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榮義之牧師「天の虫けら」(18)・・・ウナ電

2007年6月27日11時47分
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榮義之牧師+
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 家に帰ると、さっそく仕事を探した。しかし十六歳の少年にできる仕事はほとんどない。近所の仲さんが見かねて、新しい田んぼの開拓作業に雇ってくれた。朝八時から夕方の五時までの肉体労働で、つるはしやくわを使って新田を開く作業である。土をもっこに入れて担ぎ、泥だらけになって働いたが、収入は父と弟の食事代にもならなかった。



 特定郵便局の上妻局長が見かねて、夜勤をさせてくれることになった。ウナ電(至急電報)が来た時だけ配達すればよい仕事だ。日中は土方、夕方六時から朝の六時までは郵便局。朝から晩まで、晩から朝までの労働に明け暮れたが、収入は知れたもの。ほとんどが食料を買うお金に消えていく。悔しいけれど、どうすることもできない。ただ闇雲に泥だらけになって働くだけだった。夜は郵便局で教科書を開こうとするが、昼間の疲れでウトウトしてしまう。これではいけないと思いつつも、どうすることもできない。そうこうしていると、電報が来る。六キロも先の万波村だ。真っ暗闇の中をランプも付いていない自転車をこぐ。



 「電報です!」と真夜中にドアを叩いても、なかなか起きてはくれない。泣きたくなる。それでも良い知らせの時は、お茶やお菓子まで出して、「義之さんも大変だね。がんばってね」と優しく声をかけてくれることもあった。そんな優しい声に送られてこぐ帰路の自転車は軽かった。



 秋が過ぎたころから、生駒聖書学院に入学した兄の手紙が、頻繁に届くようになった。書いていることはいつも同じで、「生涯を献げて献身し、将来は牧師になるように」との勧めだけである。兄さえ、その献身なるものをあと一年遅らせてくれたら、休学しなくてもよかったのにと、悔しさに手紙を破り捨てたこともあった。しかし、人それぞれに導かれた道があるから、兄は兄、自分は自分だ、人のせいにして当たり散らしてもどうにもならないと思いを変え、クリスチャンの端くれとして、兄がすばらしい牧師になれるよう祈った。



(C)マルコーシュ・パブリケーション




◇



榮義之(さかえ・よしゆき)



 1941年鹿児島県西之表市(種子島)生まれ。生駒聖書学院院長。現在、35年以上続いている朝日放送のラジオ番組「希望の声」(1008khz、毎週水曜日朝4:35放送)、8つの教会の主任牧師、アフリカ・ケニアでの孤児支援など幅広い宣教活動を展開している。



 このコラムで紹介する著書『天の虫けら』(マルコーシュ・パブリケーション)は、98年に出版された同師の自叙伝。高校生で洗礼を受けてから世界宣教に至るまでの、自身の信仰の歩みを振り返る。

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