Skip to main content
2025年9月17日20時04分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 書籍
神学書を読む

神学書を読む(4)『入門講義 キリスト教と政治』②

2016年10月27日16時53分 執筆者 : 青木保憲
  • ツイート
印刷
関連タグ:青木保憲
これだけは読んでみたい神学書(4)『入門講義 キリスト教と政治』その1+
田上雅徳著『入門講義 キリスト教と政治』(2015年、慶應義塾大学出版会)

キリスト教と政治という、一見すると水と油のようなものが、実はコインの裏表であったことに気付かせてくれるのが本書である。その後編として、宗教改革以降のキリスト教と政治の在り方を本書に沿って紹介してみたい。

ルターの宗教改革の「宗教の非政治化」は同時に、政治を宗教の拘束から解き放った

宗教改革というと、プロテスタントの始まりということになり、とかく神格化されやすい。本書第9章では、ルターの実像と、彼を周囲の人々がどう受け止めていったかの切り分けがきちんと行われている。そして両者に共通し、歴史を大きく突き動かしていく要素として「聖書主義」と「信仰義認」を取り上げている。

ルターと聞いて上記の2つを思い浮かべることは、私たちにはできる。世界史の授業で習ったり少し専門的な書物を読むなら、それについての解説は必ず書かれているだろう。しかし、それが欧州社会をどのように導き、その結果、どんな政治的形態を生み出していったかについて、ここまで深く切り込んだ解説を聞く機会はなかったように思う。それは、本書164~165ページにクライマックスを迎える。

「考えてみるとルターという人は、福音主義という理念を掲げつつ、『宗教の非政治化』を目指そうとした、といえる。(中略)けれども、ここでの『宗教の非政治化』は『政治の非宗教化』を伴っていた。すなわち、16世紀にあって宗教家が『既存の世俗的な政治秩序に私は口出ししない』と宣言するとき、政治権力は、宗教が説く規範の拘束から脱するチャンスを得たのである」

ルターを神格化したり超人間的な存在に置くなら、宗教改革はプロテスタントにとって輝かしい出来事以外の何物でもないことになる。しかし現世に生きる人々の営みを「政治」というある種冷徹な観点から見るなら、ルターの行状は結果的に政治権力を宗教的な拘束から解放し、自らの欲望のままに生きる道を開いたことになってしまう、と著者は述べているのである。ここに、宗教的熱狂によって歴史をゆがめてしまう愚を犯すことなく、アカデミズムに立脚し続ける論考を見て取ることができる。

10章から12章までは、ルターが切り開いたプロテスタント的世界観をどのように受け止めてきたかを、欧州中心に描いている。このあたりも、世界史のマッチング問題で苦闘したような単語の結び合わせではなく、ルターの主張を後の人々が検証し、その中のどこを強調して受け止めてきたのか、逆に反論したり反動形成を生み出してきたか、について述べられている。

このあたりから、政治的な概念が次第に神学的なそれと結び合わされて、若干内向的(哲学的)に振れているように思われる。それは著者の叙述傾向というよりも、むしろ欧州での新神学(リベラル神学)の特質がこのような内向的なもの(あるいは宗教が「心の中の問題」になった)故であろう。神学的専門用語が随所にちりばめられているため、初心者には少々骨が折れる箇所である。しかし何度も読み返すことで、歴史の表舞台を動かしてきた人々の内面の動機づけを知ることができるため、とても有用であることは変わりない。

理念によって国家は建設できるのか?という壮大な問いとしての米国

この雰囲気が、13章からはかなりアクティブなものになっていく。ピューリタンたちが新天地を求めて米国へ渡るくだりである。ここで、理念によって国家は建設できるのか、という壮大な実験に彼らは挑むことになる。そして再び、「共同体」という概念が呼び起こされることになる。

これは、本書が旧約聖書の中の政治形態に言及したときに取り上げた概念である。これが17世紀に再び取り上げられることで、米国という国家がいかに宗教色強いものであるか、さらにそのような国家の中で、いかにして政治は発展することになるのかが、第14章のテーマとなっている。

著者が米国におけるキリスト教と政治の在り方を論じることで、本書を閉じたのはなぜであろうか? それは単に世界の最先端に米国が位置しているという意味ではない。実は米国こそ、宗教的な理念と世俗的な現実との相克(そうこく)をはっきりと示してきた国は他に類を見ないからである。本書の最後はこんな言葉で締めくくられている。

「本書が取り扱ってきたキリスト教は二千年におよぶ歴史を持つ。そしてこの宗教がかくも長き時間にわたって命脈を保ちえたのは、それが、特にその聖典(聖書)が特定の政治的立場に回収されない豊かで深みのある教説を保持してきたからに他ならない。戦後アメリカの例にあったように、時代は時代ごとにこの宗教と聖書から、まさに当の時代が必要とするメッセージを取り出してきた」

