Skip to main content
2025年11月11日23時52分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 文化
  3. 映画

「毒とユーモアに満ちた真実」を押し付けてくる傑作 映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」

2018年5月2日21時55分 執筆者 : 青木保憲
  • ツイート
印刷
関連タグ:スウェーデン
「毒とユーモアに満ちた真実」を押し付けてくる傑作 映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」
©2017 Plattform Produktion AB/Societe Parisienne de Production/EssentialFilmproduktion GmbH/Coproduction Office ApS

聖書の中でイエスの天敵と言えば、律法学者とパリサイ人(ファリサイ派)だ。特に律法学者とは事あるごとに対立し、そのやりとりが詳細に新約聖書に記されている。

イエスと彼らの間の最も根源的な齟齬(そご)は何だったのか。それはイエスが彼らを「白く塗った墓」と表現したことに集約される。

律法学者たちとファリサイ派の人々、あなたたち偽善者は不幸だ。白く塗った墓に似ているからだ。外側は美しく見えるが、内側は死者の骨やあらゆる汚(けが)れで満ちている。(マタイ23:27)

彼らが大切に考えていたのは律法であり、神殿である。イエスはこれらを決して否定していない。しかし律法「主義」、神殿「崇拝」を批判する。それらは形式や表面を取り繕うことに終始する傾向を生み出し、逆に律法や神殿に込められた「本質」を見失わせることにつながるからである。

その欺瞞(ぎまん)性が、最終的にイエス・キリストを十字架に付けたことを考えるなら、まさにイエスはこの世の「イズム」と欺瞞によって殺されたということができる(もちろんそのような罪の縄目から人間を解放されたのもイエスであるが)。

第70回カンヌ映画祭で最高賞「パルムドール」を受賞した「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(4月28日公開)は、そんなイエスと律法学者・パリサイ人とのやりとりが、今なお終わっていないことを示す社会派コメディーである。

第90回アカデミー賞では、外国語映画賞にノミネートされたものの、残念ながら受賞は逃してしまった。しかしだからと言って、そのさえわたるアイロニカルな視点が鈍ることはない。

本作品にはモチーフとなった実際の出来事がある。2015年に本作の監督であるリューベン・オストルンドが、スウェーデンのデザイン美術館でアート展「ザ・スクエア」を開催した。それは地上に正方形を描き、美術館に訪れた客に対し、次のような文言を投げ駆けるというものだった。

“ザ・スクエア”は<信頼と思いやりの聖域>です。この中では誰もが平等の権利と義務を持っています。この中にいる人が困っていたら、それが誰であれ、あなたはその人の手助けをしなくてはなりません。

「毒とユーモアに満ちた真実」を押し付けてくる傑作 映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」
©2017 Plattform Produktion AB/Societe Parisienne de Production/EssentialFilmproduktion GmbH/Coproduction Office ApS

ここには2つのアイロニカルな視点がある。

1つは、こういった「特殊ルール」を決めなければ、人間が生来の性質として抱いていたはずの相手へのいたわりや優しさに気付くことができないという「人間性の限界」を示すこと。

もう1つは、現実世界にはこのようなスクエア(正方形)空間は存在しないため、スクエア以外の場所で人間がいくら他人に無関心であったとしても、誰も糾弾されないのが「現実社会」であることを示すこと。

このアート展は好評で、多くの人が訪れ、自らの醜い本質とそれを曖昧にする社会の在り方に気付かされたという。

同じ効果を狙って、さらに現代の欧州が抱える社会問題(貧富の差、民族的分断、SNS社会)にまで拡大して描いているのが本作である。

主人公は現代美術館のキュレーター(学芸員)。洗練されたファッションと高級車、高級アパートを持ち、愛する娘2人と暮らしている。いわゆる上流階級の人間である。彼は美術館の管理と運営を担っているため、マスコミなどにも時々取り上げられる存在だ。しかし物語は彼の二面性、言い換えるなら欺瞞性を鋭く暴いていく。

