先駆者(せんくしゃ)ヨハネの誕生
ルカ1章8~25節
[1]序
今回は、主イエスの先駆けとしての使命をはたす洗礼者ヨハネの誕生についての記事を味わいます。それぞれの福音書が、福音書のはじめの部分で洗礼者ヨハネの活動について記していますが、ルカはヨハネの誕生以前からのことを描いています。
1、2章では、ヨハネと主イエスについて並べて描き、それを通してヨハネに対する主イエスの優位を明らかにしています。
①1章5節から25節では、先駆者ヨハネの誕生の知らせ、26節から38節では、主イエスの誕生の知らせ。
②57節から66節では、ヨハネの誕生、2章1節から21節では、主イエスの誕生。
[2]ヨハネの誕生の知らせ
(1)場面
神殿で祭司が香をたくおごそかな場面(8~11節)で、ガブリエルを通して、ヨハネの誕生(13,14節)、ヨハネの生涯(15節)、ヨハネの役割(16,17節)についての知らせ。
(2)ヨハネの使命
ヨハネは、「すぐれた者」となるとの約束。これは、彼が与えられている職務の大切さを示していると考えられます。16節、民全体のため。17節、メシアの先駆者として。3章4節参照。「聖霊に満たされ」(15節)と、与えられた職務を果たしていくため、聖霊の賜物の約束。聖霊の賜物は全く神ご自身の意志に基づく。ヨハネが彼なりに民に伝え教えることは、聖霊ご自身が民の心に向けての働きによってのみ実を結ぶことができます。
(3)喜び
14節。ヨハネの誕生は、ザカリヤにとっての喜びであるばかりでなく、多くの人にとっても喜び。25節、エリザベツの喜び。一人の婦人に対する主なる神のかえりみ。これを通して民全体に対するかえりみが明らかにされていきます。
(4)ザカリヤの応答
20節、「私のことばを信じなかったからです」。マリヤの態度(38節)と比較。ザカリヤは、全体としては主なる神様のみわざを信じていますが、息子を与えられる一点については受け入れることができなかったのです。
[3]ヨハネの誕生 57節から66節
(1)約束の成就としてのヨハネの誕生
1章14節の預言の成就として、エリザベツへのあわれみ(25節)。喜びの広がり(58節)。
(2)「聞いた人々はみな、それを心にとどめて」(66節)
できごとを注意深く考え、時の流れ、経過の中にあって、神の恵みを理解していく。
[4]結び
(1)エリザベツの経験、「主は、人中で私の恥を取り除こうと心にかけられ、今、私をこのようにしてくださいました」。
(2)ヨハネの特徴。主イエスに従い従属する喜び。その頂点として、ヨハネの福音書3章22節から30節。何がヨハネの喜びであったかを通して、私たちも何を喜びとするのか問われています。
宮村武夫(みやむら・たけお)
1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。
主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。