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「ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー」にキリスト教宣教史と希望のバトンリレーを見た!

2016年12月26日23時10分 執筆者 : 青木保憲 印刷
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2012年にディズニーがジョージ・ルーカスからスターウォーズの権利を40億ドルで買い取った。これほどの金額の買い物は、映画史上例を見ないものだった。その話題性を数年保たせながら、昨年公開された「フォースの覚醒」は全世界で大ヒットを記録した。そして今後、このシリーズが永遠に紡ぎ出されることを決定づけた。

さらに今年12月、今後公開予定の「スターウォーズ正史(エピソード○)」とは別に、スピンオフ的な意味合いで「ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー」が公開された。これは正史EP(エピソード)3とEP4をつなぐ物語として、今までの7作品とは全く異なるアプローチで製作されたものだ。ちなみに再来年2019年には、ハリソン・フォードを一躍スターに押し上げた「ハン・ソロ」の若かりし日を描く物語も準備中である。

詳しい内容には現時点で言及しないが、見ていて強く感じたのは、物語の底流に「希望のバトンリレー」とでも表現できる福音宣教的要素がふんだんに盛り込まれていることである。今回は完全ネタバレなし、でこのメジャー映画を実践神学的観点からひもといてみたい(またやるの?という声に負けません!笑)。

主人公ジンに、“クリスチャンホーム”に生まれた子ども時代を重ね合わせた・・・

映画の主人公は、幼き日に父親と生き別れ、生きるために手段を選ばない女性、ジン。彼女は父の仕事(?)の関係で特殊な環境下に置かれ、別の名で生きることを余儀なくされる。そうなってしまった原因を、ジンは「帝国軍VS同盟軍」の戦争のせいにして成長する。

彼女にとっては優しかった父親との思い出が、唯一のかろうじて自分を保つ制御弁となっていた。やがて運命の歯車は、彼女が再び自分の出自と向き合わざるを得なくなることによって動き出す・・・。

物語の本筋は、1977年に公開された「スターウォーズEP4」に登場する最終兵器「デス・スター」の設計図を同盟軍のスパイが盗み出すというシンプルなもの。しかし、それをやり遂げる主人公が、戦争に深く関わりながらもその争いから背を向けるキャラクターであった、というところが映画として興味深いところである。

「自分で選んだ道ではないのに、そうせざるを得ない」という人生ほどつらいものはないだろう。このあたり、実は日本でキリスト教信者の家庭に生まれ、否応なしにその世界での処世術を身に着けさせられた「クリスチャンホームの子ども」と似通っていると思った。

訴えたいポイントをより理解してもらうためにも、私の生い立ちを話そう。私は、ペンテコステ系の教会に幼き頃より通っていた。正確に言うと、母に文字通り「引っ張られて」通っていた。その教会は米国からの宣教師が開拓した教会で、母たちはその中心的なメンバーであった。

「日曜日は教会へ行く日」という考え方に対して疑問を持ったのは、小学校に入って間もなくであった。さらに父がクリスチャンでなかったことから、家庭内にキリスト教をめぐって微妙な空気が流れることしばしばだった。

そして中高生ぐらいになると、どうして自分が「クリスチャン家庭の子」として生まれたのか、その運命を呪うようになっていた。唯一、うれしかったのはいつどんな状態であっても、やさしく接してくれた宣教師夫妻である。やがて年齢が進むにつれ、子どもの頃には分からなかったことが見えてきた。

特に興味を持ったのは、「ガイジンさん(宣教師)」がどうして日本にやってきたか、である。自分の人生を賭け、家族を伴ってどうしてこんな極東アジアの日本にまでやって来たのか。そのことに関心を持ち始めたときから、私は「キリスト教」とか「福音宣教」というものを客観視できるようになっていった。そして今、自分がかつて呪い、怒りをぶつける対象でしかなかったキリスト教を人に説く立場=牧師となっている。

受け継がれていく“希望のバトンリレーの灯”

そろそろ映画の世界に戻ろう(笑)。ほどなくして、ジンに決定的な転機が訪れる。彼女は優しかった父のメッセージを図らずも聞くことになった。そこで語られていた内容は、父の真意がどこにあったか、どうして自分の意に背いて帝国に協力せざるを得なかったか、であった。

彼はある「計画」を練っており、その遂行のために立ち上がる者が必要であることも語られていた。この「計画」が人々の希望であり、その灯を消さないために自分は家族にも犠牲を強いてしまったのだ、と・・・。これを聞いて、ジンの心に火が灯される。あれほど嫌っていた戦争に加わることを決意し、しかもこの「希望のバトンリレー」の灯を、父から自分が受け継ごうと決心する。