表向きには芸術の崇高な精神を語るが、ちょっと気を許すと「美術館にとって一番の課題は?」という質問に「お金かな」と本音がぽろり。インタビュアーをあきれさせる。

また、スクエア空間を美術館に設置することで、現代人が他者に対していかに無関心であるかを指摘し、格差社会の不条理を訴えるという崇高な理念を体現しようとする。しかしその一方で人々の耳目を集めるために、あえてSNSで人々を刺激してネット炎上をあおる作戦に出るが、まったく良心の呵責(かしゃく)を覚えていない。

「毒とユーモアに満ちた真実」を押し付けてくる傑作 映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」
©2017 Plattform Produktion AB/Societe Parisienne de Production/EssentialFilmproduktion GmbH/Coproduction Office ApS

彼は、ひょんなことから携帯電話と財布をスリに盗まれてしまう。GPS機能で携帯の在りかを探ると、どうも貧民街のどこかにあることが判明する。怒りに駆られた彼は、該当のアパート全戸に「お前は盗人だ!」と威嚇するチラシを配布する。何とも子どもじみた行為であるが、これが思わぬ事態を生み出してしまう。

秀逸なのは、美術館の会員であり、人々の「崇高な理念」の体現としての芸術に理解を示す(そぶりを見せている)セレブたちが一堂に会するシーン。そこに「ミスター・エイプ」というパフォーマンスで名高いアーティストがやって来る。彼は猿の真似をして人々の間を闊歩(かっぽ)し、座って会食しようとしているセレブたちを挑発する。そのやり方がかなり激しく、観ているこちらもセレブ同様に、どこまでが芸術(パフォーマンス)でどこからが現実なのか、その境界線が曖昧になる感覚に襲われる。

「毒とユーモアに満ちた真実」を押し付けてくる傑作 映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」
©2017 Plattform Produktion AB/Societe Parisienne de Production/EssentialFilmproduktion GmbH/Coproduction Office ApS

このように映画は、お高く留まって理想を説き、その「崇高な理念」を体現しようとしている人々がいかに二面性を持ち、欺瞞に満ちているかを鋭くえぐっていく。それは同時に観客である私たちにも「あなたはどうか」と訴え掛けてくる。

まさに、新約聖書のイエスと律法学者・パリサイ人とのやりとりを見ているようである。本作では、自分たちとは異なる世界に住む人々を見下げながらも表面的には笑顔で握手を求めるような欺瞞性を暴き出していく。本来はその理念と行動が一体不可分であったはずなのに、いつしか行動がなえていき、欺瞞性に満ちた理念が鎧(よろい)のように理念の表面を堅くさせていく。一旦その理念を手にした者は、その心でどんなことを思っていようとも、それを暴かれることはない。逆に本音と建て前を乖離(かいり)させた方が、「形骸化された行動」はより「崇高な理念」を体現する存在へと昇華していく。

イエスが闘い、犠牲となったのは、この「崇高な理念」としての律法主義であり、「形骸化した行動」としての神殿(崇拝)主義であった。彼は理念の本質を取り戻すことを訴え、それが行動によって示されることを詳(つまび)らかにした。それが次の言葉に集約されている。

わたしが来たのは律法や預言者を廃止するためだ、と思ってはならない。廃止するためではなく、完成するためである。(マタイ5:17)

映画は後半に、自らの欺瞞性に気付いた主人公が自らの生き方を正そうと奔走する姿が描かれる。ごみだめのような中をはいつくばり、高級なスーツを雨と泥で台無しにしながら、崇高な理念と行動が一致した世界をつかみたいと願い、必死にあるものを探し求める。果たして彼は欺瞞性を捨て去ることができたのか――。

ぜひ映画をご覧になって確かめてもらいたい。本作は単純な感動や興奮を与えてくれる類いの作品ではない。むしろ「毒とユーモアに満ちた真実」をいきなり押し付けられるような感覚を覚えることになろう。しかし、一見の価値ありの傑作である。

■ 映画「ザ・スクエア」予告編

■ 映画「ザ・スクエア」公式サイト

◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科修了(修士)、同志社大学大学院神学研究科修了(神学博士)。グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(明石書店、12年)、『読むだけでわかるキリスト教の歴史』(イーグレープ、21年)。

