異端・カルトシリーズ(7)友人を信じて統一協会に 泉山三枝子さん

2017年10月24日17時30分 記者 : 守田早生里 印刷
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+異端・カルトシリーズ(7)友人を信じて統一協会に 泉山三枝子さん
カルト問題に取り組む「エクレシア会」の和賀真也牧師
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岩手県二戸市出身の泉山三枝子さんは、高校卒業後、盛岡市内の病院で働き始めた。1980年、同僚から誘われ、統一協会に入信した。

職場の後輩だったある女性は、初対面の時からとてもウマが合った。彼女の醸し出す雰囲気や言動にも引かれていたので、彼女から「実は私、統一協会のメンバーなの」と打ち明けられた時には、「ああ、だからか」と思い当たったという。泉山さんは少し前、街頭でのアンケートを通して、「キリスト教」と名乗る統一協会と関わりを持ったことがあり、彼女のことも「クリスチャンだから」と納得したのだ。

そうした信頼関係が最初にあったため、統一協会やその教義を疑うことはなかった。やがて、1人暮らしのアパートにいる時間より、「ホーム」と呼ばれる共同生活の場にいる時間が長くなっていた。ホームから勤務先に通い、ホームに帰れば、気の合う仲間がいて、夕食も共にする。仕事から帰ると、夕方は決められた時間まで街頭で伝道活動、週末は「珍味販売」を行うなど、資金調達のためにも働いた。

「それまでキリスト教とは無縁だったので、『これがキリスト教だ』『聖書だ』と言われれば、それを全部うのみにしていました。皆、親切にしてくださるし、何も疑うことなく、これが『真理』だと信じていました」

農家だった実家からは、季節ごとに新鮮な野菜が届いた。泉山さんはそれを仲間たちと調理し、食事を共にしていた。

ある日、色紙に「泉山さんのご家族へ。いつもおいしい野菜をありがとう」という寄せ書きをして、ホームの友人とお礼の手紙を送ることになった。そこに泉山さんもメモ書きを添えた。

「私は今、キリスト教の教会に通っています。『統一協会』というところです。皆と元気にやっています。心配しないでください」

それを見た両親は「何かおかしい」と感じ、心配でたまらなくなった。そのうち実家にもあまり帰ってこなくなったため、両親が盛岡まで行き、生活感のないアパートを見て、そこで娘が生活をしていないことを悟った。

「実家に帰ってきて、一度話し合いを持つように」と両親に勧められ、最初は承諾したものの、「今は冷静に話し合うのは難しいだろうから、帰らない方がいい」と指導者に言われると、一転、強固に里帰りを拒否する。彼女にとって、すでに統一協会の教えや指示は絶対のものになっていた。

異端・カルトシリーズ(7)友人を信じて統一協会に 泉山三枝子さん
救出された元信者が置いていった600万円の弥勒菩薩像と数百万円の壺

そんな泉山さんに、親戚を巻き込んでの「救出活動」が実行された。「だまし討ち」にも似た方法ではあったが、そうして泉山さんは実家に帰ることになった。

両親は、「こんなことをして本当に申し訳ない。だますつもりはなかったんだ」と何度も謝った。しかし、かたくなになっていた泉山さんは、謝られてもどうすることもできない。反抗の意味もあって、食事には一切手を付けないようにした。

そんな状態が何日か続いたある日、統一協会からの救出活動を行っている和賀真也牧師の著書に長姉が出会い、わらをもつかむ思いで相談。統一協会被害が頻発していたこの時期、和賀牧師の元へは家族からの相談は絶えず、その時も山口県で救出活動に当たっていた。しかし、連絡を受けた和賀牧師は、本人が断食をしていると聞き、緊急性があると判断して岩手に直行。泉山さんの自宅近くの喫茶店で、本人から「牧師に会ってもいい」という了解が得られるのを待った。

