宗教法人「小牧者訓練会」(国際福音キリスト教会)の卞在昌(ビュン・ジェーチャン)牧師と、同教団に対して、セクハラやパワハラなどで元信者の女性4人と男性1人が訴え、また逆に卞牧師・教団側が元信者側を名誉毀損で訴えていた民事訴訟の控訴審判決で、東京高裁(石居忠雄裁判長)は7月29日、1審の東京地裁の判決を支持し、控訴を棄却した。
一連の民事訴訟では、元信者側が、卞牧師による元女性信者4人に対するセクハラと(セクハラ訴訟)、元男性信者1人に対するパワハラを訴え(パワハラ訴訟)、卞牧師・教団側が元信者やその支援者に対して名誉毀損の損害賠償・謝罪広告掲載を要求する(名誉毀損訴訟)という、計3件が争われている。昨年5月の1審判決では、東京地裁が、セクハラ被害の訴えを認め、卞牧師・教団側に計1540万円の損害賠償を支払うよう命じた。一方、パワハラについての訴えは棄却。また、卞牧師・教団側の名誉毀損の訴えも棄却した。
この1審判決を受けて、卞牧師・教団側は、訴えが認められなかったセクハラ訴訟と名誉毀損訴訟の結果について、「弁護士や法律専門家も予想だにしない不当な判決」だとして、東京高裁に控訴した。また、元信者側も、パワハラ被害についての賠償責任が認められなかったことを不服として控訴していた。今回の控訴審判決では、3件全てで1審の判決が支持され、判決理由も詳細化された一部を除き、1審判決の大部分が引用されている。
元信者側を支援している「モルデカイの会」は同日、声明文をホームページ上で公開し、セクハラ訴訟が認められたことについては「私たちは今回の判決をきわめて高く評価しています」とし、名誉毀損訴訟が棄却されたことについては「被告側の請求には理由がないとして控訴を棄却した今回の判決は妥当なもの」とコメントしている。また、訴えが棄却されたパワハラ訴訟については、「大変残念」だとして、判決内容を精査し、今後上告するかどうかを検討するという。
卞牧師・教団側は、セクハラ訴訟と名誉毀損訴訟で主張が認められなかったことを受けて、上告する意思を示しているが、方針が確定次第、週明けにも声明を発表する予定だという。
一方、卞牧師は、元女性信者4人のうち1人に対して乱暴した容疑で、2010年に準強姦(ごうかん)罪で起訴されている。しかし、この刑事訴訟では、女性の証言の信用性が否定され、検察の懲役7年の実刑求刑に対して無罪が言い渡された。その後、検察が控訴を断念したため、2011年に無罪が確定している。