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死刑制度を考える「赦し その遥かな道のり」上映会 VIPプリズム

2016年12月20日11時33分 記者 : 守田早生里 印刷
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+死刑制度を考える「赦し その遥かな道のり」上映会 VIPプリズム
講演を行った阿部仲麻呂神父。映画鑑賞と講演会が先月27日、東京都千代田区の麹町カトリック教会(聖イグナチオ教会)の一室で行われた。参加者は、時折涙をぬぐいながら、映画を鑑賞した。
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一度でも間違いを犯した人々は、もう立ち直ることもやり直すこともできないのか。法で定められた受刑期間を終え、出所してきた彼らを待っているのは、「無関心」を装ういわゆる「一般社会」。その社会に放り投げられた彼らは、「元受刑者」という肩書を一生背負って、日の当たらない場所で静かに暮らしている。

3回の服役経験がある五十嵐弘志さんは、刑務所の中でキリストと出会い、人生を変えられた。現在は、刑務所から出所した人々の支援や、受刑中の人々と文通などを通して更生へと導く活動をするNPO法人マザーハウスの理事を務めている。五十嵐さんが代表を務めるVIPプリズムでは、毎回、多方面からゲストを招き、社会問題について参加者と共に考える機会を設けている。

東京都千代田区の麹町カトリック教会(聖イグナチオ教会)で11月26日に行われた集会では、韓国のカトリック教会が制作に協力した映画「赦(ゆる)し その遥(はる)かな道のり」の上映会の後、サレジオ会司祭の阿部仲麻呂神父が講演を行った。

映画は、2007年12月に韓国のテレビ局がクリスマス聖誕特番として製作したドキュメンタリー番組に内容を加えて、映画化したもの。衝撃的なシーンや誰もが見ほれるような絶景シーンが出てくるわけではない。どちらかといえば、ホームビデオで撮影したかのように、人々の普段の生活、そのままの感情を映像にのせた作品になっている。

この映画は2003年から2004年にかけて韓国国内で起きた殺人事件の被害者を追った内容になっている。21人を10カ月の間に次々と殺害したこの事件。その残忍さに韓国国内は震撼(しんかん)とした。映画に登場するのは、21人の被害者家族の一部と彼らを支えるカトリック神父。

愛する妻、母、そして息子と何不自由なく暮らしていたコ・ジョンウォンさん。結婚して、家を離れた娘が2人いる。取り立てて華やかな暮らしではなかったが、人並みの幸せを手に入れていた。しかし、その幸せな生活が事件によって、一変してしまった。

ある日、コさんが仕事先から家に帰ると、家のあちこちで無残な姿で横たわる3人の家族の姿があった。急いで救急車を呼ぶも、全員死亡。1年後に逮捕された犯人は、全く面識のない「赤の他人」だった。通り魔的な殺人だったのだ。

一方、貧しい父子家庭に暮らす男性は、4人兄弟の一番上の兄を殺害された。次男は、長男の殺人事件を機に鬱(うつ)病を発症、自ら命を絶ってしまった。四男の弟も、後を追うように自殺。残された三男と年老いた父。3人の兄弟を1年のうちに失ったこの男性の怒りは、日々募っていった。

現場検証に、警察と報道陣と共に訪れた犯人を前に、ポケットに包丁を忍ばせて殴り込みに向かったのだ。警察官に取り押さえられ、犯人に接触することも、直接手を下すこともなかったが、犯人を目にした彼は「兄貴を殺しやがって!!お前もぶっ殺してやる!」と叫びながら、報道陣をかき分け、向かっていった。

3人の家族を殺害されたコさんは、家族を失った喪失感から、浴びるように酒を飲んでみたり、自殺を考えたりもした。しかし、殺害した犯人を「赦(ゆる)す」選択をすることによって、憎しみから解放され、生きる勇気を見いだした。

彼は、死刑廃止を訴え、家族を殺害した犯人の死刑判決を撤回するよう行動を起こした。犯人に手紙を送り、面会を申し出たが、面会が実現するには至らなかった。コさんを支えたのは、カトリック教会の神父たちであった。時に、酒を酌み交わし、泣き叫ぶコさんをただただ抱きしめ、共に涙を流した。

映画は、「死刑反対」を直接訴えるものでも、死刑制度そのものを称賛するものでもない。遺族を追ったドキュメンタリーを見ることで、一人一人がどう考え、どう行動を起こすかに焦点を絞っている。

日本語版は、女優の竹下景子さんがナレーターを担当し、2010年ごろから、全国各地の有志によって、各所で上映されている。

この日、講演を行った阿部仲麻呂神父は、聖書の御言葉からルカ7章47節、「だから、言っておく。この人が多くの罪を赦されたことは、わたしに示した愛の大きさで分かる。赦されることの少ない者は、愛することも少ない」を引用した。

「赦しは、一人一人の人生の中に多かれ少なかれ、あるでしょう。その痛みは1人ずつ違う。しかし、このように聖書は教えている。自分の家族を殺されるという極限の中で、これは酷なことかもしれないが、日々、祈ることが必要」と語った。

また、参加したカトリック「サレジアンシスターズ」のシスターは、「死の直前に敵を愛し、赦し、祈ったイエス様を思うとき、私たちの赦しの力による希望があると思う。人間ではなし得ないことをされるのがキリストの愛なのです」と話した。

VIPプリズム代表の五十嵐さんは、「この映画は、少年院や刑務所でも上映すべきだと考えている。『一生かけて償う』とする加害者たちに、被害者の生の声を届けて、自分たちがどう反省し、どう考えるべきかを訴えていくのも私たちの仕事の1つだと思う」と話した。

五十嵐さんが理事長を務める「NPO法人マザーハウス」では、刑務所からの出所者、少年院から退院した少年などを更生させるための働きをしている。現在、数人の出所者を五十嵐さんが担当し、生活を立て直している最中だ。

収入がゼロに近い出所者も多く、マザーハウスでは、献金とともに、献品を募っている。洋服(特に冬物。サイズは問わないが男性物のみ)、タオル類、石鹸、その他日用品、レトルトの味噌汁やお米など。宛先は、以下の通り。

〒371-0017
群馬県前橋市日吉町2-13-8 カームハイツ303
NPO法人マザーハウス前橋

問い合わせは、電話:080・4112・0068。

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