ソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)は最近の中東や北アフリカにおける反政府運動に大きな役割を果たしていることがメディア調査により明らかになった。米クリスチャン・ポスト(CP)が報じた。ここ数週間においても、チュニジア、シリア、リビア、エジプト、レバノンおよびその他中東諸国においてソーシャルメディアを介した抗議運動が急ピッチで組織化され、これら各国政府は国内および外交政策を再構築せざるを得ない状況に追いやられた。サウジアラビアでは公衆の場で集会を開くことは禁じられているが、ソーシャルメディアによってインターネット空間で抗議運動の動機付けを行うのを促進させることになった。
 南カリフォルニア大学パブリック・ディプロマシー・センター所長のフィリップ・セイブ氏は「中国からイエメン、チュニジア、エジプトに至るまで、ソーシャルメディアは普通の市民たちが組織化し、草の根の声を届ける絶大な役割を果たしてきました。このことが既に不安定な世界と化していたそれぞれの国の政府政策の不安定化を招いてきました」と述べている。
 ツイッター、フェイスブック、ディジット、ライブ・ビデオ、チャッティング、ブログ、ウェブサイト、マイスペース他様々なWeb2.0コミュニケーションツールを通して、「群衆」の力が高まり、共に政権転覆や同じ志を持つ国の同朋とメッセージのやり取りを拡散させ、最終的に彼らの志を世界中に拡散することができるようになった。米政治アナリストらによると、この様な現象はラジオ・テレビなどの伝統メディア以上に「ニューメディア」と言われるソーシャル・ネットワークを通じて顕著に見られるという。
 世界中の草の根活動をデジタル面でサポートする活動を行うMovements.orgのコンテンツおよびアウトリーチ分野ディレクターを務めるスザンナ・ヴィラ氏は「ソーシャル・ネットワークの利用と最近のこれらの国々での暴動の関連性は軽視されるべき問題ではありません。ソーシャルメディアを用いたやり取りでは、互いに交流することで励みを得る一方で、指導者がインターネット空間には欠如してしまうところがソーシャルメディアを中心にした抗議運動の際の脆弱性を示してしまうことになります」と述べている。
 同団体による中東でのソーシャルメディア調査の結果、中東諸国のうちフェイスブックの活用頻度が最も多い国は第1位エジプト(182万ユーザー)、第2位サウジアラビア(92万ユーザー)、第3位モロッコ(86万ユーザー)、第4位アラブ首長国連邦(84万ユーザー)、第5位チュニジア(69万ユーザー)、第6位レバノン(68万ユーザー)、そして第7位がヨルダン(49万ユーザー)となったという。
 フェイスブックの利用料が無料であることもあり、シリアでは日常的にユーザーらが同国の政府政策に関する見解について意見を交わし合っているという。シリアでは政治問題について議論することは主要な禁止事項の一つとされてきた。しかし3月中旬頃から同国の政情不安定が生じるようになったため、多くの若いシリア人らがオンラインで政治についてオープンに議論するようになり、路上でも同様の議論が行われるようになってきたという。
 
 つい最近になって、シリア政府は中東で「新しい時代」の形成を試みる活動の一環としてのフェイスブック、ユーチューブおよびツイッター使用禁止令を解除した。またロイター通信によると、シリアのアサド大統領は20日、ダマスカス大学での演説で、バース党による一党独裁を規定した憲法条項見直しを行う方針を明らかにしたという。今後国内情勢不安定化の打開に向けた国民対話も行っていく方針であるという。
 現代IT社会において、テクノロジーの進化はいかなる政府にあっても特定の政党による圧政を許さない世論形成に大きな寄与をするようになってきている。多種多様な団体による多様な目的達成のためにITテクノロジーが利用されるようになっていることが同団体によるメディア調査で示された。
 米カリフォルニア州ロサンゼルスにおいて23日、24日の両日にわたって戦略的コミュニケーションカンファレンスが開催される予定であるが、同カンファレンスにおいてこのような「ニューメディア」を活用した活動家らが一国を変化させることができるかどうかについてメディア専門家らが集い討議がなされる予定であるという。中東各国の政府パネリストとして各国の大学教授らも参加し、ソーシャルメディアが同地域の政策にどのように影響するか議論する予定であるという。
 中東はオンライン利用率で他の世界各国に伝統的に後れを取っていると見られるものの、現在急ピッチで遅れを取り戻そうとしていることが伺えるという。フェイスブックは世界一のユーザー数を抱えるSNSとなっており、全世界70言語で使用され、数百万人ものモバイルユーザーを抱えている。SNSにおいてはフェイスブックだけでも全世界に6億人以上のアクティブ・ユーザーが存在しているという。このようなネットワークは各国政府の公的部門から独立して存在しているため、サイト内のやり取りは検閲されることなくそれぞれの国で新たな雰囲気を形成するのに寄与しているといえるという。
 米メディア専門家らによると、世界各国における革命はソーシャルメディアが存在するしないに関わらず生じるものであるが、ソーシャルメディアが存在することで革命の速度が劇的に早まるといえるという。南カリフォルニア大学でジャーナリズム・国際関係・パブリックディプロマシーを専攻する教授でもあるフィリップ・セイブ氏は「多くの人々は中東各国で何故多くの暴動が生じたのか理解できず、その答えをソーシャルメディアに見出そうとしています。しかしながら覚えておくべき重要なことは、ツイッターやフェイスブックで革命を起こそうと考えている人々は、実際に路上に出て身に危険を冒しながら活動し、時には革命のため命を落とすような人々もいることを見逃してはいけないということだと思います」と警告も与えている。
 ソーシャルメディアは人と人とをつなげる役割を果たすテクノロジーであり、一般大衆が持つべき意見を見つけたり、また自分の意見を表現するのに大きく寄与している。米政治アナリストらによると、更に多くの人々が将来に対する見解や現状について意見を共有していくことで、より多くの人々の実際の需要が反映されていくことにつながるという。
 先進国などでは、SNSによって「心の浮気」や引きこもりが促進されると懸念される中、中東・発展途上国においては各国の革命やより民主的で開かれた政治を促す運動促進のため大いに寄与しているという二面性が示されており、今後世界各国におけるさらなるSNS利用率の高まりが社会に与える影響について、メディア専門家らの注目が集められている。
    
    
        
    
            
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