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植竹利侑牧師「現代つじ説法」(10)・・・ホンモノになりたい

2009年7月30日13時49分
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植竹利侑牧師+
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 世の中はやたらと試験ばやりである。入学、入社はいうまでもなく、ミニバイクから司法試験まで、国家試験も数しれない。実際、人の生命財産をあずかるような人は、厳しい訓練を経て合格してもらわないと安心できない。モグリの医者や無免許の運転士に身をまかせるわけにはいかない。



 しかし、資格だけあれば本物かというと、どっこいそうは問屋がおろさない。資格はあっても内容のともなわない人がいっぱいいる。ことに、精神的な仕事をする人には厳しさが要求される。たとえば教師、医師、弁護士、宗教家等々。あれはホンモノだ!といってもらえる人は少ないのではないか。免許をとったなぞということは最低の条件で、あるからいいなんていうものではないからだ。



 贋物とは、似せたもの、似て非なるもののことである。似ているから、外観だけではわからない。まして、繁盛したり、人が募っていったりするとますますわからない。しまいには、贋物の本人までが本物ではないかと錯覚する。



 昔、ある美術鑑定家の話を聞いた。鑑定眼を磨く最良の方法は、優れた骨董屋につとめ、数多く本物を見て、さわることだという。いつも本物を見ていると、贋物を見たときピンとくる。どこかが違う。物足りない。一流の演奏を何回も聞くと、二流三流がすぐわかるのと同じだ。



 偉そうなことをいったが、私自身、けっしてモグリではないが、十年以上も前から自分は贋物ではないか、という意識に苦しむようになった。自分より若い人たちが、自分よりずっと真剣な生き方をしているのを見たからだ。改めて聖書を読むと、読めば読むほど学べば学ぶほど、自分はまだ宗教者として本物ではない。牧師としてはもちろん、夫として父として、いや人間としてさえ本物でないと思う。



 そもそも、宗教を売り物にしている。自分は十字架につかないで、十字架についたキリストを話している。自分はなにも捨てないで、いのちを捨ててくださったキリストの話をして謝礼ももらって生きている。聖書は、キリストは、パウロは本物だが、説いている私は本物ではない。会堂ができ、人が集まり、生活が成り立つと、腰が落ち着くのだ。



 宗教とは本来、もっと純粋で激しいものだ。人の魂の救いのために、うめき、苦しみ、燃えつきるものだ。



 ホンモノになりたい。キリストのために狂いたい。それが近ごろまたふきだした、私の思いである。



 (中国新聞 1983年4月26日掲載)



 (C)新生宣教団



◇



 植竹利侑(うえたけ としゆき):広島キリスト教会牧師。1931年、東京生まれ。東京聖書神学院、ヘブンリーピープル神学大学卒業。1962年から2001年まで広島刑務所教誨師。1993年、矯正事業貢献のため藍綬褒章受賞。1994年、特別養護老人ホーム「輝き」創設。著書に、「受難週のキリスト」(1981年、教会新報社)、「劣等生大歓迎」(1989年、新生運動)、「現代つじ説法」(1990年、新生宣教団)、「十字架のキリスト」(1992年、新生運動)、「十字架のことば」(1993年、マルコーシュ・パブリケーション)。

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