦中に救出された」とする声明を発表していた。
サンデーさんたちの証言は、ナイジェリアの治安機関による「救出」に対し、被害者や目撃者、地元コミュニティーが異議を唱えるという、長年繰り返されてきた報告と合致するものだった。

















