赤ちゃんの命を受け止めるには 千葉茂樹氏と永原郁子氏による講演会「赤ちゃんの命のバトン」

2017年5月15日16時52分 記者 : 守田早生里 印刷
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+赤ちゃんの命を受け止めるには 千葉茂樹氏と永原郁子氏による講演会「赤ちゃんの命のバトン」
マナ助産院(兵庫県神戸市)院長の永原郁子氏=14日、主婦会館プラザエフ(新宿区四ツ谷)で
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思わぬ妊娠で揺れる母親と赤ちゃんの命を考える講演会「赤ちゃんの命のバトン」(日本カトリック医師会主催)が14日、主婦会館プラザエフ(新宿区四ツ谷)で開催された。

さまざまな事情から赤ちゃんを養育することのできない母親が子どもの命を託す「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)が慈恵病院(熊本県)に設置されて10年たつ。全国で唯一、赤ちゃんの命を託せる最後のとりでとして始められたが、熊本市の公表によると、15年度までの9年間で「こうのとりのゆりかご」に預けられた赤ちゃんは125人。一方、日本に先駆けて同制度に取り組んでいるドイツでは、どのような運用がされているのだろうか。

この日の講演会は、映画監督の千葉茂樹氏(生命尊重センター名誉会長)によるビデオ上映から始まった。これは、日本人医師や助産師がドイツを訪問し、その運用方法、利用した母親への取材、社会の反応などをまとめたドキュメンタリーだ。

それによると、日本国内では若者の性の乱れが深刻化し、年間中絶件数32万件のうち、およそ12パーセントが10代だという。ドイツでも同じような事態に直面し、その取り組みの1つとして「赤ちゃんポスト」の運用が始まった。2000年の設置以来、現在では100以上の病院や施設に設置されている。

またドイツでは、赤ちゃんを産むか産まないかに悩む女性は、専門家との相談が義務付けられている。この「妊娠葛藤相談」の結果、母親が自分で育てることを望まないと決めた場合、匿名で身元を明かすことなく、費用も負担することなく安全に出産できる「匿名出産」というシステムも選択肢の1つとして考えることができるという。この「妊娠葛藤相談」「赤ちゃんポスト」「匿名出産」が赤ちゃんの命を救う受け皿になっているのだ。

インタビューを受けたドイツ人女性は、当初、1人で無介助出産をし、その後、「赤ちゃんポスト」に赤ちゃんを預けようと考えていた。しかし、「妊娠葛藤相談」の中で「匿名出産」を知り、その方法を選んだ。出産後、自宅から遠く、自分のことを誰も知らない土地で2カ月間、子どもと共に過ごし、それでも子どもと一緒に生活できないと感じれば、養子縁組に出せるという方法を知った。彼女は最終的に、子どもと一緒に生きていく選択をした。

ドイツの法律では、養子縁組には8週間プラス1日の猶予期間がある。この間に、養子縁組に出すか、自分と一緒に住むかは、母親が結論を出せばいい。その8週間は、「マザー・チャイルド・ハウス」と呼ばれる施設で過ごすこともできる。匿名出産した女性の多くが、このような施設で過ごし、結論を出すのだという。

赤ちゃんの命を受け止めるには 千葉茂樹氏と永原郁子氏による講演会「赤ちゃんの命のバトン」
映画監督の千葉茂樹氏(生命尊重センター名誉会長)

ビデオの後、千葉氏は次のように話した。「このマザー・チャイルド・ハウスの存在には大きな衝撃を受けた。ここで、養子縁組をする夫婦と産みの母親が対面する現場なども見た。ドイツはキリスト教徒が多い国。もともと昔から修道院などで赤ちゃんを引き取ったり育てたりしてきた。日本は10年前に運用が始まったばかりだが、引き取った赤ちゃんをどのように養子縁組に出すかなど、今後の課題は多い」

次に登壇したのは、マナ助産院(兵庫県神戸市)院長の永原郁子氏。マナ助産院では毎週水曜日、スタッフ全員で聖書を開き、礼拝をささげている。

永原氏は今まで16年間、年間約120箇所の小学校や中学校で命や性に関する講演会を行ってきた。このような活動が認められ、今年、厚労省から「最優秀助産師」に選出された。

「性教育や避妊指導といった観点ではなく、『あなたの命は大切な命だ』ということに働きかけ、自分の命、自分の性、他人の命、他人の性を大切にできるということを訴えてきた」と永原氏は話す。

しかし、現在もなお若者の性の乱れ、命の軽視は深刻だと感じるという。中絶率はなかなか下がらないばかりか、出生後0日の虐待死も深刻だ。2004年の統計では、1年間に0日で虐待死した赤ちゃんは、分かっているだけで15人。その加害者の9割以上が赤ちゃんの母親だ。

「このことから想像するのは、思わぬ妊娠をして、誰にも相談できないまま月数がたち、どこかで人知れず無介助で出産をして、赤ちゃんの口をふさいだり首を絞めたりしているということではないだろうか」

このような赤ちゃんの命を救うためにできたのが、慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」だ。そして、この働きを関西にも広めようと、多くの産婦人科医からの協力を得て、マナ助産院にも設置を試みたが、行政からの許可は下りず、現在は面談型の「こうのとりのゆりかご」を運用している。

これは「自分では育てられない」と思い悩む女性のための相談窓口。すでに子どもを出産し、自分で育てる意志がある中で育児の悩みがある母親の「育児相談」とは大きく異なる。

面談型の「こうのとりのゆりかご」には、3つのラインがあると永原氏はいう。1つは、「身元を明かすこともできず、養子縁組の可能性もない場合」、2つ目は「身元を明かし、養子縁組の可能性を相談できる場合」、そして最後は「妊娠中の妊婦」。3つとも状態の悪い場合は緊急搬送をする。

母親の年齢や環境によって相談内容や処遇はケース・バイ・ケースだというが、「身元を明かすこともできず、養子縁組の可能性もない場合」は、神戸市こども家庭センター、または実親の居住地の担当管区の児童相談所に連絡し、赤ちゃんを託す。

養子縁組が考えられる場合、養親のトレーニングをマナ助産院が行い、民間団体と協力しながら養子縁組をする。中には、自分で育てられるかを迷っている母親には、その方法を一緒に考えながら導いていく。

妊婦の場合、成年か未成年かによっても相談内容が異なる。成年だと、まずは生活の基盤を整えることを優先し、さまざまな行政支援を受けながら、母体も赤ちゃんも保護する方法を考えていく。未成年は、保護者の同意や協力が不可欠になるため、まず保護者との調整を行う。未成年が妊娠した場合、その母親は驚きのあまり怒ったり情けなく思ったりと、動揺していることが多いが、話をしているうちに調整がつく場合がほとんどだという。

マナ助産院では、「結婚に至らない妊娠」「育てることのできない妊娠」であっても、おなかの中で大切に命を育んだ女性の尊厳を守り、子どもの命を他の人に託すことによって子どもの命も守られることを目指している。言葉を発せない胎児を守り、その命を守った女性が前向きに生きていくことができるように今後も活動を続けていく。

講演後にある参加者が意見を述べた。

「世の中には、『妊娠したら、21週までに中絶すればいいじゃないか』と話す人たちもいる。しかし、私たちクリスチャンがこうした世の中の動きに立ち向かっていくのは、ほとんど福音宣教に近いと思う。神様から授かった命をいかに大切にするか。私たちキリスト者は一致していかなくてはならない」

永原氏はこれに対して、「この活動をしていると、非常に霊的な戦いを感じる。全国からの祈りが必要だ」と話した。

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