聖書をメガネに 聖書翻訳の課題―委員会訳と個人訳― 宮村武夫

2017年8月12日12時12分 コラムニスト : 宮村武夫 印刷
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本紙は、今年集中して取り組むべき重要課題として、次の3つを取り上げました。第一は宗教改革500年、第二は聖書翻訳、第三はメディア宣教です。

第一は、今年が宗教改革500年であることから、取り上げられるのはごく自然といえます。また、第三のメディア宣教は、本紙がさまざまな制約の中で、宣教のためにメディアがどのような役割を果たすべきか、また果たせるかを探り続けている歩みにおいて1つの大切な節目を通過しつつあると自覚する中で、それなりに必然性があります。

この第一と第三を結ぶ要となる課題が、第二の聖書翻訳と理解します。聖書と聖霊の導きによって、教会が本来の教会として改革され続ける。500年前の宗教改革を今日、この日本で継承するためには、日本語翻訳聖書を教会員が日々に読み続け、従い続けていくことは不可欠です。日本語聖書翻訳の課題を抜きに、日本の教会が宗教改革を記念することは無理です。

今日日本におけるメディア宣教の実践は、これまた日本語翻訳聖書の根本的重要性をわが事として取り組むことなしに困難です。メディアが伝達しようとする中身、メッセージの基盤は日本語翻訳聖書であり、どんな日本語翻訳聖書に基づくかは、メディア宣教を決定的に左右します。

以上の課題に直面している中で、1つの大切な手引きが手元にあるのに気付きました。それは、加藤常昭先生の文章「礼拝論のパースペクティヴにおける聖書翻訳―委員会訳と個人訳―」です。2013年に説教塾紀要編集委員会が発行した「説教 説教塾紀要 第14号」に掲載されたものです。加藤先生から、2013年4月3日に恵送していただいておりました。

何よりも第一の点は、聖書翻訳の課題が、ただ聖書言語や翻訳の専門的な課題であるばかりでなく、礼拝論の立場からも検討する責任があるとの指摘と実践です。

聖書翻訳に直接従事する方々の専門的な努力の積み重ねがいかに重要であるかは、どれほど強調しても強調しすぎることがない事実は明らかです。

しかし、それにもかかわらず、聖書翻訳に直接従事する方々だけに聖書翻訳をめぐる責任があるのではない。礼拝論の切り口からの責任の自覚と応答の実証を見ます。そしてそれは、聖書翻訳を利用し、活用する1人の聖書読者の責任への呼び掛けとなります。特に、メディア宣教に従事する者として、私なりに聖書翻訳への責任の自覚を問われ、応答を求められます。

今の時点で、加藤先生の文章の副題が、私に大きく2つの方向を指し示します。

1つは、「委員会訳」の位置と実態です。特定の立場でなく、広く全体性を視野に入れた統一を求める方向です。

数年前、日本同盟基督教団招待キリスト教会の趙南洙(チョ・ナムス)先生が拙宅を訪問くださったときにお聞きした、実に印象的な報告が私の心に焼き付いています。豊かな多様性を持つ韓国教会が、なお1つの統一された韓国語翻訳聖書を用いているとのこと。新共同訳でなく新改訳を使い続けてきた者として、韓国の実態について具体的に教えていただきたい、学びたいのです。これは今後の課題です。

もう1つは、「個人訳」の役割、親しみやすさです。私自身も、前田護郎訳を長年愛読、時に応じて活用してきました。

委員会訳は、個人訳の必要を否定するものでも、その活用を無視するものでもない。同時に個人訳は、唯一の委員会訳との理念を無視するものでも否定するものでもない。今の時点で、この平凡な事実を、10代の終わりにおける竹森満佐一先生との出会い以来親しみを覚え続けてきた加藤常昭先生から、あらためて教えられました。

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宮村武夫

宮村武夫(みやむら・たけお)

1939年東京深川生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部(組織神学)修了。宇都宮キリスト集会牧師、沖縄名護チャペル協力宣教師。2014年4月からクリスチャントゥデイ編集長、17年4月から同論説主幹。

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