エチオピア東部と隣国ジブチ、エリトリアとの国境地帯に住むアファル族は、伝統的に遊牧生活を営み、塩の採掘や家畜の放牧で生計を立ててきた。人口は約200万人とされ、そのうち約150万人がエチオピア国内に暮らしている。アファル語とハッサナ語(アラビア語方言系)が使われ、大多数がイスラム教徒のため、キリスト教徒は極めて限定的である。公式に知られている信者は、民族全体の0・5%未満という数字が示すように、彼らがイエスに出会う機会は厳しく制限されているのだ。
この地域では、乾燥や干ばつが深刻な問題だ。これらの自然災害が彼らの遊牧生活を脅かすたびに、アファル族は都市部への移住を余儀なくされている。そうした移住先で初めてキリスト教徒と接触するケースが増えている。伝統的な遊牧地以外の場所に来ることで、福音を聞く可能性が広がりつつあるのだ。
ただし、アファル族に福音を伝えるには多くの壁がある。まず、遊牧生活の故に定住拠点が少なく、集会所を設けること自体が難しい。また、民族的・宗教的アイデンティティーがイスラム教と密接に結び付いており、イスラム共同体からの圧力や社会的非難が障壁になることが多い。加えて、アミュレット(お守り)や占術といった伝統的な霊的慣習が今なお生活に根付いており、それらとキリスト教信仰の世界観との対峙(たいじ)は容易ではない。
だからこそ、そこにはとりなしの祈りが必要なのだ。すなわち、アファルの人々がイエスの夢や幻によって救いへと導かれるように、伝道団体が創意工夫しながら、その民族に適した方法で福音を伝える道を見つけるように、主が彼らを祝福し、彼らが主の偉大な愛を体験する道が用意されるように、祈る必要がある。
祈るべきことは多いが、アファル族の特に女性たちが、神にある自らの価値を知り、伝統と信仰の重圧から解放されるように祈ろう。都市部に出たアファル族が福音に触れ、信仰を持つ者として、伝道者となって地域へ戻り、語る者、聞く者、教える者が守られ、知恵と勇気をもって福音を携えるように。そして、この地の厳しい環境と民族構造の壁を越えて、アファル民族全体にキリストの光が届くように祈っていただきたい。
■ エチオピアの宗教人口
プロテスタント 19・2%
正教会 39・5%
カトリック 0・7%
イスラム 34・1%
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