マーティン・ルーサー・キング牧師の聖書とノーベル平和賞のメダルの所有権をめぐる苦々しい民事調停が法廷に持ち込まれようとされている。
キング牧師の息子たち、マーティン・ルーサー・キング3世とデクスター・スコット・キング氏は父の遺産を管理しており、私人であるバイヤーに遺品を売却したいと考えている。聖書は20〜100万ドル(約2300〜1億2000万円)、ノーベル平和賞のメダルは1000万ドル(約12億円)以上の価値があるとみられている。
しかし、キング牧師の娘バニース氏は母の遺産を管理しており、キング牧師はノーベル平和賞のメダルを妻にプレゼントしたことから、メダルはバニース氏に属すると反論している。バニース氏は売却に反対している。
AP通信によると、バニース氏は昨年2月、父キング牧師と祖父が宣教を行ったアトランタのエベンエゼル・バプテスト教会で、聖書とメダルは父の大切な財産であり、そして「キング牧師がどのような人であったかというまさに核心について物語る」ものだと訴えた。また、メダルの売却によって利益を得ることは「霊的な暴力」であり、「道徳的に公然と非難されるべき」行為だとも語った。
バニース氏は、「私が思うに、これらの品は聖なるものですから、どんな人にも、どんな学会や公共施設にも売却するべきではありません」と記者会見で述べた。「私は父の代わりにこの立場を堅持します。というのは、父はここで、自らの口で『聖書とメダルを決して売ってはいけません』と発言することができないからです」
キング牧師と共に行進したことのある人権運動の指導者ジョセフ・ロウェリー博士は昨年、アフリカ系米国人向けのニュースサイト「ザ・グリオ」に対し、バニース氏の決断を支持すると語った。「私は、このような品が市場に出回ることについての議論があることすら認めたくありません」とロウェリー博士は言う。
「これらは聖なる品で、家族にとってだけではなく、コミュニティーにとっても非常に意義深いものなのです。これらはマーティン(・ルーサー・キング牧師)の働きと、正義への傾倒、そして神に仕えたことを反映するものです」
1978年から1984年にかけて、エベンエゼル・バプテスト教会の副牧師を務めていたティモシー・マクドナルド牧師は、AP通信に対し「聖書を売ってはなりませんし、メダルを買ってもいけません。値段を付けることができない品というのもあるのです」と語った。
ものの取り合いの兄弟喧嘩という様相を呈してきた民事調停が続く間、これらの品は結論が出るまで裁判所によって安全な金庫に保管されている。調停の尋問は、現地時間13日に予定されているが、そのときに結論が出なければ裁判へとかけられる。
キング牧師の子どもたちは過去に、論文や本のコレクションを3200万ドル(約38億円)で売却し、父の肖像や所有物に関する論議に巻き込まれている。
献身的な牧師であり、公民権運動の指導者であったキング牧師は、1968年に暗殺された。キング牧師の聖書は、最近ではバラク・オバマ大統領の2期目の宣誓式のときに使用された。