和賀牧師が「空振りに終わるか」と思いつつ待っている間、家族は諦めることなく、いつ開くか分からない泉山さんの心の扉をノックし続けた。やがて少しずつ心を開いていった泉山さんは、ついに「別に誰と話してもいいけど」と言って受け入れたのだった。

和賀牧師はこれまでの経験から、「力づくで統一協会をやめさせようとするのは間違っている」と考えるようになっていた。そこで、部屋に通された和賀牧師は、本人がなぜこれほど頑張って信仰を全うしようとしているか、どんな生き方をしたいと思っているのかを家族に話し始めた。それを聞いた泉山さんは、「私が家族に対して何度も言ってきたことを代弁してくれている」と感じたという。そして、「お父さんもこの先生の話を聞いて」と自分から連れてくるほど、泉山さんは和賀牧師の話に同調していた。

「この人は、どうしてこんなに私の気持ちが分かるのだろう」と戸惑っていると、今度はその泉山さん自身に和賀牧師が問い掛けてきた。

「どうして統一協会の教えが真理だと思ったのですか」

「それは、原理を学んで、今までははっきりとしなかった自分と神との関係が分かるようになったからです。そして、漠然としていた聖書のことが理解できるようになり、この教えが確かなものだと思ったからです」

そこで、和賀牧師から次の質問が投げ掛けられた。

「統一協会は何を教典としているのですか」

「それは・・・聖書・・・です」

何が教典かなどと考えたことがなかった泉山さんは、忙しく思いをめぐらしながら、かろうじて答えた。

「そうですね。統一協会は聖書を教典としていますね」と言って、和賀牧師は統一協会の一般向け雑誌を差し出した。そこには、統一協会の信条として「私たちは旧・新約聖書を教典とする」と書いてあった。泉山さんは、「この出会いが、それまでいろいろなことを考えてこなかった自分に気付くきっかけになった」と言う。

2日間、泉山さんと話をした後、和賀牧師は再び山口に戻って行った。その時のことを和賀牧師はこう語る。

「話が終わってから、本人はおそらくさまざまに考えたことでしょう。この、自分で主体的に考えるというプロセスこそ、カルトからの解放の成否を決める不可欠な内面の営みなのです。統一協会内部でしばしばささやかれることに、『考えたらやっていけない』という言葉があります。『自分たちは罪人だから、正しい判断はできない。だから、考えてはいけない』と言って、考えることをやめさせる。実は『考えたらやっていけない』ほどの内情があの世界には満ちているのです。故に、考える人々はやがて問題に気付いてやめていくか、ずっと悩みながら歩むことになります。しかし、そのカルト集団を正しいと信じてしまって、その世界で生きようとする人は、いつの間にか考えないようになっていきます。つまり、思考停止状態で信仰生活を続けていくのです。気が付いた時には何年も過ぎ去っていて、その時間はもはや取り戻せません」

その後、泉山さんは、山口で救出された女性と共に和賀牧師の元で統一協会の検証作業を始めた。桜が美しく咲くある日のこと、聖書と原理講論の違いが示され、さらに次に進もうとすると、もう1人の女性がすっと立ち上がった。

「先生、もう十分です。原理は、1つの仮定の上に次の教義が成り立っています。間違いが1つでもあったら、次はないのです。もう分かりましたから」

そして、聖書を抱えると、「神様、ありがとうございました!やっと分かりました」と夕日に向かって叫んだという。

泉山さんはその後、何度か和賀牧師と共に統一協会に行き、問題点の確認をした。しかし結局、納得のいく答えは得られず、そのまま統一協会を脱会した。入信から2年後のことだった。

しかし、気掛かりなことが1つだけあった。それは、高校時代、仲良くしていた友人2人を統一協会へ誘い、入信させてしまったことだ。その後、彼女たちに会いに行ったが、統一協会側の警戒は厳しく、一度は会えたものの、再び会わせてはもらえなかった。

泉山さんは現在、和賀牧師がカルト問題に取り組んでいる「エクレシア会」の事務局スタッフとして働いている。今も彼女たちのことを祈り、考える日々だという。

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