神声人語―御言葉は異文化を超えて―(15)奇妙な発音、奇天烈な文法、おまけに気まぐれな語句⑧ 浜島敏

2017年3月4日06時50分 コラムニスト : 浜島敏 印刷
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婦人を尊敬することは、私たちには当たり前のことになっています。この考え方は、私たちの文明や生活様式の大部分に行き渡っていることなので、現地の人たちが女性にも男性のように魂があるのだと初めて知って、この考えを受け入れたりするのを見ると、ある種の衝撃を受けます。

以前には、チョル人は女性に魂はないものと信じていました。あるいは、少なくとも女性の魂は明らかに劣っているから男性と同じ墓に埋めることすらできないと考えられていました。宗教はただ男性のためのものであり、ある異教の儀式では、婦人と子どもの出席は厳しく禁じられていました。

しかし、福音の訪れがこれを一変しました。良き訪れは男の人だけでなく、女の人のためでもあります。それは、婦人たちの心の中にも神の霊が働き給うのを見たからです。子どもたちでさえ、追い払われることがなくなり、聞いて分かるようにと教会の前の方へ連れて来られるのです。

ヤコブの手紙のような書物は、私たちの聖書の中では、まるで埋められているかのように人目につきません。が、チョル人の1家庭では、その書がすさまじい家庭不和への解決を与えていることに気付きました。4人の兄弟が相続した土地をめぐって争っていましたが、宣教師の忠告により、彼らはちょうどこのような問題のために書かれたヤコブの実際的な手紙を読みました。

こうして、お互いに罪を悟りました。ついで、婦人たちも呼び入れられ、幾度も幾度もその本は読み返されました。ついに、彼らは祈って神の赦(ゆる)しと、お互いの赦しを求め合ったのでした。およそ2千年も前に書かれた1通の手紙を読んで、分裂状態にあった1家庭が再び平和を取り戻したのでした。

メキシコのミチョアカンにある緑なす山中、パスクアロ湖の絵のような沿岸に住んでいるタラスコ人は、「良き訪れ」(注8)の言葉を受けつけそうにもありませんでした。封建的搾取の圧迫に反発するために、このインディオは文化的孤立という高い壁を建ててしまっていたのです。彼らの中で働いていた宣教師たちが、英語で家庭礼拝を守っていたのですが、ある日1人のタラスコ人が家に入って来て「何をやっているんですか」と聞きました。

「なに、今お祈りしているんですよ」と宣教師たちは説明しました。「はあ、唱えているんだね」と彼は答えました。というのは、英語がずっと遠い教会堂で何度か聞いた、意味のさっぱり分からないラテン語の儀式文のように聞こえたのです。「いや、いや、お祈りをしているんです」と宣教師が言い張りました。しかし、その男には残念ながらのみ込めませんでした。

そこで、宣教師はその男に「いいですか、神様とお話をしているのです。それだけです。神様にただ話し掛けているんですよ」と言ってやりました。すると、その男が叫びました。

「へえ? だったらお願いです。わしにも分かるように、わしの言葉で神様に話してくださらんですか」

(注8)「良き訪れ」:ギリシャ語の euangelion、英語の gospel のいずれも「良い便り」という意味の言葉である。「福音」も同じ。

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【書籍紹介】
ユージン・ナイダ著『神声人語―御言葉は異文化を超えて
訳者:繁尾久・郡司利男 改訂増補者:浜島敏

ユージン・ナイダ著『神声人語―御言葉は異文化を超えて』

世界の人里離れた地域で聖書翻訳を行っている宣教師たちと一緒に仕事をすることになって、何百という言語に聖書を翻訳するという素晴らしい側面を学ぶまたとない機会に恵まれました。世界の70カ国を越える国々を訪れ、150語以上の言語についてのさまざまな問題点を教えられました。その間、私たち夫婦はこれらの感動的な仕事の技術的な面や、人の興味をそそるような事柄について、詳細なメモを取りました。

宣教師たちは、未知の言語の文字を作り、文法書や辞書を書き、それらの言語という道具を使って神の言葉のメッセージを伝えるのです。私たちは、この本を準備するに当たって、これらの宣教師の戦略の扉を開くことで、私たちが受けたわくわくするような霊的な恵みを他の人たちにもお分かちしたいという願いを持ちました。本書に上げられているたくさんの資料を提供してくださった多くの宣教師の皆さんに心から感謝いたします。これらの方々は、一緒に仕事をしておられる同労者を除いてはほとんど知られることはないでしょう。また、それらの言語で神の言葉を備え、有効な伝道活動の基礎を作ったことにより、その土地に住む人々に素晴らしい宝を与えられたことになります。その人たちは、彼らの尊い仕事を決して忘れることはないでしょう。

本書は説教やレッスンのための教材として役立つ資料を豊富に備えていますが、その目的で牧師や日曜学校教師だけのために書かれたものではありません。クリスチャン生活のこれまで知らなかった領域を知りたいと思っておられる一般クリスチャンへの入門書ともなっています。読者の便宜に資するために3種類の索引をつけました。①聖句索引、本書に引用されている聖書箇所を聖書の順に並べました、②言語索引、これらのほとんど知られていない言語の地理上の説明も加えました、③総索引、題目と聖書の表現のリストを上げました。

ユージン・ナイダ

浜島敏

浜島敏(はまじま・びん)

1937年、愛知県に生まれる。明治学院大学、同大学院修了。1968年4月、四国学院大学赴任。2004年3月同大学定年退職。現在、四国学院大学名誉教授。専攻は英語学、聖書翻訳研究。1974、5年には、英国内外聖書協会、大英図書館など、1995、6年にはロンドン大学、ヘブライ大学などにおいて資料収集と研究。2006年、日本聖書協会より、聖書事業功労者受賞。2014年7~9月、ロンドン日本語教会短期奉仕。神学博士。なお、聖書収集家として(現在約800点所蔵)、過去数回にわたり聖書展示会を行う。国際ギデオン協会会員。日本景教研究会会員。聖書の歴史、聖書翻訳に関する著書・翻訳書、論文多数。

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