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協力するということ 中川英明

2004年9月11日09時09分
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2002年初めまで国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)という国連機関に14年近く勤めました。転勤が多い仕事でしたが、最初の勤務地はベトナムの首都ハノイでした。

そのころのUNHCRのベトナムでの一番大きな仕事は、ボートピープルとして国外に出たものの、難民として認められずに帰還してくる人たちの受け入れを支援することでした。多勢の帰還者を迎え入れるため、ベトナム政府や地方の役所が学校や地域の施設を直したり、職業訓練を行ったりするのを、支えようというもので、国連の支援は資金援助が主たるものでした。私も、政府や地方自治体の担当者との相談や交渉に同席することがありましたが、ベトナムの政治家やお役人は、交渉の相手としてはとても手ごわい存在なので、いつも身構えてそうした場に臨みました。

そんな中で覚えているのは、彼らがよく「協力しましょう」と言っていたことです。交渉の内容は大抵、ベトナムがどんな帰還民支援活動をするべきか、国連はその活動に幾らお金を出すかということでしたから、お金を出してもらうベトナムが、お金を出す国連に向かって、「協力しましょう」と堂々と言う姿に、最初は違和感を感じました。日本人だったら「協力して下さい」、あるいは「助けてください」とへりくだってお願いするところでしょう。ところが、ベトナムのお役人は対等の立場で胸を張って「協力しましょう」と言うのです。

ベトナムを助けてやろうとやって来る国連や先進国政府の外交官や政治家たちは、ベトナム側のこういう態度に苛立ちを覚えるようでした。しかし私は、何度もこういう光景を見聞きするうちに、次第にこれはこれで筋が通っていると考えるようになりました。

ベトナムが貧しいのは、ベトナムの人たちの能力が劣っているからでも、ベトナムの人たちが怠け者だからでもありません。ベトナムが置かれている状況が一番大きな原因だと思います。そのことにはベトナムが責任を持たなければならないことももちろんあるけれど、ベトナムのせいではないことも沢山あります。それではその部分が誰のせいかということをよく考えてみると、日本や日本人である自分のせいでないとは言いきれないことも沢山あることに思い至りました。もし自分が受けている恩恵の裏返しとして他の人が被害を受けているならば、その被害を少なくしたり、自分の受けている恩恵を分かち合うことが、少なくとも恩恵を受けている側の責任なのではないかと次第に考えるようになったのです。

また、仮に自分が全く責任がないとしても、例えば自分一人がおいしいお菓子を持っているとしたら、回りの人が見ている中では食べにくいのではないでしょうか。どうせなら周りの人も皆がおいしいお菓子を持っていて一緒に食べた方が、おいしく楽しく食べられるのではないでしょうか。

ベトナムの人たちは、「あなたのお菓子を分けてください」という意味のことを言っていたわけではありません。「私たちも努力してあなたと同じようなお菓子を作ったり買ったりできるようになりますから、そしたら一緒においしく食べましょう」と言っていたのです。「そのためにできることを自分たちはやりますから、あなたもするべきことや出来ることがあるならやってください。一緒にやりましょう」というのが、彼らの言っていた「協力しましょう」という言葉の意味だと、今になって思います。

日本に生まれた私たちは、神様から多くの恵みをいただいています。その恵みを用いて私たちができること、するべきことは沢山あると思います。自分にできること、簡単なことからはじめましょう。協力しましょう。

(ACEF機関紙「ACEF Communication」から転載)

(ACEFウェブサイト:http://www.bluerain.fm/acef/ )

◇中川英明(なかがわ ひであき)=アジアキリスト教教育基金(ACEF=エイセフ)評議員

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