祈りがかなえられないことの幸い 渡辺和子さんの最後の著書『どんな時でも人は笑顔になれる』

2017年11月14日06時55分 記者 : 守田早生里 印刷
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+祈りがかなえられないことの幸い 渡辺和子さんの最後の著書『どんな時でも人は笑顔になれる』
渡辺和子著『どんな時でも人は笑顔になれる』(PHP研究所)
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本書は、ノートルダム清心学園理事長の渡辺和子さんが2016年12月30日、89歳で帰天する10日前に校閲を終え、今年3月に出版された最後の著書。

シスターが人生の出会いの中で教えられてきた大切なことをつづった既刊著書の中から、「いま改めて伝えたいこと」が厳選され、読みやすくまとめられている。200万部を超えるベストセラー『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎)の出版から4年後、シスターが最後に遺(のこ)した言葉とは、いったいどのようなものだったのだろうか。

本書のテーマは、祈りがかなえられない意味。

「はじめに」でも、子どもの幸せを祈ったのに、進学や就職の失敗、病気などで落胆し、失望することが多い人生の現実に触れる。しかし、その時の「切なさ、つらさこそが、実は人間が成長してゆく上で『本当にたいせつなもの』『必要なもの』だったのだと、いつか必ず気づく日がある」とシスターは言う。

1927年、北海道旭川市で生まれたシスターは、冬の「すべてを浄化するような寒さ」が好きだという。父親で当時の陸軍教育総監だった渡辺錠太郎(じょうたろう)が2・26事件で銃弾に倒れたのも、大地を純白の雪が覆った寒い冬の日だった。

人生の冬、それは必ずしも秋の次に来るとは決まっていませんし、三カ月くらい続くものとも限りません。・・・(履歴書で)もっとたいせつなのは、書くに書けない「苦歴」とでもいったものではないでしょうか。・・・文字に表わすことのできない苦しみの一つ一つは、乗り越えられることによって、その人のかけがえのない業績となるのです。(32~34ページ)

シスターは幼い頃に目の前で父親が殺害されるのを目撃し、その後、18歳で受洗。29歳でノートルダム修道女会に入会し、36歳という異例の若さでノートルダム清心女子大学の学長に就任した。

それまでシスターは、丈夫で健康なのが当たり前と思って、人を厳しく見ることもあったという。ところが、多くの苦労を重ねる中で、50代の約2年間、うつ病で苦しむことに。その間も、学校での授業や仕事は何とかこなしていたものの、常に「私にはその資格がない」という自信のなさがつきまとう。

しかし、つまずいたおかげで見えてきたものもあった。責めることなく、弱い人にも心を注ぐことができるようになったのだ。

「費用対効果」などの言葉に代表されるように、経済的にいかに効率よく生きるかが求められる時代の中で、「待つことの大切さ」についてもシスターは語る。

お金にならない時間、得にならない時間、その意味では無駄と思える時間の中にしか愛情は育たない・・・。待たないですむ人生などありはしないのです。そうだとしたら、待つことの意味も知らなければならないでしょう。(56~57ページ)

「待つこと」は急ぐことよりも案外難しいのかもしれない。実は待つことへの恐れから、私たちは自らを急がせているだけなのではないだろうか。そんな私たちにシスターは「愛をこめた時間は、無駄にならない」と優しく語り掛ける。

また、「なぜ祈るのか、祈りは叶(かな)うのか」の項でシスターは、私たちが時に祈りに対して感じる疑問を次のように挙げている。

「もし私が祈ったことが全部叶えられたら、どうなるのだろう」「神様のお役目というものは、人間の願いを全部叶えることなのだろうか」・・・「いくら祈っても、所詮(しょせん)、神はご自分の好きなようになさるのだとしたら、祈っても、祈らなくても同じではないか」

その上でシスターはキリストの言葉を紹介する。

「求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる」(ルカ11:9-10)

ところが、さすがにシスターの見方は深い。「この言葉には、求めたそのものが与えられると約束されていませんし、捜したそのものが見つかるとも約束されていません」と指摘した上で、その後に続く「魚を欲しがる子供に、魚の代わりに蛇を与える父親がいるだろうか」(11節)という言葉に注目する。そして、「求めたものの『代わりに』何かをくださる可能性があることが示唆されています」として、神が人間の願いをそのままかなえることを自分の愛の証しとなさらないのは、「私たちはいつも“欲しいもの”を願っているからであり、神様が私たちに叶えてくださるものは、“必要なもの”だから」とシスターは言うのだ。

シスターが最後に書き記した言葉は、「自分にしか咲かせられない花を、どこに置かれても、精いっぱい咲かせよう」。

シスターにとって「花の人生」とは、幼いの頃は、きれいなお嫁さんになること、10代後半は戦時中なので、平和でおなかいっぱい食べられること、20代は、華やかに若さを奔放に生きることだった。しかし、いつしか健気(けなげ)に咲く「一輪の花」として生きることに変わってきたという。そこには、有名な「置かれた場所で咲きなさい」という詩との出会いがあった。

花の使命は咲くことにあります。他の花と比べて優劣を競うことにもなければ、どこに置かれるかにもなく、自分しか咲かせられない花を一番美しく咲かせることにあります。(140ページ)

最後は人生を花にたとえたシスター。その死を惜しむ声は今も絶えないが、シスターは天でも精いっぱい、それゆえに美しく花を咲かせていることだろう。

渡辺和子著『どんな時でも人は笑顔になれる』
2017年3月29日初版
144ページ
PHP研究所
1000円(税別)

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