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核兵器容認の風潮に警鐘 被爆59年の「原爆忌」 広島

2004年8月6日15時11分
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平和記念公園の原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)前で挙行された平和記念式典(広島市)+

被爆59年となる「原爆の日」の6日、広島市中区の平和記念公園では平和記念式典(原爆死没者慰霊式、平和祈念式)が行われ、被爆者や都道府県遺族代表、小泉首相ら約4万5000人が参列した。

原爆の投下された8時15分には遺族代表子ども代表が「平和の鐘」を打ち鳴らし、恒久平和の実現を祈り、参列者全員で1分間の黙祷(もくとう)をささげた。

秋葉忠利市長は平和宣言で、小型核兵器の研究を再開した米国や、テロが絶えない世界の動きに懸念を表明。被爆60年の来年8月9日(長崎原爆忌)までを、核兵器のない世界の実現に向けた「記憶と行動の一年にする」と宣誓した。

被爆地の取り組みとして、2020年までに核兵器を全廃させるため、世界の市民、都市とともに、来年5月にニューヨークの国連本部で開かれる核不拡散条約(NPT)再検討会議に働きかけていくと表明。日本政府には「核兵器廃絶のための世界のリーダー」となり、平和憲法を守って、戦争や核兵器容認の風潮をただすよう求めた。

小泉首相はあいさつで、「広島、長崎の悲劇を再び繰り返してはならないとの堅い決意の下、平和憲法を順守し、非核3原則を堅持する」と約束した。

読売新聞によると、3月末現在、全国の被爆者は27万3918人で、平均年齢は72.46歳。広島の被爆者は、この1年間に5142人の死亡が確認され、死没者の総数は23万7062人になった。

以下は、秋葉市長による平和宣言の原文。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
平 和 宣 言

「75年間は草木も生えぬ」と言われたほど破壊し尽された8月6日から59年。あの日の苦しみを未(いま)だに背負った亡骸(なきがら)――愛する人々そして未来への思いを残しながら幽明界(ゆうめいさかい)を異(こと)にした仏たちが、今再び、似島(にのしま)に還(かえ)り、原爆の非人間性と戦争の醜さを告発しています。

残念なことに、人類は未(いま)だにその惨状を忠実に記述するだけの語彙(ごい)を持たず、その空白を埋めるべき想像力に欠けています。また、私たちの多くは時代に流され惰眠(だみん)を貪(むさぼ)り、将来を見通すべき理性の眼鏡は曇り、勇気ある少数には背を向けています。

その結果、米国の自己中心主義はその極に達しています。国連に代表される法の支配を無視し、核兵器を小型化し日常的に「使う」ための研究を再開しています。また世界各地における暴力と報復の連鎖は止(や)むところを知らず、暴力を増幅するテロへの依存や北朝鮮等による実のない「核兵器保険」への加入が、時代の流れを象徴しています。

このような人類の危機を、私たちは人類史という文脈の中で認識し直さなくてはなりません。人間社会と自然との織り成す循環が振り出しに戻る被爆60周年を前に、私たちは今こそ、人類未曾有(みぞう)の経験であった被爆という原点に戻り、この一年の間に新たな希望の種を蒔(ま)き、未来に向かう流れを創(つく)らなくてはなりません。

そのために広島市は、世界109か国・地域、611都市からなる平和市長会議と共に、今日から来年の8月9日までを「核兵器のない世界を創(つく)るための記憶と行動の一年」にすることを宣言します。私たちの目的は、被爆後75年目に当る2020年までに、この地球から全(すべ)ての核兵器をなくすという「花」を咲かせることにあります。そのときこそ「草木も生えない」地球に、希望の生命が復活します。

私たちが今、蒔(ま)く種は、2005年5月に芽吹きます。ニューヨークで開かれる国連の核不拡散条約再検討会議において、2020年を目標年次とし、2010年までに核兵器禁止条約を締結するという中間目標を盛り込んだ行動プログラムが採択されるよう、世界の都市、市民、NGOは、志を同じくする国々と共に「核兵器廃絶のための緊急行動」を展開するからです。

そして今、世界各地でこの緊急行動を支持する大きな流れができつつあります。今年2月には欧州議会が圧倒的多数で、6月には1183都市の加盟する全米市長会議総会が満場一致でより強力な形の、緊急行動支持決議を採択しました。

その全米市長会議に続いて、良識ある米国市民が人類愛の観点から「核兵器廃絶のための緊急行動」支持の本流となり、唯一の超大国として核兵器廃絶の責任を果すよう期待します。

私たちは、核兵器の非人間性と戦争の悲惨さとを、特に若い世代に理解してもらうため、被爆者の証言を世界に届け、「広島・長崎講座」の普及に力を入れると共に、さらにこの一年間、世界の子どもたちに大人の世代が被爆体験記を読み語るプロジェクトを展開します。

日本国政府は、私たちの代表として、世界に誇るべき平和憲法を擁護し、国内外で顕著になりつつある戦争並びに核兵器容認の風潮を匡(ただ)すべきです。また、唯一の被爆国の責務として、平和市長会議の提唱する緊急行動を全面的に支持し、核兵器廃絶のため世界のリーダーとなり、大きなうねりを創(つく)るよう強く要請します。さらに、海外や黒い雨地域も含め高齢化した被爆者の実態に即した温かい援護策の充実を求めます。

本日私たちは、被爆60周年を、核兵器廃絶の芽が萌(も)え出る希望の年にするため、これからの一年間、ヒロシマ・ナガサキの記憶を呼び覚ましつつ力を尽し行動することを誓い、全(すべ)ての原爆犠牲者の御霊(みたま)に哀悼の誠を捧(ささ)げます。


2004年(平成16年)8月6日


広島市長  秋 葉 忠 利

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