2025年11月26日12時06分

ワールドミッションレポート(11月26日):アフリカ・サヘル地域、死の陰から生まれた祈りの軍隊(2)

執筆者 : 石野博

宣教師のキャロル・ウォードは、祖父母の代から宣教師として仕えてきた家系だ。彼女の父は、壁にかかった世界地図の、特にイスラムの地域に手を置いて、涙を流して祈る宣教師だった。キャロル自身も宣教師として主に従ってきた。彼女は、灼熱(しゃくねつ)と武装勢力の危険が潜むサヘル地帯の過酷な環境への召しに応じ、命をささげる覚悟で今も奮闘している。(第1回から読む)

キャロルの両親は、イスラム過激派武装組織が猛威を振るう地域で、62年間にわたり福音を宣べ伝えてきた。祖父母はといえば、30年間を中国宣教に費やした宣教師だ。キャロルが主に従うのは、単に彼女の決断以上のものがある。それは父や祖父母の代からの霊的遺産なのである。

「恐怖は伝染します。しかし信仰もまた、より強く伝染するのです。ある時、私はそれに気が付きました」。彼女の父は、イスラム過激派武装組織のアブ・サヤフが45年間も命を狙っていた宣教師だった。にもかかわらず、父には全く恐れがなかった。彼女はそのような家庭で育ったのだ。父は、当地の敵対的な人々を真心から愛した。聖書を燃やし父の顔にそれを投げつけてくるような人々をだ。そのような人々のために、父は自分の命をいつでも喜んでささげる覚悟のある宣教師だったのだ。

そんな家系の霊的遺産を受け継ぐキャロルの働きが今日具体的に展開されている国がチャドだ。北アフリカの大地が緩やかに砂漠へと続くこの国では、ボコ・ハラム、ISIS、アルカイダの影響が色濃く影を落とす。

「南北の最も暗いイスラム圏へ福音を前進させる」というのが、彼女が立つ強い使命だ。「もし私たちが彼らと同じ速さ以上に前進しなければ、主の前線において私たちは手痛い敗北を喫することになるのです」。このように述べるウォードの言葉には、彼女の覚悟と並々ならぬ使命が見て取れる。(続く)

<<前回へ

◇

石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。