関連タグ:スウェーデン
  • ツイート

関連記事

  • 「21世紀型青春映画」をキリスト教的に読み解くと・・・ 「ちはやふる -下の句-」

  • 巨匠スピルバーグ監督が警鐘鳴らす米国アイデンティティーの危機 「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」

  • 「バケツと僕!」養護施設で展開される先生と教え子の物語

  • 日常の中で神のタイミングに遭遇した「普通の若者」たちの信仰物語 「15時17分、パリ行き」

  • 物語ることの素晴らしさを見事に描き切ったストップモーション・アニメの秀作 「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 日本キリスト教団出版局、事業を整理・縮小へ 5月に債務超過

  • メル・ギブソン監督「パッション」続編がクランクイン、キャスト一新でイエス役も新俳優

  • 神の見えざる御手 佐々木満男

  • ワールド・ビジョンがクリスマスキャンペーン、教会で酒井美紀さん登場のコンサートも

  • ローマ教皇レオ14世に聖書協会共同訳のミニチュアバイブルなど献呈

  • 世界福音同盟(WEA)「ソウル宣言」全文和訳

  • 米ムーディー聖書学院、教育実習プログラムからの排除巡り教育委員会を提訴

  • ワールドミッションレポート(11月11日):ブラジル 世界最大のカトリック国で起きている劇的な地殻変動(3)

  • 迷い出た者を捜し出してくださる主 万代栄嗣

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(252)聖書と考える「ザ・ロイヤルファミリー」

  • 日本キリスト教団出版局、事業を整理・縮小へ 5月に債務超過

  • メル・ギブソン監督「パッション」続編がクランクイン、キャスト一新でイエス役も新俳優

  • ローマ教皇レオ14世に聖書協会共同訳のミニチュアバイブルなど献呈

  • ワールド・ビジョンがクリスマスキャンペーン、教会で酒井美紀さん登場のコンサートも

  • 神の見えざる御手 佐々木満男

  • 世界福音同盟(WEA)「ソウル宣言」全文和訳

  • 世界62カ国で宗教的「迫害」や「差別」 2年に1度の「世界信教の自由報告書」発表

  • ワールドミッションレポート(11月9日):ブラジル 世界最大のカトリック国で起きている劇的な地殻変動(2)

  • 新総主事が就任、国際理事会が新体制に WEA第14回総会「ソウル宣言」採択し閉幕

  • 米ムーディー聖書学院、教育実習プログラムからの排除巡り教育委員会を提訴

  • 日本キリスト教団出版局、事業を整理・縮小へ 5月に債務超過

  • カンタベリー大聖堂の「落書き」プロジェクトに批判の声

  • 「電波宣教師」の尾崎一夫氏死去、短波ラジオ・HCJB日本語放送に60年以上従事

  • 【書評】加藤喜之著『福音派―終末論に引き裂かれるアメリカ社会』

  • 聖書アプリ「ユーバージョン」が間もなく10億インストール 11月に「聖書月間」開催

  • やなせたかしさんの妻・小松暢さんはクリスチャン、朝ドラ「あんぱん」きっかけに判明

  • 全ての人に福音伝えるための「イエスのモデル」 WEA総会でリック・ウォレン氏が講演

  • 世界福音同盟(WEA)「ソウル宣言」全文和訳

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(234)神様の思い(計画)が分からないのはありがたい 広田信也

  • ワールド・ビジョンがクリスマスキャンペーン、教会で酒井美紀さん登場のコンサートも

編集部のおすすめ

  • 「神の言葉を全ての人に」 日本の聖書普及事業150年で記念式典・レセプション

  • 教団・教派超えて神の平和求める 戦後80年で「日本国際朝餐祈祷会」初開催

  • イエスの統治を祝う祭典「ジーザス・レインズ」が10周年 ラップ賛美など新しい試みも

  • 「聖書を読まなかったら、今の自分はない」 元ヤクザの進藤龍也氏と山崎純二氏が対談

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.