この人に聞く(8)ローマ教皇が認めた「天使の歌声」 歌手・カノンさん

2016年6月12日22時21分 記者 : 中橋祐貴 印刷
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日本人歌手として初めてローマ教皇に音楽を献上したカノンさん。数多くの賛美歌を手掛ける国際派だ=東京都渋谷区の所属事務所ビー・ジー・ビーカンパニーにて
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「主よ あなたはどんな時も私を励ましてくれます。いたわってくれます。あなたは私にとって暗闇の中の光です」

カノンさんはこの賛美歌を、1585年にヨーロッパへ渡り、帰国後、キリスト教布教活動に尽力した日本人キリシタン伊東満所(まんしょ、1569~1612年)を記念したイベント「伊東満所慰霊祭(宮崎県西都市)2015」で、スペイン大使や公人らが参列する中、大勢の人々の前でささげた。この「Lord I praise your name ~伊東満所の祈り~」という彼女のオリジナル曲は、日本人歌手としては初めてローマ教皇に献上された。

その歌声は「天使の歌声」と称される。イタリアやロシアなど、世界中で活躍の場を広げる実力派のアーティストだ。幼少期をニューヨークで過ごし、14歳でオーストラリアへ移住。音楽大学声楽科を卒業し、現在は事務所に所属しながら音楽活動を続けている。

この日、桜咲く渋谷の町でカノンさんが所属する事務所を訪ねた。透き通る歌声のBGMがゆっくりと流れるオフィスで、カノンさんがどのような思いで音楽と共に歩み、クリスチャンとして賛美をささげているのか、話を聞いた。

カノンさんといえばNHK連続テレビ小説「ちりとてちん」(2008年)の挿入歌「Wings to Fly ~翼をください」を歌ったことで一躍有名になったが、なでしこジャパンの佐々木則夫監督がカノンさんの歌う「明日への鼓動」に心を打たれ、ワールドカップの試合直前に選手たちに聞かせるなど、その魅力は一段と増している。

そんなカノンさんだが、実は「ゼロ以下」からのスタートだったという。

2005年、サッカーワールドカップ最終予選(対北朝鮮)のパブリックビューイングで大歓声に包まれた大阪長居スタジアムで、カノンさんはデビューして間もなく国家を独唱した。

「私を皆さんが温かく迎えてくださり、気持ち良く歌えた」と笑顔で話す。「多くの方に私の歌を届けたいです。作詞作曲も手掛けているので、アルバムの中には賛美を取り入れています。そのようなメッセージを広げていきたいです」

ある宣教師との出会いが人生を変える

「もともと、すごく不思議な縁で歌手カノンとして始まりました。歌手になりたくて声楽を学び、日本に音楽関係の知り合いがいたので、デモテープを送り続けていました。私は帰国したら約束通り仕事が待っていて、すぐに活動できると思っていました」

しかし、カノンさんを待ち受けていたのは、仕事が見つからず、海外生活が長かったために友達や頼れる人もいないという厳しい現実だった。音楽とは全く関係のないアルバイトを始めたものの、職場の人間関係も悪く、やりたいことができないつらさ、葛藤、ストレスが溜まり、身も心もズタズタになっていった。

それでも「音楽の世界への夢は諦めていませんでした」。どうしようもない、そんな気落ちしたバイトからの帰り道。すぐ近くに教会があることに気付き、足を踏み入れた。「うれしくて、すぐに洗礼を受けたいと牧師先生に話をしました」。この日から、カノンさんはまさしく「変えられた」人生を歩み出した。

教会へ通うようになったカノンさんは、夕拝(夕方に行われる礼拝)に来ていた米国人宣教師のバトラー氏に出会う。彼は当時、ホテルオークラ東京で挙式の仕事をしながら、週末は教会で説教をしていた。

バトラー氏から「なぜ、あなたは英語を話せて音楽もできるのに、日本でバイトをしているのですか」と尋ねられたカノンさんは、自分のこれまでの事情を全て打ち明けた。

「ずっと今日まで音楽への夢を捨てきれない。デモテープも送り続けています」。すると、バトラー氏は一言。「Leave it to me!(僕に任せなさい!)」。その言葉は衝撃だったという。

ある時、バトラー氏が主催したビュッフェに、たまたま音楽系のマネージャーを志望している女性がいた。バトラー氏から受け取った彼女の名刺には「PR会社」と書かれていた。カノンさんは最初ピンと来なかったが、「僕に任せなさい!」というバトラー氏の言葉を信じ、電話を掛けることにした。

この女性は、聖歌隊を派遣する仕事をしていた。カノンさんが早速デモテープを送り、作詞作曲をすると伝えると驚かれた。今カノンさんが所属している事務所の社長とこの女性が、ちょうどその数カ月前に知り合っていたこともあり、文字通り「不思議な導き」で事務所に入社することとなった。

ドラマのような話とは、まさにこのことを言うのだろうか。カノンさんは、「皆さんにも勇気を持ってほしい」と笑顔で語った。

この人に聞く(8)ローマ教皇が認めた「天使の歌声」 歌手・カノンさん
「Leave it to me(僕に任せなさい!)」という米国人宣教師の言葉と信仰で全てが変わったというカノンさん。「これは私の証しです」。楽しそうにその時のエピソードを語ってくれた。

地道にライブ活動を始め、数多くいるシンガーの中で違うカラーを出せるか模索する中で、自分のルーツは「賛美歌」だと気付いた。クラシカル・クロスオーバーというポップスとクラシックを掛け合わせた音楽ジャンルの先駆けとなった。「今思えば最初から最後までつながっている。自分は実はゼロではなかったのかな」と振り返った。

教会にはずっと通っている。「夢は、多くの人に歌を届けていくこと。大きいホールでやってみたいですね」。これまでキリスト教界ではあまり宣伝をしてこなかったが、「今後はキリスト教関係の集会でも賛美をしてみたい」という。

天声の歌声 彼女は世界一

所属事務所の前川弘社長もカノンさんを絶賛する。「私はかれこれ35年間ほど音楽に関わる芸能に携わってきましたが、彼女の天声は安らぎが一番の魅力ですね。カノンは世界一です」

前川氏は「せっかくクリスチャンなので(教会に)貢献できる場があれば」と期待する。カノンさんは海外のさまざまなステージでも活躍しており、英語も堪能だ。「文化交流の場に出て行きたい」と抱負を語った。

人生は、人と人とのつながりで導かれていく。厳しい現実に直面しても決して諦めず、勇気を持って神に委ねていくことの素晴らしさを再確認する。カノンさんの今後の活躍に期待したい。

カノン オフィシャルウェブサイト(株式会社ビー・ジー・ビー・カンパニー所属)

カノン オフィシャルブログ

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