2025年8月4日11時24分

ワールドミッションレポート(8月4日):中東某国 イエスのために全てを失った女性ミリアム(3)

執筆者 : 石野博

夫の改宗をきっかけに心を開き始めたミリアムは、娘の「イエス」という言葉に導かれるようにして自らもキリストに従う決断をする。家族は地元の教会に通い、穏やかな信仰生活が始まった。しかし、その平穏は長くは続かなかったのだ。(第1回から読む)(人物の本名は伏せて変えてある)

時がたち、ミリアムの夫は、小さなほころびから大きな落とし穴に足を取られてしまった。ある時から夫は外出するようになり、それが次第に多くなった。彼は薬物に手を出すようになってしまったのだ。

加えて、彼らが暮らす地域は、イスラム教徒ばかりが住む保守的な町だった。家族がキリスト教に改宗したことが知られると、近隣住民からの非難や脅迫が激しくなった。安全を確保するため、教会の牧師の助けで新たな住まいに移ることにしたのだ。

しかし夫の薬物依存は悪化し、結局、夫婦は離婚という苦渋の決断をせざるを得なかった。ミリアムは子どもたちを連れて、小さなアパートに移り住んだ。中東では、成人男性の保護なしに女性が暮らすことは非常に危険なことだが、彼女は信仰と子どもたちのためにその道を選んだ。

教会はそんな彼女に手を差し伸べ、カフェテリアでの仕事を提供してくれた。「大変な時期でしたが、心にはキリストの喜びがありました」とミリアムは語る。

放課後になると、子どもたちは教会に来て、ミリアムのそばで過ごした。ミリアム自身も聖書の学びを深め、同じくイスラムから改宗した若い女性たちの助けとなる奉仕に携わるようになった。彼女たちの中には、家族から受ける命の危険に及ぶ迫害を逃れてきた者も多く、ミリアムはまるで、そんな彼女たちの母親のように接した。

「彼女たちが安全に暮らせるようにと、自分のアパートの近くに部屋を借りてあげました。大家には、私がキリスト者だとは伝えませんでした。誰を受け入れるかは慎重に判断しました」

だが、このような活動が、やがてさらなる危機を呼ぶことになる。(続く)

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石野博

石野博

(いしの・ひろし)

2001年より、浜松の日系ブラジル人教会で日本人開拓、巡回伝道者として従事。12年より、奥山実牧師のもと宣教師訓練センター(MTC)に従事、23年10月より、浜松グッドニュースカフェMJH牧会者として従事。18年3月より、奥山実牧師監修のもと「世界宣教祈祷課題」の執筆者として奉仕。23年10月より「世界宣教祈祷課題」を「ワールドミッションレポート」として引き継ぎ、執筆を継続している。