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「となりびとに愛の手を」 フードバンクNPO法人「いのちのパン」

2016年12月29日11時42分 記者 : 中橋祐貴 印刷
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となりびとに愛の手を フードバンク団体NPO法人「いのちのパン」
家の教会のメンバーが中心となって行うフードバンクNPO法人「いのちのパン」。信頼し合う仲間たちと手際よくパンを袋詰めしていく=11月5日、港南ハートフル「家の教会」で

私たちは食料品を集め、必要のある方々にお配りする「フードバンク」団体です

2011年3月11日に発生した東日本大震災を受けて、すぐに発足した復興支援団体「ホープみやぎ」(代表・大友幸証=ゆきまさ=牧師)。同団体は、被災地の真ん中に位置する塩釜聖書バプテスト教会(保守バプテスト同盟、大友幸一牧師)を拠点として始まった。世界中から参加したボランティアと共に、津波の被害を受けた家屋の清掃活動、物資配布、炊き出しを行ってきた。宮城県の多賀城市、東松島市、仙台市若葉区、宮城野区、亘理町、南三陸町を中心に活動している。

多くの仮設住宅が閉鎖され、被災者支援終了後の新たな活動のために、2014年にフードバンクを中心としてNPO法人を組織した。それが「いのちのパン」だ。

フードバンクとは、食べられるにもかかわらず、何らかの理由で廃棄される食料品を企業、農家、地域の協力で分けてもらい、食べ物がなくて困っている生活困窮者、支援を必要とする世帯に届ける活動。全国的に普及しつつある取り組みだ。

「いのちのパン」では、生活困窮者、独居高齢者、福祉施設を中心に、災害後の支援活動の一環として取り組んでいる。キリスト教精神に基づく明確なビジョンを持って行われており、行政や地域での信望も厚い。

となりびとに愛の手を フードバンク団体NPO法人「いのちのパン」
フードバンクの支援先に配るパンを提供しているコストコ富谷倉庫店

「いのちのパン」は、「となりびとに愛の手を」(キリスト教の隣人愛の精神)を理念に、台湾のキリスト教災害支援団体「中華基督教救助協会」と米国の宣教団体「SEND国際宣教団」の支援を受けて発足した。

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仙台若林東地区担当の大友恒雄(つねお)さんは、妻のまり子さんとコストコからパンを受け取り車へ積み込む。「今日は特に多いですね」。たくさんのパンを受け取ることができた。
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後部座席いっぱいに積まれたコストコ提供のパン

塩釜聖書バプテスト教会の仙台若林東地区を開拓伝道する「家の教会」でリーダーを務め、「いのちのパン」で副理事長を務める大友恒雄(つねお)さんと妻のまり子さん、協力宣教師として活動に関わっているリン・ティナ宣教師の1日の活動に同行させてもらった。コストコから大量のパンが提供され、2台の車に積み込んで高速道路を使い、仙台東地区に向かった。

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大友恒雄さんがリーダーを務める「家の教会」(港南ハートフル)には、続々とスタッフが集まってきた。家の教会のメンバーたちだ。
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大友さん(写真左)とメンバーの松本さん

手際よく黙々と支度を進める。支援物資は津波の被害を受けた被災者を中心に届けられる。震災から5年が過ぎ、今年の4月に仮設住宅は完全に閉鎖された。被災状況や収入に応じて、国からの保証も異なるという。仮設住宅から復興公営住宅や家々に散らばった元・住人たちを「いのちのパン」は戸別訪問して「人と人のつながり」を継続しているのだ。

大友さんと松本さん(「家の教会」のメンバー)は、2人で協力しながら一軒一軒、配布先の家を訪問する。チャイムを押すと玄関が開き、住民が出てくる。「こんにちは。お変わりありませんか?」。ちょっとした一言が、実はとても大事だと大友さんは語る。

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大友さんと松本さんは、親身になって戸別訪問先でさまざまな声に耳を傾けていた。「小さなことに忠実な方」と周囲からも信頼されている。
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大友さんは自宅を開放し、「家の教会」として地域に仕える。「いのちのパン」の仙台東部の拠点となっている。

大友さんも同じ被災者だ。かつては仙台市井土浜地区で暮らしていた。震災で命からがら、地域住民を助けながら避難した経験を持つ。あまりに悲しい惨状を多く見てきた1人だ。「102世帯の中、38人が津波で亡くなりました」と語る。

大友さんは「この地域に伝道をしたかったが、津波のあった場所に皆戻ってくるだろうか」と語る。現在、国の災害復興支援で新しい住居を構え、「家の教会」として自宅を開放している。旧・自宅は、津波でほとんど壊れてしまったのだ。

