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榮義之牧師「天の虫けら」(2)・・・星原中学

2007年4月27日09時43分
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榮義之牧師+
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 私は、先生が赴任した年に、星原中学に入学した。本来なら西之表市古田中学が通学区だったが、偏屈者の父が私の知らない間に中種町の星原中学へ入学手続きをしていたのだ。その理由が奮っていた。古田は炭焼きを教えるから、星原へ行けと言う。そのころの古田中学では、図書費やクラブ活動費を捻出するため、生徒たちが炭を焼いてお金を作っていたからだ。しかし何のことはない。後から分かったことだが、漁港をもつ浜津脇から炭を船積みするので、星原の生徒も炭俵を担いで、古田と同じように費用を捻出していたのである。



 私には父の勧めを拒むことは出来なかったので、浜の中学まで片道八キロの山道を一人で通うようになった。人と話すのが苦手だから、孤独がうれしかった。山育ちの私が話をすれば、浜の子どもたちとアクセントが違うので笑われる。笑われても平気さと言うほど、勇気もなく、大胆でもなかった。そこで話す時は、できるだけ標準語を話すようにした。しかし、そうするとまた浮き上がってしまう。だから余計に人と話をしなくなった。ただ人生なにが幸いするかは、神様以外だれにも分からない。後に朝日放送でラジオ牧師をするようになった際、訛りが少なく感謝した。神の最善の御手を信頼したい。



 当時の星原中学には給食はなく、昼食は弁当だった。浜の子どものおかずは豪快だ。取れ取れの伊勢海老やアワビがある。トッピーなどは常のことだ。昼食時は、お互いに弁当を見せ合い、自慢会のようになる。私はそんな教室を一人そっと抜け出す。「榮、弁当食わんのか」と時折声もかかるが、無視して外へ出る。弁当は裏門の山の中に隠してある。いただきますと食べるのは、決まってサツマイモだけ。喉が詰まるが、飲み物もない。それでも何食わぬ顔で午後の教室に戻る。だれも何を食べたか聞かなかった。貧しさを知る島の少年たちには、それなりの仁義と思いやりがあった。



 今から考えると、ものすごくぜいたくな食生活だった。朝はみそ汁と野菜の煮つけにサツマイモ、昼もサツマイモ、夕食は時にはごはんもあるが、最高のごちそうが豆腐だ。白菜、人参、ごぼうにさや豆、ネギにニラにニンニクに、苦瓜、ヘチマにとうがん、ナスにキュウリ、カボチャにジャガイモに里芋、野菜は植えたらいくらでも実る。卵は産み立て、山羊の乳はしぼり立てだ。種子島だから新鮮な魚がいっぱいと思われるかもしれないが、貧しい家で買うことができない。肉も魚も中学生までは、ほとんど食べたことがなかった。



 通学は八キロの山道のほとんどを裸足で歩いた。新しい靴を買うことができないので、精一杯の知恵ですり減らないように工夫していたのだ。家での生活は石油ランプのため、ホヤを磨き芯を切るのが、毎日の仕事だった。学校が遅くなれば、磨く暇がなく薄暗い上に、もっとほの暗くなる。「読書の秋」や「灯火親しむ侯」などのことばとは縁もなかった。暗くなると寝る。必然的に夜明けとともに起きるから、朝が早くなる。自然のままで健康的な生活をしていた。



 貧しかったが、不思議に豊かさのある家だった。父は頑固者で、サツマイモばかりでも、人に知らせる必要はない、飢えても人の世話にはならないと自負していた。私はただ恥ずかしかったから、裏門の藪の中で一人ひっそりと食べただけだが。



 船乗りとして世界を見て来た父は、生活は貧しくても、豊かに生きていた。家の周りの土手には、四季折々の花が咲き、白百合の季節には純白に染まり、香りが満ちた。八キロの道のりを花束片手に、よく通ったものである。果物もミカン、キンカン、ボンタン(ざぼん)、柿に栗、桃や梨まであった。特にミカンはいつもたわわに実り、木に登れば食べ放題だった。



(C)マルコーシュ・パブリケーション



                                  ◇



 榮義之(さかえ・よしゆき)



 1941年鹿児島県西之表市(種子島)生まれ。生駒聖書学院院長。現在、35年以上続いている朝日放送のラジオ番組「希望の声」(1008khz、毎週水曜日朝4:35放送)、8つの教会の主任牧師、アフリカ・ケニアでの孤児支援など幅広い宣教活動を展開している。



 このコラムで紹介する著書『天の虫けら』(マルコーシュ・パブリケーション)は、98年に出版された同師の自叙伝。高校生で洗礼を受けてから世界宣教に至るまでの、自身の信仰の歩みを振り返る。

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