東日本大震災から1カ月が過ぎ、被災地では心の癒しを求める人々のための支援活動が継続的に行われている。震災で全てが奪われ、共同生活を余儀なくされた中にあって、人と人とのつながりや神様の恵み、ご計画を改めて感じさせる体験も数多く報告されている。
日本国際飢餓対策機構親善大使を務める森祐理さんは18日から20日まで被災地の仙台・気仙沼市を再び訪れ、避難所での慰問ミニコンサートを開いている。森さんは宮城県亘郡山元町にある坂元小学校の避難所を訪れた。そこでは門間裕子(もんま・ゆうこ)さんという震災で流された山元町立中浜小学校の教諭が、助かった児童とともに坂元小学校に合流して避難生活を続けており、傷ついた児童に歌を教え、歌の歌詞によって児童を励ましていた。彼女の取り組みはNHKも取り上げている。
門間さんの教えている歌は「ひとりの手(作詞 本田路津子さん)」で、震災で自宅を流され、傷ついた児童を励ますため、愛する子どもたち同士の手と手をつなぐために、一つの歌の歌詞を教えている。歌を教えることで、児童たちの心を励まし続けており、この取り組みを作詞者の本田さん自身も知り、門間さんへ激励と感謝のメッセージが送られた。親善大使の森さんも避難所でこの歌を歌いながら被災者を励ましたという。
一方依然避難生活を余儀なくされている福島第一聖書バプテスト教会の佐藤彰牧師は15日、連絡の取れなかった教会員が津波で死亡していた知らせを受けたことを伝えた。佐藤氏は「受難週だからでしょうか。それとも、震災の傷がうずくからでしょうか。私の回りに移る世界のすべてが悲しみをたたえているように見えます。きっと、震災直後の受難週だからでしょう」と伝えている。
佐藤氏は避難生活の中でこそ浮き彫りにされる、初代教会が迫害され地下にもぐって生活していた状況を思い描き、第一ペテロの手紙のあて先のひとつである現トルコのカッパドキア地方のクリスチャンたちについて「洞窟で長らく共同生活をするうちに、病気をして危篤になったり、あるいは亡くなって埋葬をするということもあったはずです。ノアの箱舟にしても、中で一カ月以上すごしたわけですから、多くの動物たちの世話をするうちに、きっと様々なことに直面したはずです。この非常時の日常化も、いつか初代教会やエジプト脱出の民たちがたどった行程なのでしょうか、処刑を前にして投獄されていたパウロを訪ね、ピリピ教会から派遣されたエパフロデトも、旅先のローマで自ら病をわずらい、逆にパウロの世話になったりしています。私たちは今、いつか誰かが通った道の上を歩いています」と避難生活の状況を初代教会の状況に重ね合わせながら伝えている。
さらに、箴言25章25節「遠い国からのよい消息は、疲れた人への冷たい水のようだ。」を引用し、「初代教会と言えば、半端でない走行距離を幾度も歩いて旅しています。散らされた人々を尋ね、或いは新たな地を開拓しながら。今回、葬儀のために福島に遣わされたチームは、火葬場が混んでいたため、3日間の滞在となりました。その間、散らされた教会員を尋ね、各地で集会を持ち、大変喜ばれているとのニュースが届いています。泊まっている信徒宅を訪ねてくる兄弟姉妹もおり、密度の濃い時間を過ごしているようです。母体になっているこちらにも、嬉しいニュースです。どうやら困難は、結びつきをいっそう強くし、ほんとうに大切なものを浮き彫りにするようです」と伝えた。
佐藤氏は、奥多摩での避難生活について「つくづくここが箱舟であることを実感しています。東京にある、不思議な森のキャンプ場です。まるで神様の手のひらが、私たちの傷をいやすかのように、自然が私たちを包んでいます。私たちは日ごとに父なる神のやさしさを浴びて、悲しみの中にも、よろこびを見出しています。私たちは弱いから強くて、何もないからすべてのものが与えられるのです」と伝えている。
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