屋上を超えるような20メートル近くの巨大な津波を予見することは困難だったーー東日本大震災の津波被害で、七十七銀行女川支店(宮城県女川市)の屋上に避難して犠牲になった従業員3人の遺族が、同行に対して約2億3500万円の損害賠償を求めていた訴訟で、仙台地裁は25日、遺族側の請求を棄却した。
2011年3月11日の地震直後、同支店の従業員13人は支店長の指示により、2階建て高さ約10メートルの支店建物屋上に避難した。しかし、気象庁が当初予報していた6メートルを遥かに越える20メートル近くの巨大津波が押し寄せ、13人全員が津波にのまれ、支店長を含む12人が犠牲になった。
支店から徒歩約3分の場所には町指定の避難場所である堀切山があった。遺族側は、支店の直ぐ近くに避難場所の高台があったのにもかかわらず、銀行側が津波の情報収集を怠り、支店屋上に避難させたのは、安全配慮義務違反だと訴えた。
しかし、地裁は今回の判決で、銀行側が津波の情報収集を行っていたことを認め、また移動中に津波に巻き込まれる危険性があったことから、支店屋上から高台への避難先を変更する義務があったとは言えないとした。
東日本大震災の津波犠牲者の遺族が管理者側に賠償を求めた訴訟は今回で2件目。1件目は宮城県石巻市の日和幼稚園を相手取り園児4人の遺族が起こした訴訟で、この訴訟では園側の安全配慮義務違反が認められ、賠償命令が下された。