自身も被災者でありながら、震災直後は避難所を回り、知人や教会員の安否確認に尽力した。「隣人愛が全ての動機」と温かな笑顔で語る。

家族を亡くした人、当時の惨状で心の傷が癒えない人、そのような中で生活苦にある家族。被災者は皆、それぞれの課題、悩みと向き合っている。見た目は復興が進み、震災直後の面影はほとんど見られなくなった。この溝を埋めるのも「いのちのパン」の働きの1つだ。

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大友さんは「塩釜聖書バプテスト教会は地域に出ていく教会です。今までの歩みは今日(震災後支援)のための訓練だったと思っています」と語る。

80代の男性を訪問した。大友さんから、「この方は、3・11の津波で奥さんが目の前で流されてしまいました。自宅は海岸から3キロも離れた場所でしたが、1メートル以上の津波が襲いました」と説明を受けた。

パンを配りに行く前に、必ず電話で確認してから届けに行くが、不在だった場合はメモを添えて所定の場所に置いてくる。「配る時間帯もポイントですね」。試行錯誤しながら行っているという。「継続することの大切さ」を感じた。

受け取った人が本当にうれしそうにする姿を見て感動を覚えた。「イベントのチラシを渡しています」。大友さんは教会の布教活動は行わない。地域の方の「いのち」をつなぐために、喜んでいただけることを紹介していくのだ。今も続く被災地の地道な活動に、私たちはどう向き合っていけばよいのだろうか。関心を持ち続けたい。

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港南ハートフル「家の教会」。代表の大友恒雄さん(写真右)、まり子さん(左から2番目)、教会のメンバーたちと。SEND国際宣教団・塩釜聖書バプテスト教会協力宣教師のリン・ティナ宣教師(左手前)。
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ホープみやぎのフードバンク団体が「いのちのパン」だ。
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「元気にしていますか?変わりはありませんか?」と温かく声を掛けていく。このつながりこそがとても大切なのだと語る。
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「留守だった場合は一言メッセージを書いて指定の場所に置いていきます」。大友さんと松本さんは、温かな配慮を忘れない。
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ちょっとしたメッセージを添えて留守の家に手紙を置いておく。つながり続けることの意味を感じる。心の支援、心を届けるという意味が分かった。
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海岸から4キロも離れた今泉地区。大友さんによれば、「遠くに見える白い高速道路があります。あの向こうは2メートルの津波が襲いました。高速道路があったので、この辺りは田んぼが濡れる程度の津波で済みました」。それでも生々しい当時の傷跡が残っている。

大友幸証牧師のインタビュー

となりびとに愛の手を フードバンク団体NPO法人「いのちのパン」
塩釜聖書バプテスト教会副牧師・大友幸証(ゆきまさ)さん。4児の父であり、明るく、とても優しい先生と慕われている。取材日前日は仙台ゴスペルフェスタに出演し、力強く賛美を歌った=11月6日、ホープみやぎで

大友幸証さんは、塩釜聖書バプテスト教会で副牧師を務め、「ホープみやぎ」代表、そして「いのちのパン」副理事長を兼任する。広い視野と豊富な経験を生かし、次世代のキリスト教界をリードする。災害後の地域、日本伝道に強い使命を持つ牧師だ。主任牧師の幸一さんの息子に当たる。

大友さんは、「『いのちのパン』は、行政の手が届かないところをつなぐ活動です。おのおのが教会にしっかりと根差して行っています。被災者は震災から5年が過ぎて国から借りているお金を返さないといけないという現実と不安を突き付けられています。それでも、皆さんはつらい事を笑いながら隠すのです。塩釜市役所と連携が進み、行政とはより良い協力を続け、今後は企業からの食料の提供、サポートも拡大していきたいです」とさらなる支援の必要性を語った。

東日本大震災は多くの人に悲しみ、苦しみ、傷を残した。いまだ癒えることのない人々の声とは裏腹に、表面上の復興は進み、被災者は「心が追い付かない」葛藤と戦う。教会から始まった「隣人愛」の実践がフードバンクという形となって、教会が地域に仕えることで、多くの人に本当の希望と愛を伝えていくことができるのだ。私たちの理解と関心、現場への支援は欠かせない。

となりびとに愛の手を フードバンク団体NPO法人「いのちのパン」
東松島市高台の公園から望む美しい東松島の風景。東北の地に本当の希望が伝わることを心から祈る。

(注:プライバシー保護の観点から、取材した被災者の氏名、住所は掲載しません。撮影許可は頂いています)

■ 取材協力

塩釜聖書バプテスト教会(大友幸一牧師)
大友幸証牧師、大友恒雄さん、まり子さん、松本さんご夫妻、「家の教会」のメンバーの皆さん、センド国際宣教団リン・ティナ宣教師、被災地の住民の皆さん。

フードバンクNPO法人「いのちのパン」ホームページ
フードバンク活動に協力する企業、団体、個人を募集している。

復興支援団体「ホープみやぎ」ホームページ

保守バプテスト同盟塩釜聖書バプテスト教会ホームページ

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