ハマスの欺瞞(ぎまん)とイスラムの教えへの疑問から、真の神を求めて祈り続けていたジュマン。彼女はガザの閉塞感の中で、見えない神に向かって「あなたを知りたい」と叫んでいた。(第1回から読む)
2014年、ガザで紛争が勃発したときのことを彼女はこう証言する。「ある日、イスラエル国防軍(IDF)が元夫に電話をかけてきました。近所の人たちに、避難するようにと電話をかけてほしいとIDFが頼んできたのです。彼らの家を爆撃する予定だったからです。元夫は『家には誰もいない』と答えました。イスラエルは、民間人が死なないように、家を爆撃する前に警告をするのです。彼らは民間人を無差別に殺傷しているのではありません」
「その夜、近所の家が爆撃されました。私はとても怖くなり、『ああ、もうすぐ死ぬかもしれない』と恐怖におののいていました。恐れや不安から涙がとめどなく流れました。『神様、もしあなたが実在するなら、あなたを知りたい、あなたの名を呼びたい、私を救ってください』とずっと祈っていました。そしてその夜、夢を見たのです」
極限の恐怖の中で、彼女は必死に神にすがった。その夜見た夢が、彼女の運命を永遠に変えることとなる。
夢の中で、彼女は2005年に亡くなった母と一緒にバルコニーに座っていた。空には不自然なほど巨大な月が浮かび、徐々に彼女たちの方へと近づいてくる。夢の中でジュマンの母親は、彼女に「月を見上げなさい」と言った。そして月を見上げると、その中に一つの「顔」が浮かび上がってきたのだ。それは今まで見たこともないほど清らかで、威厳に満ちた顔だった。
「そのお方は、アラビア語で私にはっきりとこう告げました。『アン・イェシュア(私はイエスだ)。私は神である。私の娘よ、恐れることはない』」。その声は、震える彼女に優しく語りかけた。
目が覚めた瞬間、爆撃の恐怖に支配されていたはずの部屋が、一瞬「光」で満たされているのを感じた。そして何よりも、これまで一度も感じたことのない圧倒的な「平安」が彼女の心を包み込んでいたのだ。「ああ、これは現実なんだわ」。驚きとともに、彼女は声を発した。
「私はそれまで、イェシュアという名前を聞いたことがありませんでした。なぜなら、コーランではイーサーと呼ぶからです」
「その時私は、人生で初めて『愛されている』と感じました。家族を愛してはいましたが、イスラム教の中では、神は常に怒っておられ、愛や安らぎを感じたことは一度もなかったからです」(続く)
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