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ヘルマン・ヘッセの宗教観

ヘルマン・ヘッセの宗教観―《魂の漂泊者》にみる宗教的遍歴―(2)

2011年12月27日09時19分
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[二元論→多元論]
1)プロテスタント(反抗心・抵抗)
家庭で学校でプロテスト(抵抗)することを身につけたヘッセは、プロテスタント(新教)教会に対してもプロテスト(抗議)し続け、内部告発を行うことになる。
また、第2次世界大戦をはさんでナチスが台頭してくると、大衆からは非国民扱いされ、政府からは紙の配給が停止されるなどの圧力がかかるようになり、やむなくスイスの出版社から刊行する歳月が続いたが、1946年のノーベル文学賞授与を契機として再びドイツでの出版が可能となり、ドイツ人としての誇りを失わず、「間違ったドイツ」にプロテストすることこそ真の愛国心と信じて挫けることのなかったヘッセを喜ばせた。

2)二元論/2極の対立 → 多元論
ヘッセ53歳の作品である『ナルチスとゴルトムント(知と愛)』(1930)から引用しよう。登場人物ナルチスは知を代表する思索家で分析を得意とし、愛を代表する芸術家で夢見る男ゴルトムントと対立するのである。

凡ゆる存在は、二元と対立に基づいているように思われた。人は男であるか女であり…自由と規制、情欲(肉体)と精神を同時に体験することはできなかった。常に一方を得るには、他方を失わねばならなかった。そしていつでも、どちらも同様に重要であり、求めるに値した。(拙訳)

二元論を語りながらヘッセは既に両極の価値を認めようとしている。そしてそれは、『荒野の狼』(1927)の中でハリー・ハラーの複雑な内面分裂として発展し、次のように描かれる。

こういう人間は皆、二つの魂、二つの性質を内に持っている。彼らの中には、丁度ハリーの中で狼と人間がそうしているように…神性と悪魔的なもの、父性と母性の血が、幸福の素質と不幸の素質が、隣り合ったり入りまじったり、敵対したりもつれ合ったりして存在している。…しかし彼が狼の時には、彼の中の人間が絶えず見張り、批評し裁き、待ち伏せし、彼が人間であるような時には、狼が同じことをするのであった。…ハリーは二つの本性からできているのではなく、数百数千の本性からできているのだ。彼の生活は(全ての人間の生と同様に)情欲(肉体)と精神、聖者と放蕩者といった二つの極の間に揺
れ動いているばかりでなく、幾千という無数の極の間に揺れ動いているのだ。…上とか下とかは唯思考の中に、抽象の中にだけ存在するものである。世界そのものには、上も下もありはしないのだ。…人間の苦しみが本当の苦しみ、地獄になるのは、二つの時代、二つの文化、二つの宗教が交錯する時だけなのだ。(拙訳)

確かにこの大宇宙の中で、地球の上とは何だろうか? 北が上というのも人間が文化の中で勝手に作った決まりごとに過ぎない。しかも上と下の間には横があり斜めがある。2極対立が←→のように表せるとすれば、『荒野の狼』の世界は←→が矢車のように無数に組み合わされた構図になるだろうか。

この作品を執筆する頃、ヘッセは実に第一次世界大戦をはさむ二つの時代のうねりの中にいた。そして西欧と東洋の二つの文化、キリスト教とインドを中心とする東洋宗教の、まさに交点に立たされていたのである。こうしてヘッセの悩みと不安は増大していく。しかし悩むがゆえに新たな世界を求め前進を続けることになる。それは「生活は分裂と矛盾によって豊かに花開く」(『ナルチスとゴルトムント』拙訳)ことの、己の人生における立証であった。懐疑と不安はそのまま求道の推進力となったのだ。

[故郷(nach Heimat)/母エヴァ(原初への回帰)]
1)故郷(nach Heimat)
「私たちは一体どこへ行くのか。いつも故郷へ…」ヘッセは『東方の旅』(1932)でノヴァーリスの言葉を引いている。〈ふるさと〉を求めたのは決してヘッセだけではない。この作品名である「東方の旅」とは、「魂の永遠の流れの中の一つの波、東方のふるさとを目指す精神の永遠の帰還の努力」(『東方の旅』拙訳)であった。勿論「東方」は、背後に「インドへの憧憬」あっての「東方」であることは否定できないが、地理上の国ではなく人間精神のふるさとである。〈ふるさと〉は人間の根源、〈真の自己〉とも言うべき、全てを一体化する「新しい神」のもとを示唆している。
「未来の人類」は無時間性の中で「誕生の人類」と混沌と融け合って、故郷の概念を完結させるのである。人は各自、最終的に誰にも頼らず、誰にも導かれず、唯自己の道をとることによって「故郷」へと向かう。「我々を導く者は一人もいない。我々の唯一の導き手は郷愁の念なのだ。」(『荒野の狼』拙訳)

しかし晩年ヘッセは、「どの場所にも故郷に対するような執着を持ってはならない」(『ガラス玉遊戯』1943 拙訳)と言う。ヘッセの精神は止まることを知らない。故郷に安住せず、求め得たものに満足せず、更に歩みを進めようとする。《魂の漂泊者》たる所以である。

2)母エヴァ(原初への回帰)
「帰還」という点では〈故郷〉と等しいが、いささか趣を変えるのがこのキーワードである。『デーミアン』(1919)に描かれるエヴァ夫人に対する憧憬は、人類の母イヴの象徴である。そして『ナルチスとゴルトムント』では、偉大なる産みの母イヴの像を刻むことがゴルトムントの念願である。その像は神聖にして世俗的であり、生命と死の源泉、苦悩と歓喜が共存する神秘の存在であった。