このあたりの展開は、なぜか自分のルーツを別の形で示されているような不思議な感覚に陥った。私もかつては自分の運命(クリスチャン家庭に生まれたこと)を呪っていた。しかし転機が訪れる。それは、学問としてのキリスト教=神学に出会い、そこで客観的にキリスト教の歴史を学んだことである。

すると、幼き日に「なんでこのガイジンさんは日本に家族でいるのだろう?」と漠然と抱いていた疑問が氷解していった。「宣教師」という仕事がどんなもので、どんな気持ちで「福音宣教」の働きを担うのかについて、19世紀末から20世紀にかけての米国教会史を学ぶことでやっと俯瞰的理解を得ることができた。

そういった視点であらためて「ガイジンさん」との関わりを見つめ直したとき、私は自分の目から涙があふれ流れることを止めることができなかった。そして自分もこの道で生きよう、と決心した。「ガイジンさん」から頂いた希望の灯を、他の誰かに伝えようと思えたのである。

映画では、このデス・スターの設計図を手に入れるため、多くの名もなき人々が犠牲となっていく。それは文字通りの「バトンリレー」であった。まず、どこに設計図があるか。それをどうやって味方に伝えるか。手に入れた設計図をどうやって味方の基地まで転送するか。転送されたディスクを奪おうとして、例のアノ呼吸音が近づいてくる(コーホーコーホー!その臨場感はたまらない!)。

それでも希望のバトンリレーは途絶えない。少しでも希望を先へ届けようとして、自ら屍(しかばね)の列に加わることも厭わない。誰からも称賛されない、どんな賛辞も届けられない。でもそれを自分がしなければ、果たさなければ、希望はとだえてしまう・・・。その市井の人々の懸命さに、熱いものが込み上げてくる。

本作は、確かにスターウォーズ・シリーズでは異色である。その最たるものが「スカイウォーカー家」が登場しないことである。フォースの使い手が「彼」以外は出てこない。つまり名もなき市井の人々の群像劇なのである。

主人公はジンだが、彼女だけにフォーカスを絞った作風にはなっていない。それを端的に表しているのが、このシリーズの決まり文句の改変である。

スターウォーズ・シリーズでは常に「メイ・ザ・フォース・ビー・ウィズ・YOU(フォースがあなたと共にあらんことを)」と語られている。つまりこれは、フォースの力を知っている者が、知らない者(あなた)へその力を付与する、開示する、そんな意味合いがある。そう考えてみると、スターウォーズ正史は全てフォースの使い手が主人公で、彼(または彼女)がそれを用いて人々のために行動していく、いうなれば「英雄列伝」となっているのである。

しかし本作は「メイ・ザ・フォース・ビー・ウィズ・US(フォースが私たちと共にあらんことを)」となっていて、上から下へスーパーパワーが流れるという構図ではない。むしろ自分も含めて、その力がいまだ与えられていないが、それが「ある」ことを信じて、そこに「希望」を持って一歩踏み出そう、という信仰者の掛け声に用いられている。これは福音宣教においても同じだ。

キリスト教宣教の歴史もまた「希望のバトンリレー」だった!

米国のみならず、世界から日本にやって来た宣教師たちは、福音宣教という同じ「希望のバトンリレー」に信仰を持って参画した者たちである。彼らも名もなき市井の人々である。有名な伝道者、牧師は本国で大きな働きをなしている。本を出版したり、テレビやニュースに取り上げられたりする。

しかし、宣教師は本国でどれだけ名声を得ていても、その国では「名もなきガイジンさん」である。イエス・キリストの福音を目の前の1人に届けるために、そのバトンリレーに加わった者は、その学歴や教団教派は関係ない。あるのは、これを少しでも多くの人に届けたいという熱意と信仰である。

映画は、そのバトンリレーがついに届くべき人の手に届けられて幕を下ろす。その続きはすでに39年前に語り終えられている。文字通り全世界を熱狂させたSF映画の金字塔、「スターウォーズ」第1作(EP4)である。そういう意味で、本作「ローグ・ワン」は「希望のバトンリレー」というテーマを、EP3とEP4をつなぐという自らの役割を通して、きちんと提示できていると言えよう。

この年末年始、福音宣教という実践神学的視点から本作を見てみるなら、きっと多くの刺激を受けることだろう。お勧めです!

青木保憲

青木保憲(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院を卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科卒(修士)、同志社大学大学院神学研究科卒(神学博士、2011年)、現在は大阪城東福音教会(ペンテコステ派)牧師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(2012年、明石書店)。

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