4月7日から9日にかけて、2011年度オンライン弁証論会議が行われた。本会議は米アタナトス・クリスチャン・ミニストリーによって昨年度から開催されており、多様な文化や社会的価値観が蔓延する中にあって、キリスト教の価値観・信仰を弁証によって強化していくことを目指している。
2010年度のオンライン弁証会議では、芸術や文章を通していかにキリスト教の信仰を促進し、またキリスト教的価値観を擁護していくかをテーマに議論がなされた。第2回目となる2011年度のテーマは映画・動画等のビジュアルアーツに焦点が置かれた。現代において、結婚・家族・人生において多様な価値観がこれらのビジュアルアーツによって表現されるようになっている。
オンライン弁証会議では、これらビジュアルアーツに対し、どのような聖書的理解をしていくべきか、またキリスト教弁証論を強化していくのにこれらビジュアルアーツをどのように利用していくべきかが議論された。
本年度会議の基調講演を行った米バージニア州パトリック・ヘンリー大学学長で文学部教授のジーン・エドワード・ヴェイス氏は、キリスト教がしばしば文化と結び付けられて見なされることがあるが、その実は、如何なる文化にも依存していないことが他の諸宗教と異なるところであると指摘した。
米国内ではリチャード・ドーキンス氏、クリストファー・ヒッチェンズ氏などの無神論者らが「キリスト教は文化に悪影響を及ぼしている」などと主張している現代の米国において、ヴェイス氏はキリスト教と文化の関係を正しく理解することが重要であると主張した。
ヴェイス氏は「大部分の世界の諸宗教は、文化と密接に関連しているが、キリスト教は文化を超えたものである。イスラム教徒になれば、イスラム文化に適応しなければならない。何を食べるべきか、何を着用するべきか、生活のすべてに宗教が関連してくる。文化のすべての部分がイスラム教を構成している。ヒンズー教徒になれば、ヒンズー教のしきたりにそった文化に従って生活しなければならない。一方でキリスト教はすべての文化背景にある人々のために存在している。黙示録7章のヨハネ使徒の見た幻に示される通りである。キリスト教はすべての民族・国家・言語・時代そして文化のために存在している。キリストが世の罪のために死なれたことで、この様なことが可能となった。これがキリスト教が他の諸宗教と絶対的に異なる特長である」と述べた。
ヴェイス氏は1994年の宗教書籍トップ25のうちの一冊に輝いた「ポストモダン・タイムズ―現代の思想と文化に対するクリスチャンガイド」の著者でもある。
ヴェイス氏は米無神論者らはキリスト教が自由・科学・教育および諸文化の発展に悪影響を与えていると主張していることについて、「キリスト教は文化の枠組みを超えたものであり、そうであるからこそ、人々はすべての文化的枠組みを超えたレベルの高い法律があると認識することができる。そのことによって人々は目の前に存在する文化を堂々と批判することができ、それによって文化が前進してきたのである。実際、我々欧米文化が自国の文化を批判する能力が培えたのは、西欧文化の中核をなしてきた聖書の教えがあったからである。そうであったからこそ、欧米文化は一所にとどまらず、前進していくことができたのである」と主張した。
さらに、キリスト教は文化的枠組みを超えたものであるが、だからといってキリスト教が文化に影響しないで存在するべきではないとも述べた。キリスト教を弁証し、福音を宣べ伝えるときの難点となっていることとして、キリスト教が社会政治運動に結び付けられて、キリスト教保守派・リベラル派など社会運動のひとつとして解釈されてしまいがちなことがあることを指摘し、「キリスト教の本質は文化や道徳について特定の見解を伝えることではない。道徳というのは普遍的なものである。キリスト教の本質は一言で言えば『赦し』にある。『赦し』を人々に与えられたのがキリストである。神が私たちの罪的な文化や生活を打ちこわし、私たちを贖われたのである。それなのに、人々はキリスト教の本質がこの『赦し』にあるということをしばしば見過ごしがちになっている。なぜなら宣べ伝える側がキリスト教に多くの文化的・政治的要素を付加して伝えてしまうため、人々が聞く耳を持ちたがらないということが挙げられる。キリスト教の本質は霊的な問題にあるのであって、文化的な問題がキリスト教の主題ではない。そこを取り違えてはならない」と述べた。
キリスト教の運動と言えば、妊娠中絶反対、同性愛反対など文化的諸課題に焦点を合わせた運動とノンクリスチャンから見なされることが多い。しかしヴェイス氏はこの様な運動の際、本質を見失わないように、中絶は「罪のない命を殺すことはできない、命の尊さ」を訴えることに焦点があてられるべきであるが、同時に中絶を既に行った女性に対しては「赦し」が与えられていることも伝えなければならないことを強調し、同様に同性婚の問題でも、キリスト教徒は「神様の御心に沿った正しい結婚の在り方」の問題として見なすべきであり、同性愛者にも福音では「赦し」が与えられていることをはっきりと伝えなければならないと述べた。
ヴェイス氏は「福音を政治的・文化的枠組みにあまりに強く関連付けさせすぎることで、福音の本質を見失わないように十分注意する必要がある。文化というものはとても大きな影響を社会に与えるものであるが、それは究極の価値観をもつものではない。キリスト教の本質と文化の諸問題を混同してしまわないように気をつけるべきである」と訴えた。
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