旧約聖書において、病気は罪の結果その人に対する罰として与えられるものとする記述があるため、アフリカでは、HIV陽性反応を示した患者に対して、旧約聖書の見解を当てはめて、「罪の結果生じた病であると見なされ、そのような誤った認識がアフリカでの教会ミニストリーの発展を妨げている」ことが指摘された。6日、世界教会協議会(WCC)が発表した。
アフリカのエキュメニカルHIVおよびエイズイニシアチブ(EHAIA)神学コンサルタントを務めるチャールズ・クラグバ氏は、「アフリカの教会指導者、牧師、神学者たちにとって、この様な患者に対処する際の神学的見解を再構築していくことが重要である」と指摘している。
EHAIAでは、HIVやエイズに対するアフリカでの神学的見解がただ新たにされるだけでなく、草の根活動として地域教会のあらゆる段階で、現地で生活する人々の間で、新たにされた神学的見解が表現され、行動として表されて行く必要があると指摘している。
クラグバ氏は「人々の日常生活に根付いた教会と現地の人々との対話を一新させていくために、聖書を真剣に再読する神学組織や教会に関わってきました。その結果、神学を再構築していく必要があると考えるようになりました」と述べている。
同氏は神学はダイナミックで個々のキリスト者やキリスト共同体とのやり取りに適応できるものであり、日々の行事や日常生活で人々が経験する出来事に神学的見解を適用することで、福音の中にある光を現実のものとして理解することができ、行動の転換を促進させるものでなければならないと見なしている。
クラグバ氏は「神学は知的対話を超えて現実に適用できるものでなければなりません。すべてのクリスチャンに対して実践的に適用できるものでなければなりません」と述べている。
HIV、エイズという問題において、すべてのキリスト者に対する挑戦となるのは、どのように神様の御言葉をこれらの患者を自由にし、心のケアと癒やしを与え、社会から疎外されたり差別されたり、最悪の場合殺されるのを防ぐために用いることができるかにあるという。そのため教会に関わるすべての大人と青年が、神学の知識をもって聖書の理解を強化され力づけられなければならないとクラグバ氏は強調している。ただ国家的な神学組織で神学者が訓練されるだけでなく、教会に関わるすべてのクリスチャンが神学的により深い理解が促進されるべきであるという。
クラグバ氏の最終的な目標は、アフリカのすべての教会が、HIV・エイズ患者に対して癒やしを与えることができる教会となるように、新約聖書の正しい理解を地域教会、草の根社会に根付かせることにあるという。
アフリカ社会ではHIV問題の他、倫理、宣教、アフリカ土着宗教や性差別の問題など、正しい聖書理解に即して草の根レベルで対処されなければならない問題が多様に存在している。そのように正しい神学理解を地域教会レベルで促進していく結果、「人々の意識が転換され、多くの人々が意識の転換の結果としてあらゆる社会問題に対処する行動に関わっていくことができるようになるだろう」と述べている。
クラグバ氏はアフリカトーゴ共和国のメソジスト教会の監督として1985年から奉仕している。同国でHIV、エイズ問題に対する神学的取り組みに関わる他、教会マネジメント、牧師ケア、カウンセリング、同国社会の倫理、政治政策問題にも関わっている。またフランスを拠点とするCevaa(宣教における諸教会共同体)とよばれる宣教組織において、神学的な啓蒙活動を行う代表的存在として11年間奉仕してきた。同氏は欧州、アフリカ、南米、太平洋諸国およびインドにおいて、神学的見解を草の根レベルで地域教会の教会員に適用可能にして行く活動を支援している。また諸教会の将来的指導者育成のための神学・宣教学の教育にも携わっている。
今日の社会において、クラグバ氏は神学的見解を実践に移していくことがますます重要になっていると指摘し、「人々は神学組織、神学研究室でなされる神学的見解の提言は、HIV問題に対してより進歩的なパラダイムへと移行できる役割を果たしてくれるものと想像しがちですが、私は神学というものが実践に移される前に、しばしば『箱入り』状態になってしまっていることに気づくようになりました」と述べている。
そのため同氏は、神学的見解に即した教会活動を実際に組織していくことで、諸教会で必要とされるものについてより多くの発見が得られると考えており、「EHAIAではアフリカ社会でしばしば沈黙や恥の対象とされるHIV問題についての壁を壊して行きたいと思っています」と述べている。
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