わが人生と味の道(31)カニ味噌を求めてノルウェーへ 荘明義

2016年5月19日08時08分 コラムニスト : 荘明義 印刷
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カニ味噌を求めてノルウェーへ

もう一つ。私がとても素晴らしい食材を開発したことを紹介しましょう。これも時間をかけて開発したものでした。

ある時、大龍の社長とスタッフたちと中国に旅行をしました。この頃は、「上海ガニ」が最もおいしい時期なのです。そこで、「上海ガニ」の有名店に入り、そこでカニ味噌を使った料理を口にしました。日本ではとても口にすることのできないような素晴らしい味でした。

その時、私はコックを何十年もやっていたのですが、このようなおいしい料理がこの世の中にあったのか、と感心しました。それで、何とかしてそのおいしい「カニ味噌豆腐」を私たちの店でも提供したいという思いになったのでした。

海外に行っておいしい料理を探すということも、当時の私の仕事の一つでした。大龍門という中華ダイニングの店は日本に何店かあり、そこにお客を呼んで試食をしてもらうということをしていました。居酒屋にしても機内食にしても、お客に安心して食べてもらうためには安定した食材が手に入り、値段がこなれていなくては提供することはできません。

カニ味噌は当時、1キロ2万円もするものでした。しかも、豆腐を煮た料理自体が中国でも1皿2千円ということでしたから、日本で提供すると1万円近い料理価格となります。そんな高いものを当然私たちの店で提供するわけにはいきません。その4分の1か、5分の1くらいにならなくては・・・。

上海のカニ味噌に一番近いものはないか――ということで、業者に頼んで世界のカニ味噌を集めることにしました。私は、ノルウェーにあるカニ味噌がそれに最も近いということを発見したのです。そこで、ノルウェーでカニ味噌がどのように収穫され、どのようなルートで日本に入って来、どのように安定した価格で手に入るのかということを知るためにノルウェーへ行くことにしました。

当時はとてもよかったと思います。先方の会社の社長はとても良い人で、私の希望をいつも考えてくれて開発に協力してくれたのです。私は、食品メーカーの人と一緒にノルウェーへ行き、カニの収穫期にどのような工場で、どのように集め、どのように衛生管理をしているのかということを見ることができました。

このようにして念願のカニ味噌を手に入れた私は、その何とも鮮やかな黄色い色を出すために「パーム油」という油を入れることによって、それに近い味と風味を再現することに成功したのです。そして、店では千円以内で「カニ味噌豆腐」というメニューの実現ができたのでした。このカニ味噌自体は、洋食にも和食にも合い、いろいろな使い方ができるというので、「神戸屋キッチン」のコックが気に入ってくれて、洋食ソースの中に入れてくれることもありました。

何もないところから作り出す――ということは、自分としては得意ではありませんが、とても好きなのです。誰かがやったことをまねする――ということもしますが、誰もやったことがなかった、今まで世の中になかった、そういうものをコツコツ作り出すことは私の性に合っているようです。コックになりたくてなったわけではないのに、それが自分の性に合っていたようです。

皿洗いの時は冷たい料理の味を見、残った料理を合わせて調理することによって新しい味を発見し、鍋洗いの時にはできたその料理の味をみることによって、目で見た分量となめた味のチェックをすることによっていろいろな味を再現する。また、そうした勉強の中に新しい味を発見する。このようなことに興味を持った私の人生は、本当に幸せなものであったと思うのです。

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荘明義

荘明義(そう・あきよし)

1944年中国・貴州省生まれ。4歳のときに来日、14歳で中華料理の世界に入り、四川料理の大家である故・陳建民氏に師事、その3番弟子。田村町四川飯店で修行、16歳で六本木四川飯店副料理長、17歳で横浜・重慶飯店の料理長となる。33歳で大龍門の総料理長となり、中華冷凍食品の開発に従事、35歳の時に(有)荘味道開発研究所設立、39歳で中華冷凍食品メーカー(株)大龍専務取締役、その後68歳で商品開発と味作りのコンサルタント、他に料理学校の講師、テレビや雑誌などのメディアに登場して中華料理の普及に努めてきた。神奈川・横浜華僑基督教会長老。著書に『わが人生と味の道』(イーグレープ)。

横浜華僑キリスト教会ホームページ
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