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無共感から共感の社会へ、聖書の言葉の力強さを改めて確認

2012年4月22日09時05分
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コンサートを行った沢知恵氏。2012年4月12日、有楽町朝日ホールで。+
日本聖書協会理事長大宮博氏。2012年4月12日、有楽町朝日ホールで。+
日本聖書協会総主事渡部信氏。2012年4月12日、有楽町朝日ホールで。+
著書のサイン会を行う沢知恵氏。2012年4月12日、有楽町朝日ホールで。+
 20日、有楽町朝日ホールで「聖書と音楽の出会い・東京2012」が開催さた。日本聖書協会の活動紹介と共に、沢知恵氏のコンサートが行われ、音楽を通じて聖書について考えるひと時が持たれた。日本聖書協会による「聖書と音楽の出会い」コンサートは東京と大阪で毎年開催されており、28日には大阪で上原令子氏を招いて同様のコンサートが開催される予定である。
 
 開催にあたって、日本聖書協会理事長の大宮博氏は、「日本は昨年東日本大震災を経験し、一年間の苦闘の歩みをしてきました。キリスト教界も聖書協会を含めて、災害に遭われた方たちに対する追悼と復興のための支援のボランティア活動募金運動等を進めてまいりました。全国的な諸教派の合同でボランティア活動を進めてまいりました。活動を開始して半年後の被災地での報告を伺いますと、被災者の方々が一番残ったことは、朝と夕べの祈りと礼拝の集いがあったことであったということです。災害から一緒に再建に努力をしている中で、疲れを覚えたり痛みを覚えたりしたときに、聖書の言葉を心に刻みつけることによって、大きな力が与えられたという書簡が寄せられました。こうした災害の中にあっても、人間の心を立ち上がらせていく神の言葉の必要性を改めて感じました。震災を通して、人間の科学、技術におごっていた心が砕かれて、世界と人間が神の創られたものであることが改めて認識できたことを、感謝して受け止めながら、神の導きにとどまりつつ、再建にあたらなければならないと考えております」と述べた。

 また震災を通した日本社会の変化と聖書の必要性について、「こういう事を通じて、日本社会全体が他に対する関心希薄の社会、無共感社会から共感の社会、共に生きようとする助けあいの社会への方向付けが与えられました。主キリストが思いを尽くしてあなたの神を愛せよという御言葉と隣人を自分自身のように愛せよという御言葉が第一、第二の戒めである(マタイ22・37~39)といわれましたが、災害を経験することで改めてこの聖書の教えが自分たちの歩みの力であるという事を知らされたような感じがします」と述べた。

 また日本聖書協会総主事の渡部信氏は、「皆様のお祈りとご支援を感謝します。本日のつどいには24の教団から118の教会の出席を賜りました。昨年は大震災のための支援募金を行い、被災地へ1万2,000冊の聖書を送ることができました。東日本の教会の方々が復興再建されることを願いながら、皆様のご協力に感謝します」と聖書協会の活動支援への感謝の意を表した。渡部氏によると、日本聖書協会では6月末に盛岡市で支援コンサート、8月末には福島県いわき市で沢知恵氏による支援コンサート、9月には福島県で広く合唱団の方を集って、メサイアコンサートを地元の人々と共に開催する予定であるという。

 その後沢知恵氏によるゴスペルコンサートが行われた。49歳で牧師であった実の父をがんで亡くした沢氏は、「父は私が高校生の時にがんで49歳で亡くなりました。私は今41歳になったのですが、だんだんと父の亡くなった年に近づいていくにつれ、本当に若かったんだなと思います」と述べた。

 沢氏は聖書との関わりについて、「牧師であった父は、私の話を何時間でも聞いてくれました。今日はひとつの聖書を持ってきました。これは父が生前愛用していた聖書です。牧師が使う聖書なので、商売道具でもあり、本当によく使われた聖書です。書き込みや棒線がいっぱいあって、破れてセロテープで直したところがあります。鉛筆で書いた落書きもあります。父は私を膝に乗せて聖書をめくりながら説教の準備をしていたのではないでしょうか。父の形見であるこの聖書は、長い間本棚に飾られていました。開いたことはありませんでした。40歳を過ぎて、ふとした時に『何だこの黒い分厚い本は?』と思い、この聖書を引っ張り出して開いて読んでみたら、『わあ、すごい。生きている』と感動し、それから私は聖書を良く読むようになりました。40年クリスチャンをやってきて、生まれたときからクリスチャンであったこそ、あまりにも身近に聖書がありすぎて、日曜に教会で読む以外に自分で聖書を開くことがほとんどありませんでした。それがこの聖書と再会してから、毎日少しずつ聖書を読むようになりました。去年3月11日を境に、寄って立つ土台を失った不安から、魂の飢え渇きを潤すようにして聖書を学ぶようになりました。旧約新約どこを開いても言葉が立体となって浮かび上がって私に突き刺さってきて、『すごい本だな』と改めて思いました」と証した。

 日本聖書協会では現在、次世代に美しい日本語聖書を渡すべく、新しい聖書翻訳事業を進めている。カトリックを含む諸教派・団体が派遣した理事によって、2008年10月から4回にわたって開催された諮問会議で、今後どのような聖書が求められるかが話合われ、そして翻訳奉仕に全文を採択した。これを受けた聖書協会理事会で新たな翻訳事業を行う事が決意された。昨年8月には第1回翻訳全体会議が開催され、17教会から派遣された検討委員、翻訳者、編集委員合計62人でさまざまな検討がなされたという。現在2016年の新聖書訳完成を目指して翻訳作業が進行中であるという。新しい日本語聖書の翻訳作業を、より多くの人々に知らせるため、7月5、6日には2007年以来5年ぶりの国際聖書フォーラムがホテルニューオータニ(東京都千代田区)で開催される予定であるという。

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