中東の最貧国であり、2014年から続く泥沼の内戦によって「世界最悪の人道危機」のただ中にあるのがイエメンだ。人口の8割以上が外部からの人道支援に依存してかろうじて命をつないでいる。
その過酷な現実の中で最も厳しい環境に置かれているのが、他ならぬ女性たちである。伝統的なアラブ社会の壁は極めて分厚く、イエメンの女性の識字率はわずか25%程度にとどまり、厳格な服従と監視の下で生きることを強いられている。
砂埃(すなぼこり)にまみれたイエメンのある都市に住むサミラも、そのように生きてきた女性の一人であった。夫は民兵として長引く内戦の前線に駆り立てられ、彼女は義理の家族の厳しい監視の目を気にしながら、恐怖と服従の毎日を送っていた。
しかし、そんな息の詰まるような彼女の生活に、一筋の小さな光が差し込んだ。それは彼女が手にしていた「スマートフォン」である。夜になり、子どもたちが周囲で眠りについた後、彼女は密かに自分の母語で希望のメッセージを語りかけてくるあるウェブサイトを訪れるようになった。
やがて彼女は、その慰めに満ちた言葉が「聖書」のものであることを知る。彼女がこれまで教えられてきた教えとは違い、その言葉は彼女を決してとがめることはなく、ただ深く慰め、勇気と希望、喜びを与えるものであった。
「すべて疲れた人、重荷を負っている人はわたしのもとに来なさい」。その言葉は、絶望の中で生きる彼女の心に真っすぐに突き刺さった。
サミラは密かに質問を重ね、やがてイエスこそが道であり、真理であり、いのちであるという確信に至った。「イエス様がなさったことは、他の誰にもできません。死者をよみがえらせ、病人を癒やし、罪人を赦(ゆる)されました」と彼女は静かな熱を帯びて語る。「だから私は彼に従います。イエス様以外に救いはないからです」
そして、奇跡は彼女の心の中だけで終わらなかった。彼女のスマートフォンは、単なる情報収集の道具から、命懸けの「フェローシップ(交わり)」の場へと変わっていったのだ。
彼女は、同じ都市の内に密かにイエスに従っている別の信者たちがいることを知った。最初はチャットで聖書の御言葉や祈りを分かち合うだけであったが、やがて彼女たちは監視の目を逃れ、場所や曜日を変えながら実際に秘密裏に集まって礼拝をささげるようになったのである。
爆撃と飢餓、そして厳格な監視が支配するイエメンの街の地下深くで、決して消えることのないキリストの光が、女性たちのスマホの小さな画面を通して確かに広がり始めているのだ。
聖書は言う。
光は闇の中に輝いている。闇はこれに打ち勝たなかった。(ヨハネ1:5)
イエメンの女性たちが他の家族に分からないよう密かに手にするスマホの画面の発光は、永遠の真理の光で、彼女たちの魂の奥底までも照らすのであった。
イエメンの女性たちのために祈ろう。サミラのように、絶望と監視の中で生きる女性たちが、聖霊の導きとスマホという絶好のデバイスによって母語の聖書やメッセージにアクセスし、キリストの慰めと救いを見いだすことができるように。
インターネットやSNSを通じて密かにつながり合っている地下の信者たちの交わりが、当局や家族の監視から完全に守られ、その信仰が強められるように。そして、長引く内戦と飢餓の中で今日生き延びるために闘っているイエメンの母親や少女たちに、天からの必要が豊かに備えられ、彼女たちの心に真の希望がもたらされるよう、祈っていただきたい。
■ イエメンの宗教人口
イスラム 99・9%
プロテスタント 0・02%
カトリック 0・04%
正教会関係 0・03%
◇


