彼は世俗的な母なるイヴの像を、最も古く最も神聖な、彼の心の中のものとして造りたいと思った。…いつか将来目に見えるものに造りあげるとしたら、その形は特定の女性ではなく、最初の母として、命そのものを表現するはずである。…彼がこのイヴの顔と、それの表現するはずのものについて言えることは、苦痛と死の内面的な結合の内に、生命の歓喜を表すはずだと言うことだけであった。…
死と歓喜は一つであった。生命の母を愛または喜びと呼ぶこともできたし、墓とか死滅と呼ぶこともできた。母はイヴであった。彼女は幸福の泉であり、死の泉であった。永遠に生き、永遠に殺した。彼女において愛と残忍は同一であった。…私が愛し跡づけているのは神秘である。…それは偉大な母、産みの母の姿である。(『ナルチスとゴルトムント』拙訳)

己が生まれ出ずる母の胎内は、命の原初である。人の還り行く場所をそこに定めた哲人も多く存在する。幼児は羊水に揺蕩(たゆと)った頃の揺れを揺籃の中で感じて安らぎ、母の腕に揺られてむずかることを止めるのだ。成人になっても胎内で聴いた音に似通った音やリズムに癒されるとして、波の音、梢を渡る風の音、そして1/fの揺らぎの心地好さを、胎内経験に求めようとする心理学者や音響関係者も少なくない。

しかしヘッセの特色は、その原初にあらゆる対極が結合し融合して内在すると説く点であろう。ヘッセの「統合の論理」とその思想の深まりを、これから更に観ていきたいと思う。

[名のない神と神の遍在]
ヘッセの説くのは〈融合・統一の神〉である。しかし彼はその神に名を与えようとはしない。旧約聖書においても神は名を名のらない。「出エジプト記」3章において、モーセの問いかけに対し「わたしはある。わたしはあるという者だ」としかお答えにならないのである。〈Yahweh〉(ヤーウェ、エホバ)「ありてある者」― 。全ての「もの」は、名をつけた瞬間に、説明を試みた途端に、時空に閉じ込められ「物」と化する。神ですら人間のちっぽけな手の内に握り潰されてしまうのだ。

ある者は彼(*神)を光と呼び、ある者は夜、ある者は父とも母とも呼んだ。ある者は彼を静寂として、ある者は運動として、火として、冷気として、審判者、慰安者、創造者、破壊者、赦す者として、懲罰者として賛美した。神自身は名を名のらなかった。…しかし人がどんな名で呼ぼうとも、人が神を愛そうと憎もうと、神のもとに静謐と眠りを求めようと、あるいは舞踏と狂乱を求めようと、神にとっては同じことであった。(『クラインとワグナー』1920 拙訳)

私は…彼の言葉を信じたのである。「あなたの父は、ここにもあそこにも、あなたの内にも外にも、どこにでもいるのです。」私はこれが忠告であることを諒解し、瞑想にふけり、私自身の中に父を見出そうとひざまずいた。(“Indien”H.Hesse Gesammelte Dichtungen Bd. Ⅲ Suhrkamp,
1952 拙訳)「名のない神」は何と呼ばれようと、何と名づけられようと良いのである。歴史を通じて人は神に様々な名をつけて来たが、地上の全ての人々が自己の神を持ち、自己の神に名をつける時、その総体は《無》となるとヘッセは考える。丁度全ての色光を集めた時、その色が透明な白色光となってしまうように…。
「名のない神」を語る際、ヘッセが聖書を意識したことは明白だが、彼の思想は聖書の枠を超えてゆく(次ページはこちら)。
===============================================================

板倉素子(いたくら・もとこ):東京教育大学(現・筑波大学)文学部、早稲田大学大学院卒、International Mentorship Graduate School 卒、文学修士。現在日本福音ルーテル小石川教会会員、千葉経済大学短期大学部 名誉教授。国際メンターシップ協会認定チーフエグゼクティヴ・メンターとして、カウンセリング、メンタリング、各地のセミナーや研修会を担当している。 

(本稿は日本福音ルーテル教会東教区-宣教ビジョンセンター紀要-『教会と宣教』第17号に掲載されたもので、筆者の同意を得て転載しています。)

〈引用について〉
・文中(拙訳)と記されているものは、ドイツ Suhrkamp 社の原典を筆者が訳したものである。
・一部原典の入手が困難だったものについて、「日本ヘルマン・ヘッセ友の会・研究会」から刊行された「ヘルマン・ヘッセ全集」1~16(臨川書店 2005-2007)、「ヘルマン・ヘッセ エッセイ全集」1~8(臨川書店 2009~)の訳をお借りした。

〈参考文献〉
ラルフ・フリードマン(藤川芳朗 訳)『評伝 ヘルマン・ヘッセ』上・下(草思社 2004)
秋山六郎兵衛「ヘルマン・ヘッセ全集 別刊」『ヘッセ研究』(三笠書房 1941)
高橋健二『ヘルマン・ヘッセ研究』(新潮社 1957)
相良守峯「ヘルマン・ヘッセ全集 別刊」『ヘッセ研究』(田園書房 1966)
佐古純一郎『ヘルマン・ヘッセの文学』(春秋社 1992)
中村元『東洋人の思惟方法』1~4(春秋社 1941-1942)
金倉圓照『インド哲学史』(平楽寺書店 1962)
板倉素子『ヘッセにみる宗教的遍歴』(「商経論集」-千葉経済大学短期大学部紀要- Vol.9 1976)
板倉素子“Das religiöse Feld in den Werken Hermann Hesses -Die Begegnung des Christentums mit der indischen Religion-”筑波大学(旧東京教育大学)提出・卒業論文(1963)

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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