そして冒頭に書いたように本書においては「政治的な事柄」として語られてきたことが、実は聖書をどのようにこの地上に実現するかという人間の営みであり、同時にどうやって聖書やキリスト教的な縛りから解放されて現実に適した指針を導き出せるかという、人々の葛藤のドラマだったと結論付けられている。

そういった意味で本書は、政治学のテキストであると同時に、まさに神学的なテキストと言うことができる。ちょうど車の両輪のように、一方に政治、一方にキリスト教(宗教)が位置付けられている。双方が並び立つことで、現実的な社会が動き始めるのである。

このような形態は、欧州や米国だけでなく、実はアジアにおいても十分機能している。言い換えるなら、このような研究方法は、キリスト教世界だけに留まらず、どんな宗教、どんな国家の政治的推移を考察するためにも援用可能なものであると言えよう。

秋の夜長、じっくりと1日1章ずつ読み進めていくことをお勧めする。そして各章のまとめや感想を書き留めていくことである。すると2週間(14章)の果てに、あなたが無意識に抱いていた世界観を自覚することができ、その環境で生きる私たちのアイデンティティーをあらためて認識することができるであろう。

田上雅徳著『入門講義 キリスト教と政治』(2015年、慶應義塾大学出版会)

<<前回へ     次回へ>>

◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科修了(修士)、同志社大学大学院神学研究科修了(神学博士)。グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(明石書店、12年)、『読むだけでわかるキリスト教の歴史』(イーグレープ、21年)。

関連タグ:青木保憲
  • ツイート

関連記事

  • 神学書を読む(3)戦国時代とキリシタン史から現代の宣教のヒントが見えてくる!?②『概説キリシタン史』

  • 神学書を読む(3)戦国時代とキリシタン史から現代の宣教のヒントが見えてくる!?①『戦国と宗教』

  • 神学書を読む(2)トランプ現象を前に『反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―』

  • 神学書を読む(1)キリスト教から米国が見えてくる『宗教からよむ「アメリカ」』

  • 【書評】ハンス・キュンク著『キリスト教は女性をどう見てきたか―原始教会から現代まで―』

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 「日本イスラエル・クリスチャン交流会」が発足、世界62カ国に広がる議員ネットワーク

  • キリスト教に回心したウィキペディア共同創設者、所属教会を発表

  • 米保守派活動家で熱心なクリスチャンのチャーリー・カーク氏、イベント中に射殺される

  • 今の自分のままで幸せだと気付こう 菅野直基

  • 「聖書を読まなかったら、今の自分はない」 元ヤクザの進藤龍也氏と山崎純二氏が対談

  • サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(28)ニコラス司教逮捕される

  • イエスの統治を祝う祭典「ジーザス・レインズ」が10周年 ラップ賛美など新しい試みも

  • 「日本イスラエル・クリスチャン交流会」が発足、世界62カ国に広がる議員ネットワーク

  • 米保守派活動家で熱心なクリスチャンのチャーリー・カーク氏、イベント中に射殺される

  • キリスト教に回心したウィキペディア共同創設者、所属教会を発表

  • 「世界で最も優しい裁判官」 フランク・カプリオさん死去、敬虔なカトリック信者

  • イエスの統治を祝う祭典「ジーザス・レインズ」が10周年 ラップ賛美など新しい試みも

  • 「聖書を読まなかったら、今の自分はない」 元ヤクザの進藤龍也氏と山崎純二氏が対談

  • 石破茂首相が退陣表明、15年ぶりのクリスチャン首相

  • 「信教の自由を脅かす」 旧統一協会の解散命令巡り特別集会、西岡力氏らが登壇

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(12)「苦しみ」から「光」へ 三谷和司

  • 新しい発見 佐々木満男

  • 「世界で最も優しい裁判官」 フランク・カプリオさん死去、敬虔なカトリック信者

  • 米保守派活動家で熱心なクリスチャンのチャーリー・カーク氏、イベント中に射殺される

  • 「日本イスラエル・クリスチャン交流会」が発足、世界62カ国に広がる議員ネットワーク

  • 石破茂首相が退陣表明、15年ぶりのクリスチャン首相

  • 「信教の自由を脅かす」 旧統一協会の解散命令巡り特別集会、西岡力氏らが登壇

  • 牧師を辞めた理由は? 元牧師730人を対象に調査 現役牧師や信徒へのアドバイスも

  • キリスト教に回心したウィキペディア共同創設者、所属教会を発表

  • 「聖書を読まなかったら、今の自分はない」 元ヤクザの進藤龍也氏と山崎純二氏が対談

  • イエスの統治を祝う祭典「ジーザス・レインズ」が10周年 ラップ賛美など新しい試みも

  • ウェールズ聖公会、首座主教にレズビアンの女性主教選出 保守派からは強い批判の声

編集部のおすすめ

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • 「罪のない赤ちゃんを殺さないで」 東京でマーチフォーライフ、中絶の問題を訴え

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.