【CJC=東京】フランシスコほどメディアの注目を集めた教皇はいない。選出されると、宿舎へ費用支払いに出向き、ブエノスアイレスの新聞店に電話して購読取り止めを伝えた。さらに歴代教皇の居館ではなく、宿泊施設「聖マルタの家」に住み、夏の間も避暑に行かずそこに留まったことなどは、すぐにニュースとなって流れた。さらに自分が属している修道会「イエズス会」の雑誌のインタビューでは、映画の趣味にまで触れるなど、これほどに実生活を知られた教皇はフランシスコが始めてだ。
一方で、バチカン(ローマ教皇庁)改革への手も着々と打ち始めている。こちらは、それほどあけすけに語っていないだけに、教皇は何をどこまで改革しようとしているのか、疑念も湧いている。その一つが「解放の神学」をどう扱うかだ。
教皇は9月11日、「解放の神学の父」ともされているグスタボ・グティエレス神父(85)と会見した。「聖マルタの家」で私的に行い、公式日程には含まれなかった。ただバチカンの機関紙「ロッセルバトレ・ロマノ」が、同神父とのインタビュー記事や神父自身の寄稿を相次いで掲載、さらに教理省長官のゲルハルト・ルートヴィヒ・ミュラー大司教が同神父の働きを称賛した記事も掲載したことは見逃せない。
「解放の神学」については、1990年代に入っても、教理省がグティエレス神父の働きに批判を加え、その神学的、司牧的見解について修正するよう要求していた。
教皇フランシスコはイエズス会アルゼンチン管区長だった当時、特に軍事独裁政権下にあっては司祭の政治関与には消極的で「解放の神学」の同調者とは見られていなかった。しかし2007年のラテンアメリカ司教協議会の第5回総会がブラジルのアパレシアーダで開催された時、最終文書の主な著者として、当時のベルゴリオ枢機卿は、「解放の神学」という言葉は使わなかったものの、「公正で友愛あふれる社会の建設」について「全ての人に健康、食糧、教育、住居、働きを」と強く訴えることで、その精神を正統的に示した。
教皇フランシスコの選出は、社会正義の追及がキリスト教信仰の必然的な帰結、ということの力強い確認であったと見られる。しかし教皇選出のコンクラーベの僅か9カ月前の昨年7月、ミュラー大司教を教理省長官に任命した時、当時の教皇ベネディクト16世が、同大司教が他ならぬグティエレス神父を称賛し、共著もあることを知っていたことも確か。それからすると、「解放の神学」に対するバチカンの「姿勢転換」はすでにその兆しを見せていたのではないか、とCNS通信のフランシス・ロッカ記者は報じている。
長くバチカンの批判にさらされていた「解放の神学」が、貧者の側に立つ教会を目指すフランシスコ教皇の下で一転、脚光を浴びるようになるのは確実だ。
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